※姫嫌われ(?)系
※夢主の姫に対する態度が冷たい
※夢想石ネタ
「……
何で其の事を知ってるの」
冷めた瞳が私を見つめて居る。
さっきまで、とても温かくて優しい瞳をしてくれていたのに、私の一言が原因で、其の温もりは一瞬の内に去って行ってしまった。
とても、取り返しのつかない事をして仕舞った気がした。
心臓がばくばくと高鳴って、痛い。
口の中が緊張でカラカラに乾いていく。
何か、何か言わなくちゃいけない。
其れなのに、私は何の言葉も浮かばない。
「もう一度聞くよ、トロイメアの姫君。何故、君が其の事を知っているの」
「ぁ……む、夢想石、で、……見た、の」
「夢想石……?」
「と、トロイメアの王族だけが入れる、記憶の祭壇という場所があって……其処に、人々の記憶や想いを留める事が出来る、夢想石と云う石が、あるの。其れで、」
「其れで、俺の記憶を見たんだ」
「っ」
軽蔑する様な視線が突き刺さる。
「ご、ごめんなさっ――」
「いいよ、謝らなくて」
「で、でも、」
「もういい」
興味が無いと言いたげな顔に、胸が痛い。
勝手に記憶を覗いて仕舞ったのは私だ。其れが王子様たちを助ける何かの手掛かりになると信じていて、間違った事ではないと、色々な人の夢想石を見ていたけれど、でも――
(誰だって、見られたくない事、知られたくない事くらい、ある。あるのに……)
私は其れを、正しく理解していなかった。
「……ねえ、其の夢想石って云うのは俺だけじゃなくて、他の人のもあるんだよね?」
「ぇ……」
唐突に投げかけられた言葉の意味を捉えかねて、私は酷く間抜けな声を出す。
「君は、他の人の記憶も覗き見ているんだよね?」
「……あの、」
指摘された事は事実で、けれども、此の状況で素直に頷く事も憚られて、私は何も答えられず黙って俯いてしまう。
俯いた私の頭上に、せせら笑う様なファーストさんの声が降ってくる。
其れに、私は身を震わせる。
「なあに? 人のプライベートを当たり前の様に覗き見しまくっていたんでしょう? 今更縮こまって、しおらしくしたところで、もう絆されないよ」
「ちが、違うの、私、あのっ!」
「最低」
「っ!!」
「つまり君は、然う云う奴なんだね」
「ぁ……」
ファーストさんが立ち上がる。
私は只、ファーストさんの姿を茫然と見ているだけ。
ファーストさんはもう私の事なんて見えていないかのように、其れ以上何か云う事も無く、足早に去って行ってしまう。
追いかけなくちゃいけない。
追いかけて、謝らなくちゃ。
でも、今更、どんな言葉をかければいいのだろう。
抑々私は、何に対して、謝ればいいのだろう。
謝るべきだと思う事は沢山あると分かっているのに、私は動けない。まるで、其の場に縫い留められた様に。
――謝ったところで、もう、許してなんて貰えない。
頭の片隅、やけに冷静な部分で、然う理解しているからなのだろうか。
其れとも、罵倒される事が怖いのだろうか。
頭の中で色々な事が一度にぐるぐるとめぐって何一つまとまらないまま、只時間だけが徒に過ぎていった。
ある日の思い出
一度起きた事を償う事は、二度と出来ないのだと私は知った。
19.2.22
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