まずい。このままでは計画が乱れるどころか無かったものになってしまう。恐れを覚え、一旦身を引き過去にうるさいくらい眺めた顔触れから逃げ出す。遥かに成長し、カカシもガイも年老いていた。リンも生きていれば、今頃―…


戦地から抜け出し、懐に隠し持っていた探知機を出す。確実に勝つにはあの女の目が必要だ。そう、うちはデミニーの目が。使えるものは重宝しなければならん。手にした機械に赤い点が浮かび上がる。場所はさほど遠くない。恐らく距離からしてあの海があった場だろう。即座に向かう。早く写輪眼をくり抜いて己の物にし、カカシを粛清しなくては。

辺りを見回す、海辺には人一人いなかった。元々あの女は誰も来ない安心する場を選り好んでいたのだから人影の数には期待していなかったが、明らかにおかしい。探知機を見直す。やはり女の居場所は此処であっているようだ。何度も赤点を見直し間違いが無いかを図る。そうしてやっと右上に高低を指す数値が、有り得ないほどのマイナスになっていたことに気づく。


そういえばあの女。海を見て笑っていたな。
爆弾を咥えながら笑うなど未だかつて、この反乱の世で目にした試しが無い。大抵は泣き狂うものだ。正気の沙汰ではなかった。ふと、この異常な数値に腹の底から湧き出るような悪寒がした。仮説が立つ。



「そうか、あの女、死んだのか」


髪の1本くらい、取っておけばよかった。