「踏み込みが甘いわ、急所もはずしていたし何より雑よ」
「今の戦い方、ちょっとイケてね?」
「踏み込みが甘いわ、急所もはずしていたし何より雑よ」
「うるせー女」
カイツールへ向かう途中、魔物との戦闘を終わらせたルークとティアのやり取りにため息をつくカーニャ。
そのため息にジェイドはまた始まりそうだと密かにため息をつき、ガイはこれからのことを予測してくるりと背を向けた。
「そういうグランツ響長は魔物の側で詠唱をするなと何度言ったら解るんだ?
ナイフを投げる時の脇も甘いし、次の動作に移るまでに時間がかかりすぎている。
何よりナイトメアは効果の割りに詠唱時間がかかりすぎる。それくらいなら剣で倒した方が早い。
他人に注意する前に自分の戦い方を見直すんだな」
ぶすくされるルークに怪我が無いか確認しながらカーニャが言い、ティアは羞恥に顔を赤くした。
それでも今までのことから感情的になっては負けだと判断したのか、ティアは一度深呼吸をしたあと勤めてクールに言う。
「貴方に言われる筋合いは無いわ」
「それならばルーク様も貴様に言われる筋合いは無いな」
「私はルークのためを思って言ってるのよ」
「私も貴様のためを思って言ってるのだが?」
「でも貴方は私の教官でも何でもないわ」
「そうだな、貴様もルーク様の教官でも何でもないがな」
「っ、前衛の貴方には解らないでしょうけど、ナイフや譜術というのは、」
「なら後衛の貴様にも前衛のルーク様のことは解らないだろう、ちなみに私は武器は特殊なものでない限り一通り扱えるし譜術も習得している。単純に前衛がたりないから前衛に収まっているだけだ」
全てにべもなく切り捨てられ、ティアは怒りに顔を赤くした。
ルークがすげぇ、と呟き、ジェイドが見事なブーメランですね、とぼそりと言う。
「ブーメラン?」
「言ったことが全部自分に返ってきている、ということですよ」
「あ、なるほど」
ちなみにジェイドはつい先日カーニャに深夜に呼び出されて以来、不気味なほどにルークに対する態度を改めていた。
ルークも最初は気味悪がっていたが、既に慣れたらしい。
しかしお陰でルークも癇癪を起こすことが減ったのも事実であり、ジェイドもそれを見て多少目を瞠っていた。
それでうっかり「ルークは案外素直なのですね」と漏らしてしまったために、ルークが顔を真っ赤にしてそれを否定していたが。
「だいたい貴方は今は軍人ではないでしょう?そんな人に言われる筋合いは無いわ」
「大体貴様はキムラスカ人でもルーク様の教員でもないだろう?ルーク様とてそんな人間に言われる筋合いは無いぞ」
「私は軍人としてルークに身を護れるよう指導しているだけよ!」
「私は先人として貴様が能力を上げられるよう指示しているだけだ」
「真似しないで頂戴!」
「それは違うな、馬鹿にしてるだけだ」
馬鹿にしていると率直に言われ、初めてだったのだろう、ティアは絶句していた。
傍観を貫いていたガイも一緒になって目を見開いている。
言葉を失うティアに対しカーニャは鼻で笑うと、そのままくるりと背を向けてイオンに怪我が無いか確認を始めている。
が、ガイはそんなカーニャに食って掛かった。
「カーニャ、今まではティアのためを思って言っているんだと思ってたから口出しをやめてきたが、馬鹿にしてるってのは酷いんじゃないか?」
「馬鹿にしたくもなるだろう。今まで何度注意してきたと思ってる。
それなのに言われたことを学習しない、反省もしない、なのにルーク様には食って掛かる。
何度切り捨ててやろうと思ったことか」
「切り捨てるって…何言ってるんだ!?」
「貴様こそ何を言っているんだガイ・セシル。ルーク様をお守するのが貴様の仕事だろう。
それなのに何故ルーク様がたかが一兵卒に侮辱されていることに何も思わない?
己が仕えるべき主が侮辱されているにも拘らず、それどころかルーク様をお守することなく魔物に突っ込むなど、貴様は本当に護衛剣士か?」
「ティアはルークのためを思って言ってるんだろう?だったら、」
「だったらもクソもあるか。私に対して何か言いたいのならばまずは己の職務を真っ当してから言うがいい。
貴様の態度は仕えるべき主であり、親友であるルーク様よりもグランツ響長を優先しているように見えるぞ」
「お、俺はそんな事してない!」
「ほう?では貴様がいつルーク様をお護りしたというんだ?言ってみろ」
カーニャに言われ、ガイは口を開こうとして自分が全くルークを護っていないことに気付いた。
戦闘中、ルークの背中を護っているのはカーニャだ。
そして戦闘が終わる度にルークとイオンを気遣い、怪我が無いか確認しているのもカーニャだった。
「あ、アレは君が居るから…俺がその分ティアや旦那を護ろうと…」
「おやガイ、人のせいにしないでくれますか。私がいつ護ってくれと頼みました?」
「確かに、援護は頼んでも護ってくれとまでは言ってないな」
そう、ジェイドは援護は頼むことはあれ護ってくれとまでは言わない。
言うのはティアだけである。
「貴方が私達を気遣わないから、ガイがその分気を使ってくれてるんでしょう!?」
「貴様の脳味噌は飾りかグランツ響長。私が貴様を護る理由はないと言ったはずだ。
それにガイが一も二も無くお守すべきはルーク様であり、貴様じゃない。
自分のお守するべき主を放り出して軍人を護るなど言い訳にもならん」
反論のきっかけを見つけたとでも思ったのか、ティアも口を挟んでくるがやはり切り捨てられる。
無言になった二人を冷たい視線で睥睨すると、珍しいことにカーニャは深い深いため息をついた。
「お前達はいつになったら反省と学習というスキルを習得するんだ?」
その言葉にカチンと来たのか、またガイとティアが反論しようと口を開いた。
が、ジェイドがガイの肩へと手を置いたため、結局喚いたのはティアだけである。
「ガイ、いい加減気付きなさい。確かに彼女の言葉選びはきついです。下手をすれば私以上にね。
しかし彼女は先程も言ったとおり、あなた達に対し反省と学習を促しているんですよ」
「けど、あんな言い方…」
「貴方はやるべきことを放棄して口だけ達者な人間を見れば苛立ちませんか?」
「……そりゃムカツクさ」
「それと一緒ですよ。貴方はルークを護るという義務を放棄しながらティアばかり庇っている。
彼女はそれに苛立っているのです。元軍人である以上、自国の王族を馬鹿にされるというのは腹に据えかねることでもありますからね。
もし彼女がまだ軍人であり、貴方が部下だったならば今頃言葉だけでは済みませんよ。
恐らく回復術をかけても暫く痛みに悶えるほどの体罰を与えられている筈です。
それを思えば言葉がキツイくらいなんと言うほどでもないでしょう」
「……つまり、彼女はまだ手加減してくれてるってことか?」
「そういうことです。
私ならとうに見捨ててますがね、未だに貴方達に対しああいった態度を取るということはあなた達にはまだ伸びしろがあり改善の余地があると判断しているのでしょう。
まぁティアに関してはとっくに見捨ているようですが」
「あ、それ知ってるぞ。叱られるうちが華ってことだろ?」
「そういうことです」
ジェイドの自分ならとうに見捨てているという言葉を聞き、自分の態度はそれほど不味かっただろうかとガイは考え込んだ。
そして次にルークの言葉の意味を考え、もしや自分はとんでもないことをしでかしてしまったのではないかと思い至る。
カーニャは元軍人だ。その腕を見る限り恐らく左官クラス、もしくは将官クラスだったのだろう。
現に隊を率いていたこともあると話の中で言っていたこともある。
そしてティアの言葉をことごとく切り捨てジェイドに態度を改めさせるほどの頭の回転の速さと弁舌の持ち主でもある。
けど、カーニャは決して理不尽なことは言わない。
「……なぁ、ルーク」
「あ?なんだよ」
「お前も、カーニャの言うとおり、俺はティアを優先してるように見えたか?」
「してたじゃん」
あっさりと言われ、ガイは愕然とした表情を浮かべた。
ルークは何を今更と言いたげな態度で、むしろ呆れすら滲んでいる。
もしカーニャに注意されなければ、ルークに呆れられていることに気付くことなく信頼を失っていただろう。
「…後で、カーニャに謝らないとな」
「その前にルークに謝るべきでは?」
「う…」
ジェイドの言いたいことがようやく身に染みたガイはその指摘に言葉を詰まらせたものの、素直にルークに対し頭を下げた。
ルークは別にもう気にしてない、これから気をつけてくれれば良いと少しだけ照れたように言う。
そして全員未だにカーニャに食って掛かってるティアを見る。
「ティアはいつになったら学習するんでしょうねぇ」
ジェイドの言葉にルーク達は無理だろう、と思ったが、とりあえず口に出すのだけはやめておいた。
イオン様空気。
何故かガイ様華麗に改心。
夢主はジェイドと似たような年齢です。
そんなに若くないよ!
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