言論IF〜クリスマスプレゼント交換会in六神将+α〜03
無事(?)プレゼントも全員の手に渡り終わり、それではそろそろお開きにしましょうか、という頃合になった時、突如隠しきれて居ない気配が近付いてくるのを感じて僕は動きを止めた。
レインとシオリとディスト以外、全員気がついたのだろう。
首を傾げている二人を部屋の奥へと追いやり、庇うようにして席から立ち上がる。
気配を完全に消しきれていないものの殆ど足音が聞こえないということは、そこそこの訓練は受けていそうな感じだ。
全員で顔を見合わせ、大鎌を持ってきていないラルゴや譜業での戦闘を主とするディストはシオリやレインを守るために最奥へと回る。
続いてリグレットとアリエッタがその前、戦闘で言うならば後衛へ回って譜術で援護できる位置へ。
ヴァンとアッシュが剣の柄に手をかけながら前衛に回り、僕はその間に入ってどちらにでも動けるように腰を落とした。
その場に緊張が満ちていくのが解る。
やがて気配が一つ、いや二つ、部屋の前で止まったのを感じた。
衛兵ならば、少なくとも気配を消そうとすることなくノックをするか声をかけるだろう。
しかし音がすることなく、ゆっくりとドアノブが回るだけ。
騎士団兵ではないと悟り、全員武器に手をかける。
そして次の瞬間、勢いよく観音開きの扉が開いた。
「「メリークリスマス!!」」
「…………は?」
「イオン、それにフローリアン。どうして此処に?」
ぽかん、と間抜けな顔をするヴァンとアッシュはさておき。
思わず間抜けな声をあげた僕も含め全員の動きがそのまま止まった状態で、シオリが呑気な声をあげた。
オリジナルは白いファーつきの赤い服を身に纏っていて、なにやら白い大きな袋を担いでいる。
その隣に居るフローリアンは何かの角のようなものを頭につけ赤く丸い付け鼻をつけていて、一体何がしたいのか良く解らない。
「今日クリスマス会をやるってアリエッタから聞いてね、着ちゃった」
「僕も!僕もシオリから聞いて、頑張ってこれ探したんだよ!」
「で、何で全員臨戦態勢になってるの?」
「……あ、あんたたちが中途半端に気配を消してくるからだろがぁああ!!」
あっけらかんと聞くオリジナルに対し思わず怒鳴った僕の声を聞いて、固まっていたほかのメンバーもようやく臨戦態勢をとくのだった。
「で、何さその格好」
改めて全員席に着いた状態で、僕はオリジナルとフローリアンに問いかけていた。
ちなみに白い袋の中に入っていたのは酒とジュースとつまみだったらしく、大人達は複雑そうな顔をしたものの大人しく追加の酒を煽っている。
「シオリから聞いたんだよ。
クリスマスはこんな格好した白髭のおじいさんが暖炉から家の中に入ってきて、良い子には枕元にプレゼントを置いていき、悪い子は袋に詰めて連れて行くとか」
「何それ、怪談?てゆーかただの不法侵入かつ誘拐犯だよね?」
「で、そのおじいさんがサンタっていうらしくて、サンタは赤ッ鼻のトナカイに空飛ぶそりを引かせて世界中を回って子供達にプレゼントを届けるらしい」
「そのサンタってのは超人か何かなわけ?」
「さぁ?」
恐るべし、サンタ。
きっと物凄く素早いに違いない。
「それでね、じゃあどうせならサンタの格好してこうってなってね」
「そうそう。だから僕がサンタの格好をして、フローリアンがトナカイの格好をしてるって訳。どう?びっくりした?」
「むしろ僕はオリジナルとフローリアンが知り合いだったことにびっくりなんだけど?」
でもまぁ、想像はつく。恐らくシオリ経由で知り合ったのだろう。
もしくはシオリからフローリアンの存在を聞いたオリジナルが今回フローリアンに作戦を持ちかけたか。
「サンタはおとぎ話のようなものですから、そこまで真剣に考えなくても良いですよ」
そんな中、情報の発信源が僕の隣に座ってきた。
その手にはイオンが持って来たフルーツジュースの入ったグラスが二つあって、その一つを僕の前に音も立てずに置く。
あぁ、僕の分か。
「おとぎ話ねぇ」
「えぇ、といっても私の祖国は妄想逞しい国でしたから、ミニスカートバージョンのサンタ服を着た女性の衣装などもありましたね」
「妄想逞しいって…」
「たまに気になるんだけど、一体シオリの祖国ってどんな国なわけ?」
「そうですね、一言で言うなら娯楽大国、でしょうか」
シオリの言葉に想像力を働かせてみるものの、一向に娯楽に溢れた国というのが想像できなかった。
これは僕の想像力が貧困だとか、そういうのが原因じゃないと思う。
そんな中、自分が被っていた白いぼんぼんのついた帽子をアリエッタに被せながら、オリジナルがヴァン達を指差して言った。
「ところでシオリ」
「はい?」
「アレ、どうするの?」
「どうしましょうねぇ…」
苦笑交じりのため息に、僕は何事かと背後を見る。
そこに居るのは明らかに酔っ払っているであろうアッシュと、そのアッシュに絡まれているディストだった。
ちょっと目を放した隙に、立派に酔っ払いへと進化していたらしい。
「大体なぁ、あの論師のどこがおやさしーお方なんだ!
見たことあるのか、あのぜったいれーどの目線!しかも容赦なく人の心を抉る言葉の選び方!
腹に一物どころか何飼ってるかわかんねーおそろしー女だぞ!!」
「だから何故それを私に言うんです!私は私の知的好奇心を満たせる会話ができるだけで充分なのですよ!それに彼女は暴力も振るわないでしょう!」
「思いっきり言葉の暴力ふるってんだろ!」
「…貴方だけじゃないですか?」
「ンだとこらぁ!この屑がっ!どういう意味だ!」
「そのまんまですよっ、あぁ!人の襟を引っ張るんじゃありません!!」
話題の中心である、アッシュ曰く腹に一物どころか何を飼っているか解ったもんじゃない論師様であるシオリはにこにこと笑っているだけで怒っている様子は無い。
しかしその笑顔が一番恐ろしいのだと、僕やヴァンやオリジナルはよーく知っている。
シオリの笑顔に気付いたヴァンが密かに後ずさっている中、シオリは笑顔を崩さないままオリジナルへと問いかけた。
「イオン、一体どんなお酒を持って来たんです?」
「んー?度数の割には飲みやすいって聞いてさ、お土産に良いかなって」
「つまり気付かないうちに酔っ払ってしまうようなお酒を持って来たんですね。酒は飲んでも呑まれるなと言いますが…無様ですね」
「ぶざまってなーに?」
「……もうちょっと大人になったら教えてあげるよ」
「……です」
「ははは…」
言葉の刃が常時より二割増な気がするのは、きっと気のせいじゃない。
フローリアンの無邪気な質問に少しだけ心を救われつつ、必死にアッシュの口を塞ごうとするヴァンに少しだけ同情した。
そんな中、頬を赤く染め目が据わったリグレットがふらりと立ち上がる。
「アッシュ、お前は論師様がそんなに気に入らないのか?」
「あたりめーだろ!お前はしらねーだろうがな、あいつは」
「知ってるとも!!あの毒々しい微笑み、信者を見下す絶対零度の視線、預言中毒者など気にかける価値も無いと言わんばかりの嘲笑…素晴らしいではないか!!」
「素晴らしくもなんともないだろ!むしろ教団内では最悪じゃねぇか!!」
「だがな、頼りがいがあるのは事実だ。あの愚か者どもを見下す視線…シルヴィアを思い出す」
「お前の妻は病弱だった筈だろう!?」
どうやらリグレットとラルゴも完全に酔いが回っているらしく、一番非常識だった筈のアッシュから常識的なツッコミが炸裂している。
というか全員言いたい放題である。
恐る恐るシオリを見れば、その顔には笑顔が張り付いていて…。
「アルコールは理性を溶かすようですね…」
「はは、全くだね」
「アンタが持って来た酒のせいだろ!?」
他人事のように笑っているオリジナルにコチラまで突っ込みをしてしまう。
さり気なくアリエッタがフローリアンの耳を塞いでいるのだけが救いだった。
勿論レインの耳は僕が塞いでいるが、こちらは既にシオリに毒されている片鱗を見せつつあるので効果の程があるかどうかは解らない。
「しかしまぁ、いくら人が来ないといえどこれ以上騒いでしまえば周囲に迷惑がかかるのも事実。そろそろお開きにしましょうか」
「お開きにするって…この酔っ払い共はどうすんのさ」
青ざめているヴァン、なにやら過去に陶酔しているらしいラルゴ、論師があーだこーだと話しているアッシュとリグレットに、それに巻き込まれているディスト。
酔っ払っていないのはディストとヴァンだったが、彼等に抑止力は無いのでこの場合は論外だ。
というかアッシュは未成年だった筈だが、誰もそこは突っ込まないのか。
「勿論、放置です」
笑顔で言い切ったシオリはさくさくと掃除の準備を始める。
酔っ払いたちをうまく煽てて部屋の隅に隔離すると、僕やアリエッタ達に指示をして飾りの取り外しなどを行うシオリ。
その間にもヒートアップする大人達だったが、彼等は居ない存在なのですと論師が仰るのだから僕等はそれに従うしかない。
ほら、階級を重んじるって大切だから。
「キッチンの片付け、終わりました」
「ゴミもちゃんと纏めたよ!」
「椅子も元の場所に戻しておいたし、机もアレ以外は全部初期配置に戻したよ」
「掃除道具も元通り戻しましたよ」
「残ったお菓子とかも纏めたよ、これ持って返っていい?」
「えぇ、構いませんよ。さて、きちんとお片づけもできました。こういった会は片づけまで終わらせてやっと終了です。忘れてはいけませんよ」
片づけを終わらせた僕等の報告を聞いたシオリが、フローリアンやアリエッタ、それにレインに言い聞かせるように言う。
三人がちゃんと返事をするのを見て満足そうに頷いてから、残った料理やお菓子を好きに分配しなさいと三人に渡す。
オリジナルはちゃっかり自分の分は確保してあるので、わざわざ渡す必要性は無い。
「さて、今日一日ありがとうございました。故郷を思い出してとても楽しい時間を過ごせました。
私は最後の片づけをしてから帰ろうと思います。貴方達は先に帰ってなさい」
帰るように促すシオリの手には、いつの間に用意したのか"アッシュ専用"と書かれているらしいかつてのソレ。
「……フローリアンとイオン様は、アリエッタがお送りする、です」
「じゃあ僕はレインを送っておくよ」
何の片づけなのか、それで何をする気なのか、全ての疑問を無理矢理飲み込み僕とアリエッタは素直に従うという選択肢を選んだ。
良い子ですね、なんていわれても嬉しくない。
嬉しくないが逆らう気も無いので、僕等を締め出した後第六会議室から聞こえた悲鳴とか叫び声とか鳴き声とか、そういうのは全て聞こえなかったことにする。
「ねー、片付けの手伝いしなくて良かったの?」
「良いんだよ、シオリじゃないとできない片付けだから」
「そうです。シオリ様、女王です。女王の仕事、邪魔しちゃ駄目」
微妙に間違っているアリエッタの言葉に解ったと頷くフローリアン。
さて、これは訂正は必要だろうか。
「まぁシオリなら大丈夫でしょ」
「そうですね、シオリですし」
このオリジナルとレプリカの言葉はどうするべきか密かに悩む。
無条件の信頼といえば聞こえは良いが、人はソレを丸投げという。
翌日、微妙に青い顔をした同僚達は、論師に何をされたか決して口を開かなかったという。
クリスマスプレゼント交換会in六神将+α
えーと、すみません。
書いてる私は楽しかったですとしか…←
清花
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