「詠唱中は守って!」


「詠唱中は守って!」

カイツールへと向かう途中、何度目かわからない魔物との戦闘でティアが怒鳴り、カーニャは周囲に気付かれないよう舌打ちをした。
大剣をふるい、数匹の魔物を一掃する姿はいっそ優雅だ。
しかしイオンとルークしか守らずジェイドやティアを気にかけない戦い方をするカーニャに対し、ティアは苛立ちを募らせていた。

戦闘が終わり、カーニャが大剣を背中へと収める。
そしてルークやイオンに怪我が無いか確認していると、ティアが怒りを滲ませた表情でカーニャへと歩み寄ってきた。

「カーニャ、貴方何回言ったら解るの!?詠唱中は守ってって言ってるでしょう!」

「何故私が貴様を守らねばならんのだ」

「詠唱中の術師を守るのは基本でしょう!?貴方も軍人だったならそれ位知ってるでしょう!」

「生憎と今の私は軍人では無いのでな、貴様を守る義理は無い」

「貴方は前衛でしょう!!」

「だから?」

今までティアに背を向けたままだったカーニャが、確認を終えてようやくティアへと向き直る。
その瞳は絶対零度の光を讃えており、同時にティアに対する侮蔑や嫌悪が見て取れた。
ティアは一瞬それにひるむものの、すぐにカーニャに向かって噛み付き始める。

「だから、って…前衛なら後衛を守らなきゃ駄目でしょう!?」

「私が先程言った言葉が聞こえなかったか?
今の私は軍人ではない。確かに元は軍人だが、今は戦闘ができる一般人に過ぎん。故に例え前衛だろうと貴様を守る義理は無い」

「何を言ってるの?貴方は前衛で、」

「何故理解できない?私が話しているのは前衛後衛以前の問題だ。
そもそも貴様やカーティス大佐などの軍人には一般人を守る義務がある。それを忘れたのか?
本来ならば貴様は私やルーク様を守らなければならない立場にある。
にも関わらず私が前衛に出ているのはルーク様やイオン様をお守するには圧倒的に戦力不足だからであり、私の純然たる好意に過ぎん。

それなのに私が前衛だからと言うだけで後衛たる自分を守れだと?
仮にも軍人を名乗るならばそんな寝言は寝てても言うな。自分の義務を放棄しておきながら厚顔無恥もはなはだしい」

最後は吐き捨てるように言い、カーニャは汚物でも見るような目でティアを見た。
ティアは怒りにわなわなと震えており、今にも持っている短杖を握りつぶしそうな勢いだ。
カーニャの言っている言葉の意味など考えず、ただ侮辱されたとしか考えていないのだろう。

「戦える力があるのなら戦うのは当然のことでしょう!?」

「それは貴様の中でだけの常識だな。例え戦える力があろうと軍人がいる場合は軍人に任せるものだ」

「でも、」

「でももクソもあるか。例え一般人に戦える力があったとしてもだ。
それは敵を屠るためではなく身を守るための力に過ぎん。敵を屠るために力を振るって良いのは軍人もしくは傭兵のみだ」

言葉を遮りきっぱりと断言され、ティアはついに短杖を地面にたたきつけた。
最早毎日の恒例となったティアとカーニャのやり取りにルークとイオンは最早諦め気味だし、ガイはティアを庇いたそうにしているが何かいえば言い返されると学習している。
ジェイドはジェイドで何か思うところがあるのか、口を閉じて眼鏡のブリッジを上げるだけ。

自分を庇ってくれる味方が居ないことにティアは泣きそうになったが、ココで泣いては負けだとキッとカーニャを睨みつける。
カーニャはティアの視線を鼻で笑うと、ルークとイオンに先を急ごうと促す。

「守られて当たり前、なんて甘ったれた考えはとっとと捨てることだな」

そう、言い捨てて。







ジェイドが黙っているのは……後で明らかになります。
夢主はティアが襲撃をかけたことを知りません。
多分ティアがやったことを知ったら激怒して切り捨てます。

戻る


ALICE+