言論IF〜クリスマスプレゼント交換会in六神将+α〜02
テーブルの下にあるらしいプレゼントは、テーブルクロスに邪魔されてその色すら見えない。
「プレゼントをランダムに配置した。好きな席に座ると良い。同じ席でも構わん」
あらかじめ椅子の数は決まっているため、それぞれ思うがままに席に着く。
考えるのが面倒で同じ席に座ったら、今度はリグレットとアッシュに挟まれる形になった。
何気なくシオリを見れば今度はレインとアリエッタに挟まれていて、誰のプレゼントに当たるか呑気に話している。
あまった席にヴァンが腰掛けたのを合図に、全員足元に置かれているであろうプレゼントへと手を伸ばした。
あまり行儀の良いことではないが、今回だけは無礼講、ということらしい。
僕の足元にあったのは、両手に乗るほどの細長い箱だった。
ちなみにラッピングのカラーは赤と緑のコントラストが定番だというシオリの情報により、全てのプレゼントが赤と緑で統一されていた。
全員がプレゼントに手を取って机の上に置いたのを見てから、シオリがにっこりと笑って告げる。
「では、開けてみましょうか」
その一言に釣られ、ある者は微笑みながら、ある者は期待に目を膨らませてラッピングに手をかける。
僕も何気なしにリボンを解いてみると、現れたのは白い箱。
何も考えずに開けてみれば、そこにあったのは黒地に金の装飾が入った万年筆が納まっていた。
シンプルな分使う人を選ばない、そんな品だ。
「あ、シンク…それ、アリエッタのプレゼントです」
「は?アンタがこれ選んだの?」
向かい側の席から声をかけられ、予想外の事実に思わずそんな声が漏れる。
アリエッタが選んだとは思えないセンスに思わず驚いてしまったのだが、そんなことに気付くことなくアリエッタは言葉を続けた。
「シオリさまと一緒に選んだから…最初お肉入れようとしたけど、生ものは流石に駄目だって」
アリエッタの台詞に釣られ、シオリを見る。
シオリは苦笑気味に頷いていて、僕はその時心底シオリに感謝した。
流石に生肉のプレゼントは嬉しくない。むしろなんか怖い。
「…おい、何だこれは」
感謝の念を覚える僕の隣では、アッシュが憮然とした顔で開けられたプレゼントを見ていた。
細い金色の鎖が輪になり、楕円の金属がぶら下がるそれ。
「あぁ、それはオレだ」
どう見てもネックレスにしか見えないそれは、どうやらラルゴが選んだプレゼントだったらしい。
意外すぎるプレゼント第二段に思わずぽかんと口を開けてしまう。
「俺は男だ!」
「俺が意図してお前に渡したわけではないんだがな…まぁ落ち着け。それはな、写真を入れられるようになってるんだ」
「写真、だと?」
ラルゴに促され、アッシュがネックレスを手に取る。
飾りの部分である楕円形の金属だと思ったそれは突起の部分を押すとぱかりと開いた。
今は何も入っていないそこに、写真を入れられるのだとラルゴは言う。
「好きな写真を入れると良い。己の決意を決める一つの道具にもなる。ネックレスなら団服の下に隠れるから他人の目に触れることも無く、服の下ならば動きの邪魔になることも無い」
ラルゴの言葉にアッシュは黙って考えた後、蓋を閉めてから貰っておく、とだけ答えた。
何か思うところでもあったのか、後でどんな写真を入れるのか見たい気もする。
そしてその反対側のディストは、何故か金切り声を上げていた。
「何故!何故私の元に来るのがこれなのですか!!」
「は?どれ?」
声に釣られて反対側を見れば、そこにあるのはやけにデカイ箱。
それから出されたであろう商品は、今ダアトで流行っている譜業の一つだ。
「…音声再生機、ですか」
それを見たシオリはやはり苦笑していた。
それを見て僕はようやく思い出す。
そもそもその音声再生機は、いつでも音楽が聴ける故郷が懐かしいとぼやいたシオリに何故かディストが対抗心を燃やして開発した譜業だ。
それを見たシオリが商売のチャンスと言わんばかりに第二師団に量産化を頼み、販売しているのである。
即ち、ディストは自分が開発した商品が手元に渡ってきたことになる。
「私の部屋にはもっと新たに改良したものがあるというのに、旧型を貰っても嬉しくありません!」
ディストが叫んだ途端、ガゥンッとこの場に似つかわしくない音が響く。
反射的に音の発生源を見れば、譜銃を構えたリグレットがディストに向かって砲口を向けてにっこりと笑っていた。
「……それは私が選んだものにケチをつける、ということかしら?」
「イエ、ナンデモアリマセン」
「そう、それは良かった。今巷で流行のレコードも一緒に入れてあるから、是非楽しんで頂戴」
流石のディストも、輝かしい微笑みを向けるリグレットには逆らえなかったらしい。
カチコチに固まった状態で反論をすることなく、壊れた譜業のようにこくこくと頷いていた。
確かリグレットはもっと節度があったような気がするんだけど、どうもシオリと出会ってから大分フリーダムになってしまったらしい。
珍しくもディストに同情を覚えつつ、今度はレインの方に目をやる。
そこには布を広げて目をきらきらさせているレインの姿があった。
「あぁ、レインに当たったんだ」
「これ、シンクが選んだんですか?」
「そうだよ。無難なものって探してたらそれが目についたからさ」
緑のタータンチェックでできた大判ストール。
何を選ぶべきかと迷っていた中目に付いたそれ。
巻いても良いしひざ掛けにしても良い、贈り物に最適だと店員に勧められて買ったものだ。
「ありがとうございます!大事に使います!」
少し頬を紅潮させて喜ぶ姿を見て、少しだけ胸が疼く。
プレゼントを贈るのも悪くないかな、なんて思える程度にその反応は嬉しかった。
「じゃあ、これは…誰の?」
そんな中、アリエッタが小首を傾げて手に持っているのはマグカップ。
白地に赤いリボンを首輪代わりに巻いた黒猫の描かれたシンプルなそれは、プレゼントを選んでいる最中に見たことがある。
かなり質が良いらしく、シンプルな見た目に反して確かそれなりに金額のする者だった筈だ。
「それは私だな。老若男女関係なく使えるデザインを選んだつもりだったが…気に入らないか?」
「総長がこれ買ったの…?」
こてりとアリエッタが首を傾げる。
その隣ではシオリがどんな顔をして買ったんでしょうね?とか呟いていて、可愛い部類に入るであろうマグカップを買っている主席総長の図が頭の中で再生され、思わずぷっと噴出してしまった。
周囲も同じ想像をしたのだろう、リグレットなどは小さく笑っているし、レインも笑みを堪えているのが見える。
「……変か?」
「そんなことない。嬉しいです、総長、ありがとうございます」
マグカップを抱きかかえながら微笑みを浮かべてアリエッタが頭を下げる。
まぁ本人が喜んでいるのだから良しとしようということで、微妙な空気を切り替えるためにリグレットがヴァンにどんなプレゼントだったのかと問いかけていた。
「うむ、写真立てだ。シンプルなものだから、執務室に飾っても良いかもしれないと思っている」
そう言ってヴァンの手にあったのは、優しい色合いをした木枠の写真立て。
華美ではない程度に葉と蔓を模した装飾が掘り込まれていて、万人向けのものだというのが見るだけで解った。
「それ、シオリさまが選んだ奴、です」
「シオリが?へぇ…確かに無難だね」
「はい。妹さんの写真など入れられてはいかがでしょう?」
「ティアのか…ふむ」
ヴァンは一つ頷きながら、何も写真が入っていない写真立てそっと撫でた。
その目は酷く優しげで、なんだかんだ言いつつ妹が可愛いのだろう。
最初はプレゼントなんて何を選べば良いのか解らなかったが、どうやら全員無難なものを選んできたらしい。アリエッタが最初選ぼうとした生肉はともかくとして。
まぁ誰に渡るか解らないプレゼントで、奇抜なものを選ぶような馬鹿は居ないかと納得していると、そういえばシオリがどんなプレゼントを貰ったのか聞いていなかったなと思い出す。
シオリの前には大きな箱が置かれていて、その中身は空っぽだ。
「シオリはどんなプレゼント貰ったのさ?」
「私ですか?これです」
シオリが箱をどかし、膝の上に乗せていたであろう物体をテーブルの上に置いた。
ズラーと間抜けな声を上げながら現れたのは、どこかで見たことがある譜業。
「タルロウXだそうです」
笑顔でシオリが告げ、沈黙が落ちる。
レインとアリエッタがそっと視線をそらしているのを見ると、コメントのしようがなくて見なかったふりをしていたのだろう。
ズラーと鳴く(?)タルロウXの頭を撫でながら、シオリはにこにこと微笑んでいて…リグレットやラルゴなど、良識のある大人達の視線がディストへと向けられた。
「ディスト、お前…」
「貴方、一体何を考えてアレを選んだの?」
「なんです?何が不満なのです!嬉しいでしょう、私の傑作ですよ!仕事ですさんだ心の癒しになること間違いなし!」
「阿呆かっ!」
「何ですって!?」
自信まんまんなディストの言葉に僕は思わず突っ込んでいた。
アレの何処が癒しになるというのか。小一時間ほど問い詰めたい気分だ。
アリエッタまで外すことなく無難なプレゼントを選んできたというのに、この33歳の良い歳の大人がそんなことすらできないのか。
シオリ本人が気にしていないようだったので誰も深く突っ込まなかったが、いい加減常識というものを身に付けて欲しい。
「見慣れると結構可愛いですね」
「そうでしょうそうでしょう!タルロウXは可愛いのです!」
「ズラー」
……それでいいのか、シオリ。
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