おめでたいことにこんな普通の容姿の私がイケメンな快斗くんと付き合うことになったけれど、高校も違うし自宅も離れている為なかなか会う暇はないままあっという間に1ヵ月経っていた。ずっと工藤くんを想っていたから、想われる、なんて想像もしていなかった私に彼氏なんていた試しもなく、快斗くんから来るメールに頭を悩ませては休み時間が終わる毎日。なんて返せば喜ぶんだろう、なんてうんうん唸る私を見かねてか、なまえ、なんかあった?と声をかけてくれた大切な友人達にあ、そういえば彼氏できたよ、なんて軽い気持ちで伝えた時は質問攻めの嵐で冗談じゃなく死ぬかと思った。そんなこともあって最近ではすんなりと返せている、はず。休み時間の度に来る連絡に暇なのかな、と顔を綻ばせながら受信を伝える携帯を開いて衝撃に思わず落としそうになった。

「明日、トロピカルランド行こうぜ」

何度目を凝らして見ても、文面はそう書いてある。え、ちょっとまって、明日...!?本当だったらデートのお誘いだわーいなんて両手を上げて喜びたいところだけれど、日にちが大問題だ。蘭ちゃんが空手の都大会で優勝したお祝いをしたのはついこの間のこと。そこでこっそり蘭ちゃんが今週の休みに工藤くんとトロピカルランドに行く約束をしていると教えてくれた。僅かに頬を赤らめて嬉しそうに笑う蘭ちゃんに羨ましいと思う気持ちは押し殺して、良かったねと笑ったのだ。工藤くんと蘭ちゃんがトロピカルランドに行くのも明日だとすれば、いくら快斗くんからの初めてのお誘いだとしても断るしかない。行ってもし、ふたりをみたらいくら幸せを願ってはいても後悔する。それに邪魔はしたくない、と慌ててお断りの連絡をするべくメール機能を開く。悲しいことに無愛想な私には友達が少ない為、連絡先も家族と蘭ちゃんや園子ちゃん、そして快斗くんぐらいしか知らない。普段メールなんて機能も使わない為、1回返信を返すのに休み時間終了の鐘がなるほど時間を費やしてしまう。それを知った上での計算か、はたまた何も考えていないのかは分からないが折角打った文字を送信する前に再び快斗くんからメールが来た。快斗くん、ごめんね。別の日にしよう?そう打った文面を仕方なく下書き保存して、快斗くんのメールを見る。目の前が真っ暗に染まった気がした。

「わりぃ、どうしても明日しか空いてなくてもうチケット買っちまったんだ」

震える指で楽しみにしてるね、と打った後そっと携帯を閉じて机に突っ伏した。行きたくない、行けないと言えない自分に嫌気がさす。快斗くんなら事情を話せば嫌な顔一つせずじゃあまた次にするか、なんて言ってくれると分かってはいても、忙しい合間を縫ってトロピカルランドに一緒に行きたいと誘ってくれたことが純粋に嬉しくて、無下には出来なかった。もし、手を繋いでいたらどうしよう、ちゃんと笑えるかな。告白現場に遭遇したら、どうしよう。でもきっと、これがきっかけでふたりは付き合うことになる予感がする。そしたらちゃんとおめでとう、て言えるかな。ぐるぐると脳内で想像だけが空回りして頭が痛くなる。快斗くんの優しさには助けられているけれど、好きだと言う気持ちが暴走してどうしても先に進めない。好きにならなきゃ良かったとは思わないけれど、快斗くんを好きになってあげたい。後にも先にも進めない自分の感情に、今度こそけじめをつけよう。傷つく勇気が無い臆病な私は、このデートで蘭ちゃんと工藤くんが付き合うことになったら精一杯祝福してあげようと腹を括った。