ナマエという人物を一言で述べるなら"人間嫌い"。数えきれないほどのループを経て、ユーリは彼女をそう評した。
言葉数は少なく、グノーシアを見つけ出す話し合いにおいても消極的。自身の存在が
しかし、幾度と繰り返されるループを脱するためには、"銀の鍵"を満足させること──彼女の情報を知識として得ることが必要不可欠だった。
ループ■■回目の空間転移前。ユーリは議論が終わって尚、メインコンソールの窓辺に未だ腰を据え、暗く深い
「やあ、ナマエ……」
「……」
案の定というべきか、ナマエがユーリに振り返る様子はない。それどころか、ガラスに反射する彼女の眉間には皺が寄っており、その胸の内を隠すことはしない。
ユーリは一瞬臆したが、彼女にも何かしらの事情があるように、自分にも引けない事情がある。恐る恐るとひとつ歩み寄って様子を伺えば、ナマエは詰められた分だけ、窓に沿って離れた。その様はまるで檻の中、人間を警戒する未馴化の野生生物のよう。
頑なに口を開かず、振り返らず、そして苛立ちを纏うナマエはある種、雄弁だ。これ以上距離を詰めることは悪手だろう。ユーリは僅かに息を呑むと、努めて穏やかに声を発した。
「その、実は……君とは一度ちゃんと話してみたいなって、前から……」
「私は思わない」
やっとナマエが振り返る。だが、彼女が携えるのは窓に反射して見えた顔よりも深く嫌悪の滲んだ色と、刃物のように鋭利な拒絶の一声だった。ユーリが心臓を冷やして間もなく、ナマエは大股で彼の横を通り過ぎメインコンソールを後にする。まるで足跡のように僅かに残る彼女の香は、あの冷ややか態度とは裏腹に、酷く甘美で柔らかな匂いがした。
「う、上手くいかないなぁ……」
取り付く島もない彼女の姿勢に、ユーリは盛大に肩を落とす他無い。
一難去ってまた一難というべきか、ユーリにとってナマエという存在は、紛うことなく次なる難所に違いなかった。
しかし、ここで引くわけにはいかない。彼の瞳は焦燥に塗れながらも、強い光を放っている。
真なる明日を迎えるために、今日を必ず旅立つのだ。
* * *
──■■回目の目覚め。医療ポッドの培養液から浮き上がったユーリの体は女性体であった。初めてこれを経験した時には、精神と一致しない身体的変化に酷く動揺したものだが、やはり慣れとは恐ろしい。否、自分の適応能力が優れていると自惚れた方が良いのか、兎も角として特段の驚きは既にない。
上裸のまま、目覚めたばかりの体を伸ばす。すると、彼──彼女の眼前に、真新しい衣服が