「ずーっと寝てても良かったのにぃ」
あの後、アクゼリュスは崩落した。
神託の盾兵を使って密かにルークを呼び出したヴァンが暗示を使い、ルークに無理矢理超振動を使わせたのだ。
その後少し離れた場所に残されていたタルタロスを使用して、ルーク達はユリアシティへと向かった。
タルタロスの中には神託の盾兵の死体が大量にあったため、恐らく神託の盾兵が勝手に使っていたのだろう。
その中にアクゼリュスの住人の死体がないことに皆気付いていたが、彼等は崩落に巻き込まれたのか、それとも助かったのか確かめる術は無かった。
そうして辿り着いたユリアシティでルークは倒れ、ジェイド達はルークを置いて外郭大地へと帰っていった。
残ったのはイオン、ティア、アリエッタ、カーニャの四人だった。
ティアは自分はルークに着いているようモース様に命令されたからと、ガイやナタリアの誘いを拒んだ。
カーニャが怖かったわけじゃないと必死に自分に言い聞かせているティアを誰かが見たらしいが、真実は闇の中である。
そんなティアよりもイオンの頭を悩ませているのはアニスの存在だった。
アニスはイオンを置いて、タルタロスに乗って外郭大地へと行ってしまった。
確かにイオンは言った。行きたいのならばジェイド達と一緒に行って良いですよ、と。
しかしそれはイオンにとって最後の賭けだったのだ。
本当にアニスが自分を心配してくれているのならば、自分の守護役ならば側を離れる筈がないと、イオンは心の奥底で信じていた。
しかしアリエッタを側に置きルークを心配するイオンが気に入らないのか、はたまた自分を睨みつけてくるカーニャが怖いのか。
アニスはタルタロスを操縦する人員が必要だからと言い訳をしてジェイドと一緒に行ってしまった。
コレではもう、イオンでもアニスを庇うことは出来ない。
そうしているうちにルークが目覚め、ティアと共に外郭大地に戻ることを決める。
勿論補佐を命じられたアリエッタ達も同行しアラミス湧水洞を通って外郭大地に戻ったのだが、途中ガイとも合流し、更にジェイドに遭遇して力を貸してくれと頼まれた。
ナタリアが大詠師モースの手により、ダアトに監禁されたというのだ。
このままでは戦争がおきてしまうと、全員慌ててダアトに向かった。
カーニャとアリエッタが騎士団本部に入るための渡りをつけている間、そこで既に潜伏していたというアニスと合流。
アニスは髪を切って決意を新たにしたルークに向かって侮蔑の視線を向けた後、悪意を孕みつつも明るい声で、子供ながらの残酷さを持ってルークにこう言った。
「ずーっと寝てても良かったのにぃ」
途端、ルークが傷ついた表情を浮かべイオンの顔が嫌悪に歪む。
しかしアニスは気付くことなく、ルークを罵倒し続けた。
「アンタのせいで一体何人が死んだと思ってるわけ?よくもまぁ顔出せるよね。
あたしなら絶対無理、ドンだけ厚顔無恥なんだか」
ルークは言われても仕方が無いのだと思っているのか、俯きながらもその罵倒を大人しく受け入れている。
しかしその罵声も長くは続かなかった、渡りをつけてきたカーニャとアリエッタが戻ってきたからだ。
「随分と威勢が良いなタトリン奏長。自分がしたことは棚の上か。それとも既に忘却の彼方か」
「っ!? な、何で……ここに……っ!」
「当たり前だろう。導師イオンが下されたルーク様を補佐せよと言う命はまだ解かれていないのだから」
「で、でもコイツレプリカで、」
「だから何だ。インゴベルト陛下が親善大使に任命されたのはこのルーク様だ。例えルーク様が何者であろうと、その事実は変わらない。
それで、よくもまぁ顔が出せる、厚顔無恥、だったか?
さて、どこかで聞いた台詞だな。
私が居なければもっと罵倒していただろうな、厚顔無恥とは貴様のような者を言うのだこの愚か者がっ!」
怒声を響き渡らせるカーニャに、アニスは肩を跳ねさせた。
それでもキッと瞳を吊り上げる。そしてカーニャに向かってなけなしの反発心をかき集め、声高に反論した。
「でもコイツがたくさん人を殺したのは事実じゃない!それなのになんで庇うわけ!?」
「例えそれが事実だったとしてもだ。それを何故貴様が責める。貴様の家族が死んだわけでもない。貴様に責める権利など存在しない。
ルーク様をせめても許されるのは遺族のみ。ルーク様を裁けるのはマルクトのみだ」
「カーニャの言うとおりです、アニス。貴方にルークを責める資格はありません。
それを抜きにしても、ずっと寝てても良かったのに、ですか。
貴方は随分と人を傷つける言葉を使うことが得意なようですね」
「そんなことまで言ったのか……っ!」
反論の弁を失い、カーニャとイオンに睨まれたアニスは一歩後ずさる。
アリエッタがルークを慰めているのを横目に、カーニャは獰猛な瞳でアニスを見下ろす。
「タトリン奏長、一つ勘違いしているようだから言っておくぞ。
良いか、いくらルーク様の罪をせめても、貴様の罪は無くならん。
数は違えど貴様が命を奪う原因になったことが、貴様のせいで命が亡くなったことは変わらない」
「違……っ、あ、あたしはそのお坊ちゃんとは……っ!」
「そうだな、貴様とルーク様は違う。ルーク様は己の行いを見つめ、反省し、贖罪をしようとこうしてココにいらっしゃったのだ。
他人を罵倒する事で自分の罪から目を逸らし、謝ることも後悔することもしない貴様とは違うだろうよ!!」
カーニャはへたり込んだアニスを睨みつけた後、アリエッタやイオン、ルーク達に大声を出したことを詫びた。
そして神託の盾騎士団本部に乗り込む手段を見つけたと説明し、コチラですと案内を始める。
アニスを庇おうとしたガイをイオンが止め、ジェイドだけが淡々とほら行きますよとアニスに告げる。
その声は情を孕んでおらず、アニスはようやく自分はお情けでこのPTに居させてもらえるのだと気付くのだった。
この台詞は子供ならではの、残酷な台詞だと思います。
しかも悪びれることもなく、むしろ悪いことだと思ってないような口調で言いますからね。
普通嫌悪感抱くと思いますよ。
アニスは自分の罪を軽くしようとすることに長けてるイメージ。
誰かの方が罪が重いって叫んだり、仕方なかったのって言い訳したり。
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