「調子に乗らないで!」
「次来いよ!」
「調子に乗らないで!」
セントビナーを出てカイツールへと向かう最中、魔物との戦闘になり剣を振るったルークにすぐさま叱責の声が飛ぶ。
ルークはそれにムッとした表情を見せたが、何も返すことなく次の魔物へと向かった。
そしてそのルークの背中を守るようにして、大剣をふるう女性が居た。
彼女はカーニャ。キムラスカ国軍の退役兵だ。
ケセドニア北部戦を機に軍を退役した彼女だが、その戦闘能力は健在だった。
特に体術と剣術を掛け合わせた彼女独特のスタイルは素人でも目を瞠るものがある。
そして今もまた、カーニャはルークの背を狙っていた雑魚を一撃で葬り去る。
既に退役した身とはいえ、エンゲーブでルークに出会ったカーニャは護衛を申し出てこうして同行している。
ただ戦闘能力に関しては問題なくとも、彼女の態度はルークとイオン以外に良好とは言いがたかった。
「次っ!」
「調子に乗るな!」
「な…っきゃぁ!?」
魔物を倒したティアにカーニャが怒鳴り、ティアが咄嗟にカーニャへと視線を移した途端、隙ありといわんばかりにチュンチュンがティアへと襲い掛かる。
ルークがそのチュンチュンを倒し、ようやく戦闘は終了を告げた。
「っ、一体どういうつもり!?」
「何のことだ?」
戦闘が終わり、大剣を背中へと背負いなおしたカーニャにティアが食って掛かった。
しかしカーニャは目を吊り上げて怒るティアの言葉をさらっと受け流し、ルークの身体に怪我が無いかばかりを気にしている。
それを見かけたガイがため息をつき、腕を組んでカーニャへと声をかけた。
「カーニャ、言いたくないが君が戦闘中あんな言い方をするからティアは攻撃を受けたんだぞ。それに関して何の罪悪感も無いのか?」
「ほう?どんな言い方だ?」
「もう忘れたの?調子に乗るなって私に怒ったでしょう!」
「私はお前の真似をしただけだが?」
「あ、確かに似てたな」
ガイとティアに対しカーニャは悪びれも無く答え、ルークも確かにと頷いている。
ティアはルークを一つ睨みつけたが、今回の敵はカーニャだと認識しているのだろう。
アイスブルーの瞳を吊り上げ、カーニャに向かって怒鳴り声を上げる。
「私はあんな言い方してないわ!大体謝罪の一つも無いなんて、どういうつもり!?」
「謝罪?何故私が謝罪する必要が?」
「貴方のせいで私は怪我をしたのよ!?」
「自分の未熟さを他人のせいにしないで貰おうか。仮にも響長を名乗っているのなら例え声をかけられても敵に反応できなくてどうする。
しかもそれを軍人として情けないと反省するならともかく、他人のせいにするとはな。ダアトの軍事訓練は随分甘いと見える」
カーニャは憤るティアを鼻で笑ってあしらうと、くるりと背を向けてイオンにお怪我はありませんかと確認し始めた。
イオンは怪我は無いと答えていたのだが、侮辱されたと感じたらしい怒りに震えているティアを恐る恐る伺っていた。
それを見ているジェイドは無言を貫いたままだ。
「馬鹿にしないで!私はちゃんと訓練を受けて、」
「ちゃんと訓練を受けたならば例え背後からの攻撃でも受けることができる筈だろう」
「私は後衛なのよ!」
「そんなの言い訳にもならん。軍人ならば前衛後衛できるようカリキュラムが組まれた筈だ。
むしろ自分は前衛の訓練をサボっていましたと言っているような物だろう」
「っ、貴方が気を散らすから…っ!」
「その程度の集中力しかないなら軍人など辞めてしまえ。他の人間にも迷惑がかかる」
ティアが反論するたび、どころかその反論すらろくにさせてもらえないまま、カーニャはそれをばっさりと切り捨てる。
その声は凍てつきそうなほどに冷たく、ティアに対して何の情も持っていないどころか嫌っていることを、例え何の関係の無い人間でも気付けるほどに冷え切っていた。
ティアを庇う義理の無いルークは黙ってそのやり取りを見守り、イオンは険悪になる二人に対しおろおろしていたのだが、そこに割って入ったのはやはりガイだ。
「カーニャ、ちょっと大人気ないんじゃないか?そりゃ元軍人でケセドニア北部戦を体験した君にはティアは未熟に見えるだろうが、彼女はまだ16なんだ」
「グランツ響長の腕前は未熟以前の問題であり軍人としてありえないレベルだと私は思っているが…確かに大人気なかったな。相手にするだけ時間の無駄だ。
さ、ルーク様、イオン様、参りましょう。日が沈んでは動けなくなってしまいます」
カーニャはそう言ってルークとイオンを促し、ティアとガイを視界から外した。
ガイとしてはそんなにキツイ言い方をしなくても、君のほうが大人なんだからココは謝った方が、と言いたかったのだろう。
しかし存在自体を無視されると言う結果になり、ティアは怒りにわなわなと震えている。
「そんな態度で居て、いつか痛い目に合うわよ!」
「自己紹介ならいらん」
ティアの最後っ屁もやはりカーニャに届くことなく、その後ジェイドはやっと会話が終わったと言わんばかりに先に進むぞと促すのだった。
ルークが戦っているのは、自分も戦いたいと夢主にねだったから。
渋々折れた夢主はルークを護りながら闘っています。
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