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▼ゆっきーとヒロインは『部屋にある湖でうなぎを5匹捕まえないと出られない部屋』に入ってしまいました。
※多少マニアックな表現有り
どういうわけか、目覚めたら雪村さんと共に真っ白い壁で四方を塞がれた部屋にいた。
ぐるっと視界を巡らすと中央にはぽつんと設置されたさほど大きくはない水の溜まった池のようなものがある。
側には何かが書かれた紙の貼られた立札と桶のようなものが見えた。
近づいてみると記されていたものは『この湖でうなぎを5匹捕まえないと出られません』。
その言葉に二人で顔を見合わせてから恐る恐る水溜りを覗いてみるとそこにあったのは5匹のうなぎが元気に泳いでいる姿だった。
「うなぎ……ですか」
「うなぎ、だね」
沈黙が走る。
ど、どうすれば?
困惑の表情を浮かべながら雪村さんに顔を向ける。
彼は壁に目を向けているようだったが、私の視線に気付くと振り向き視線を合わせてくれた。
「とりあえず本当に出られないのか調べてみようか」
「は、はい!」
私たちは四方を遮る壁へと向かった。
***
結論から言うと、出られそうな場所は見つからなかった。
どこを触っても動く気配の無いただの壁。
仮に立て札のご注文通りにうなぎを捕まえたとしても、そこから出れるのか疑問が残るほど、ただの壁だった。
「うなぎ捕まえなきゃですかね……」
「とりあえず言う通りにしてみるのがいいかもね」
雪村さんはそう言うや否や普段からふくらはぎ程に捲られているズボンの裾をさらに捲って、水に脚を入れても衣服が濡れないようにしていた。
私はというもの履いていたのはショートパンツであり濡れないほどの丈なため、準備する必要もなく雪村さんより先に水に入ることにする。
水辺に近づき、水中を覗く。
うなぎがそこにいないことを確認すると、おずおずとつま先を水につけた。水の温度はそれほど冷たくなく、むしろぬるいくらいのものだった。
水深は30センチほどだろうか。
「じゃあさっさと終わらせようか」
「はい!」
いつの間にか水の中に下りてきていたらしい雪村さんが横に並んで言った。
***
「あっ!」
うなぎ捕獲を開始してから数分たった頃だった。
不注意で足を滑らせた私がしまったと思い自然に漏れた声と、バチャンッと水音が響き飛沫が舞うのは同時くらいだった。
「うわぁ〜大丈夫?」
雪村さんが歩く度にぱちゃぱちゃと軽く音をたてながら心配そうな顔をしてこちらに向かってくる。
「やっちゃいました……」
私は腰から下を水に浸しぺたんと尻もちをついたまま面映ゆい思いで雪村さんを見上げる。
さっさと立ち上がろうと、体を支えていた腕に力を込めた時だった。
近くに泳いできたうなぎが、狭いところを見つけこれ好機といった具合にショーパンの裾からするりと衣服の中に忍び込んできたのだ。
「ひぁっ……!」
内腿に感じる、蠢くぬるりとした肌触りに短く嬌声のような音を含んだ声が漏れる。
「……エロ漫画?」
「ひぅっ! へ、変なこと言ってないで助けてくださ……! やっ!」
掴んで引き抜こうとしてもぬるぬるとした掴みにくさに焦りが相まって引き抜けない。それが余計にまた焦りを生む悪循環だ。
「どうにかなりそう?」
「なっならないです!!」
あくまで冷静に見守るような雪村さんに相対して、当事者である私はとにかく必死だ。思わず雪村さんに食ってかかると、彼は「しかたないなぁ」と小さく声を漏らした。
かと思うと、いきなり私の腕を引き、その勢いで水底に着けていたままの腰が持ち上げられる。そのまま流れるような動作で、私の腕を引いた手と逆の腕を私の腰に回し支えてくれたようだった。
「んっ」
膝立ちになったことで、ショーパンの中に入り込んでいたうなぎは重力のままにずるりと下に落ちる。ボチャンッと音をたてて水に沈んだうなぎは、何事も無かったかのようにすいすいと泳いでいってしまった。
「あ、ありがとうございました……」
「もっと早く助けたかったんだけどごめんね?あまりにエロかったから。顔赤くして涙目で慌てるとこも可愛くてつい」
「もう、いいです……」
結局5匹捕まえて、その部屋から出られたのは1時間程たった頃だったと思う。
5匹目を桶に入れた瞬間にパッと今まで無かった扉が現れたのだが、疲労困憊の私はやっと出られるという事実だけを受け入れ、細かいことは考えないことにしたのだった。
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くろうさぎ