01




ドリー夢小説



時が始まる、はるか以前より“キューブ”は存在した



起源は分からないが―――



それが持つ力は世界を創造し――



生命で満たした



我が種族も、そうして誕生した



平和な時代もあったが、その“強大な力”を――



ある者は善に、ある者は悪に使おうとし――



その結果、戦争が始まった



その戦争により我々の星は破滅し―――



“キューブ”は、はるか宇宙に消えた



我々は故郷を蘇らせるため、銀河の隅々に散り―――



あらゆる星や世界を探して回った



望みが消えたと思われた時―――



新たな手がかりが、未知の惑星で発見された







その星は地球







だが、時は既に遅かった―――――



































「ちょ、ちょっと通ります!わ、ごめんなさい」







校内を走る少女、●は自分が受ける授業が行われている教室へと急いでいた。



前方にいた少年に肩が当たり、

体勢を少々崩しながらも振り返り少年に謝る。





ブラウンの瞳が目的の教室を捉えれば、彼女の忙しなく揺れていた黒髪はふわっと動きを緩やかにした。





目的の教室の前に立ち、荒くなった息を整えて深呼吸をひとつ。

音が立たないように、そっとドアを開けてこっそりと中へ入る。

教室は静まっていて皆は教卓がある前方に注目していた。

誰か発表をしている途中のようだ。





身を低く移動し、教卓の横のデスクに座る教師を確認する●。

教師は発表している少年に視線を送っている。

自分に注意が向いていないことを確認したあと、空いた席にゆっくりと座る。







「遅刻よ、●」





「気のせいです」







ブルーの瞳はチラリと後ろへ座った●へと向けられる。

少し後ろへと体を倒して、クロスへ顔を寄せて耳打ちする。



最初からいましたけど、と肩をすくめながら口元を上げる●が答えるとミカエラはふっと小さく笑う。

再び前を向いたミカエラに続き、●も前方にいる教卓で発表をしている少年に視線を移す。







「言わずと知れた、有名な探検家で北極探検の第一人者。偉大でしょ」







古い大きな紙を自分の前に掲げて発表している彼は、サム(サミュエル)・ウィトウィッキー。

途中からだが、どうやら曽曽祖父のことについて発表しているようだ。





●はサムとは引っ越してきてから友人関係にあり、向かいの家に住んでいる。

曽曽祖父のことについても、何度か聞いていた。

サムの掲げる紙に書いてある文字を、●はなんとなく眺める。





●は頭の記憶のどこかであの奇妙な文字を見たことがある気がしていた。



サムから初めてその文字を見せてもらった時にも、同じ感覚を感じていたが思い出せなかった。

オークション商品の宣伝が始まったこの授業でも全く思い出せそうにないので、●は気のせいにすることにした。





呆れた顔の教師を前に、あれやこれやと商品を皆の前で発表しているサム。

●もつい最近、サムから車の資金にするから何か買わないかと、彼の部屋の色んなものを見せられた。

しかし、●は何も買わずに彼の飼っている犬のモージョと遊んで彼の家を後にした。





授業中にも商売をするほどにお金に困っているのであれば、何か買ってあげれば良かったか…と思う●。

と、就業のベルが鳴り、散り散りになるクラスメイト達。





サムが講師に呼ばれているのを横目で見ながら、教室を出ようと席を立つ。

肩にポンと手を置いて、ミカエラが話しかけてきた。









「●、このあと湖にドライブ行くの。一緒にどう?」



「あぁ…今度にしておきます。お客が待ってる」





目尻を下げて申し訳なさそうにする●に、ミカエラは頬に軽くキスをして「分かったわ」と一言。





「無理しちゃだめよ」





そう言い残して、ミカエラは帰っていく。

●も帰ろうと手荷物を持ち直して、ゆっくりとした足取りで先程走っていた校内を歩く。

周囲の同級生達も授業が終わり、喜々として友達とのお喋りを楽しんでいる。



学校を出て、自分のワインレッドの自転車のもとへと向かう。

盗難防止のチェーンを外して跨り、ペダルを踏んで視線を前に向けると、緑の車に飛び乗るサムを見かけた。

サムが渡した白い紙をじっと見ていたのは、彼の父親のロン。



A評価をもらったのだろう。サムの表情は明るく、●もそれを見て口角を少し上げた。

















「すみません、お待たせしました」



「定休日なのにすまないな」



「いいえ。ご注文のベレッタPX4ストームと、キンバー・カスタムです」





黒い少し丸みのある銃と、灰色のボディに引き金部に細工が施された銃をお客に渡す。

警官の服をきっちりと着こなしたお客は満足そうに微笑み、渡された銃を確認すると黒いバッグへ入れた。

受け取りのサインの紙に、お客がさらさらとペンを走らせていく光景を●はじっと見つめている。





●はアルバイトで銃専門店の店員をしていた。

様々な銃が綺麗に整頓されていて、所狭しと銃が展示されている。

店内はクラシック音楽が小さく響き、落ち着いた雰囲気を感じさせる。



●は看板娘のような存在で、常連客も増えているところである。

この警官も常連客のひとりだった。









「店長は来ていないのか?」



「いえ、二日酔いだから起こすなって。奥で寝てます」



「無用心だな、こんな可愛い子に店番させておいて」







誰かに攫われたら俺が助けてやるぞ、と頭をポンポンと軽く叩き冗談を飛ばす警官。

そんな冗談に笑い返しながら、店を出て行った手を振る警官を見送る。



眠っている店長の傍にある小さな机に、水の入ったコップとジンジャエールのペットボトルを置いた。

●は合鍵で店に鍵をかけて、自転車に乗る。



夕日を眺めながらゆっくりと自転車を走らせる。

風に流れる●の髪は、夕日に照らされ一際輝いているように見える。





家はアパートに一人暮らしの●。ベッド横の写真立てには自分と軍服を来た父親が写って笑っている。







「ただいま、お父さん」









写真が置かれた机に店と自宅の鍵をチャリと置けば、聞きなれない車のエンジン音が窓の外から聞こえてきた。

窓から覗くと向かい側の家の出入り口から、黒のストライプが特徴的な黄色い車が出てきた。





出てきた瞬間、黄色い車のライトがこちらへ向けて片方チカチカッと光った。

サムが買ってきた車だろう、ライトが壊れているのだろうか?



明日になったら教えてあげよう、と思いながら●は走り去る黄色の車を見送る。













何気なく、テレビをつけてみると何かの記者会見が行われている様子が映っていた。





『現時点で生存者はひとりとして確認できていない。

 全世界のアメリカ軍基地は最厳戒態勢に入った。

 敵は我々が見たことのない強力な武器を使用している』





テレビの中にいる国防長官は真摯な面持ちで言葉を続けている。

それを見つめる●は、ふと写真の中で優しく静かに笑う父親へと視線を移す。



遠くで起きている悲惨な事件に、●は少しだけ漠然とした不安を感じていた。































湖を後にした僕は、ミカエラと共に黄色のカマロで真っ直ぐな道を辿っている途中だった。

もちろんデートじゃない。彼女を送っていくだけ。それだけ。



だけど、僕には大事な第一歩だ。





「私っていつもこうなのよね。何だか分からないけど…

 男っぽい人に弱いの。腹筋割れた人とか、逞しい腕の人。

 ●にはトレントはやめた方が良いって言われてたのに…」



「●?」





腹筋を割るためのトレーニングでもやってみようか、なんて心の中で呟いていたら、

自分に呆れるような声色で話す彼女から、知っている名前を聞いて思わず聞き返してしまった。





「ああ、●は私の友達の名前よ。

 あなたは…転校生?今年入ってきたの?」







転校生に間違われるなんて、彼女の目に僕は全く写っていなかったことに落胆する。

写ってないどころか、存在を知られていなかった。

しかも、●が僕のずっと片思いしてた相手と友達だったなんて。





●は僕にとって大切な友達のひとりだ。

最初に会ったのは彼女が家へ挨拶に来たときだった。

大人しそうで物静かな印象だったが、その笑みは作り物のように、何故かとても悲しそうに笑っていた。



母さんも父さんもそんな彼女を思ってか、「この家はいつでも君を歓迎する。遠慮はするな」と伝えた。

僕も続いて「遊びにおいでよ」と声を掛けると彼女はとても温かみのある笑みを浮かべた。





それからは時々、僕の家に遊びに来るようになり家族同然のようになった。

だけど、●に交友関係を根掘り葉掘り聞くなど失礼もいいとこだ。



僕の片思い相手がミカエラだって事を、●に伝えておくべきだったと後悔する。

伝えておけば、こうやって二人の時間をもっと早く掴めたかもしれない。





「サム…ウィルキッキー?」



「ウィトウィッキー」





やっと自己紹介ができたよ、僕の第一歩だ。