服をぎゅっと掴んだ時、深く触れ合う雪村さんの唇がくっと歪んだ感覚が伝わったような気がした。
必死についていこうと縋ったにも関わらず次の瞬間に彼は絡めた舌も、触れ合った唇も、余韻さえも残すことなくすぐに私と雪村さんの距離は離されてしまった。
なぜ? と疑問は浮かぶものの、それを口にすることは出来ない。私の中で行き場のない熱が、胸を焦がすように燻っていた。
「ゆきむらさん……」
自然と漏れたその声は、呂律が回らない子供のような拙いものだった。深く絡まされた彼の舌から感じただけのたった少しのアルコールで酔ってしまったのかもしれない。
頭の中はふわふわと浮かぶようになにも考えられなくなっていくようだった。
熱に惚けた思考は、ただ、雪村さんを求めていた。
とろんとした瞳で雪村さんを見つめると、彼はふっと意地の悪い笑みを浮かべる。
「物欲しそうな顔してるよ。かわいいね」
さらりと頭を撫でられ、額にひとつだけキスを落とされた。
「んっもっと……」
唇に欲しいのだと、雪村さんの瞳を覗けば彼も奥底に熱を潜めた瞳を向ける。
まるで獲物を狙うかの如く、獰猛さを秘めた熱を孕んだその黒は、私の心を掴んで捕えるかのようだ。
恐怖か歓喜か。ふるりと身体の奥が震えた。
「俺、今酔ってるからなにするかわからないけど」
「構いません……雪村さんが、欲しいんです」
自分は酔ってしまっているのだと思えば、そんな恥ずかしい台詞もするりと口に出すことができた。
そうだ、私は酔っているのだ。
雪村さんの首筋に唇を寄せ、皮膚に擦り合わせた。そのままぺろりと舐めるように微かに舌を這わせると、雪村さんからは息を呑む音が聞こえる。ぴくりと身体が反応したことが唇越しに伝わって、胸が熱くなった。
上気した気持ちのまま顔を上げ雪村さんの顔を見ると、頬は仄かに紅潮してたものの、僅かに眉を顰めているようだった。
「されるよりしたほうが性にあってるんだよね」
言葉を発する唇と共に、雪村さんが動く。
私のうなじに手を回し、もう片方の手を頤に当て私の頭を固定すると彼は唇に噛みついた。
甘い刺激に心が奮える。
私はそのまま、彼と一緒に酔ってしまおうと決めたのだった。