「下品ですわね、浅学が滲んでいてよ」
「下品ですわね、浅学が滲んでいてよ」
「ナタリア、貴方はランバルディアの名を地に落としたくてそのようなことを仰っておりますの?」
腰に手を当て、ふふんと鼻を鳴らしそうな勢いで言ったナタリアの背後から、まるで嗜めるような声が聞こえた。
誰だと全員の視線がそちらに移れば、そこに居たのは一人の女性。
夜のような漆黒の髪を結い上げ、垂れ目がちな翡翠の瞳が穏やかな印象を与える、パンツスタイルの女性だ。
「カーニャ!おま、何でここに!?」
「まぁルーク、ファブレ公爵からお話は聞いておりませんの?」
「へ?父上から?」
「今回の和平に関してです。預言に詠まれておりますから貴方が親善大使となりましたが、貴方は外交は初めてでしょう?そのため、私がその補佐につけられたのです。
港に行って驚きましたわ。貴方の綺麗な朝焼け色の髪がちっとも見当たらないんですもの」
掌で口元を隠しつつ、くすくすとお上品に笑う彼女は一目で貴族だとわかるほどに気品に満ちていた。
そしてカーニャは全員の顔をしげしげと眺めた後、ナタリアの母方の従妹であり、ルークとは遠縁に当たるカーニャ・ラエ・コーラルと名乗る。
それに対し、ジェイドが王位継承権第七位を持つコーラル家のご息女だと補足した。
「そう言えば補佐をつけるとアルバイン殿が仰っていましたが……まさか貴女のような女性だったとは」
「ふふ、2年ほど武者修行の旅に出た経験もございます。足手まといにはなりませんわ。道中どうぞ良しなに」
大佐と仲良さげに?話していたカーニャだったが、ナタリアは突然現れたカーニャが話題を掻っ攫ったのが気に入らなかったのか、はたまた突然ランバルディアの名を地に落としたいのかといわれたのが気に入らなかったのか。
両方だろう。キッと目を吊り上げてカーニャへと噛み付き始める。
「カーニャ、わたくしがいつランバルディアの名を地に落とすような真似をしたというのですか!?」
「あらあらあら、ナタリア、おかしなことを言わないで下さいな。
貴女は先ほど言っていたではありませんか、浅学が滲んでいる、と」
「それの何がおかしいというのです!事実この頭の悪そうな神託の盾と、無愛想な神託の盾兵だけでは不安ではありませんか!」
「ナタリア、貴女は家庭教師の話をきちんと聞いていたのですか?
浅学は謙遜する言葉です。他人に使う言葉ではありません」
きっぱりと言い切られ、ナタリアは羞恥にカッと顔を赤くする。
本来ならば王女であるナタリアに対して、幼馴染とはいえカーニャのような貴族が苦言を申すなど以ての外ではあったが、カーニャは過去にインゴベルト陛下から直々にナタリアを諌める許可を貰っている。
そしてその背後ではルークがジェイドにそうなのか?と確認を取り、ジェイドがえぇそうです、と頷いて答えていた。
「それと仮にも貴女は王女なのですから、兵士を侮辱するような発言は控えて下さいな。
それとも、キムラスカとダアトとの関係を悪化させたいのですか?」
「そ、それは確かに迂闊でしたわ…ですが!それが何故ランバルディアの名を貶めることになるというのです!
私は王女として立派であろうと…!」
「それは貴女が無知であることを晒すたびに、王室は王女にまともな教育を受けさせていないのかと評価を受けるからですわ。
ナタリア、お願いですからもう少し自重自戒を覚えて勉学に集中してくださいませ」
たしなめるように言われ、ナタリアは悔しさと恥ずかしさに歯噛みした。
カーニャは母方の親戚だけあって、インゴベルトの妻でありナタリアの母である前王妃に似ていた。
前王妃を知るものは皆、その黒い髪と柔和な瞳にその面影を見つけるほどで、インゴベルトもまたナタリアとは別にカーニャをよく気にかけているほどだ。
しかしカーニャは外交は行うが、ナタリアのように内政は行わない。
特に福祉関係の執務は全て任されていることがナタリアの誇りであり、カーニャに対しての優越感を覚え、プライドが満たされる部分でもあった。
勿論、ナタリア自身そうやって外交から遠ざけられ、国民の人気を取るためだけのお飾りとして置かれていることには気付いていない。
「それは…」
「さぁ、ナタリア。解ったならば城へ戻って下さいな。貴女が姿を消した事で陛下のお心も乱れていることでしょう」
「そうだよ、伯父上だってお前に行くなって言ってたじゃねぇか!」
「嫌ですわ!わたくしは帰りません!」
「ナタリア!今帰ることが貴女のためなのですよ!」
「何故わたくしのためになるかが解りませんわ!今まで屋敷にこもりきりだったルークだけでは不安ですし、それに宿敵同士が和平を結ぶという時に王女のわたくしが出なくてどうしますの!」
「どうもしません。どうにかするならば陛下もそう仰るでしょう。
それにルークには今まで外交を専門としてきた私が着いておりますから、心配もご無用です。
貴女は城に帰りなさい」
カーニャが諌めるようにナタリアの名を呼び何度も城に帰れと説得するが、ナタリアは別に王女はいなくても良いと言われたことに腹を立て、ぷいとそっぽを向くとルークの腕を掴んで距離をとる。
そしてあの事をばらしますわよとルークに耳打ちをした。
途端にルークは不愉快そうに顔を顰め、本気で言っているのかとナタリアに言う。
そしてナタリアが本気でルークに脅迫行為を持ちかけていることを確認した後、ナタリアの腕を振り払ってからカーニャ達の方へと戻って行った。
「ナタリアも一緒に来てもらうことにした」
「えぇ〜!?」
「ルーク…"本気ですの"?」
「ナタリアも本気でアクゼリュスの住民を救いたいって思ってるらしいからな。仕方ねぇだろ」
若干青ざめたカーニャの問いかけにルークは心底不愉快そうに言う。
大佐とティアが呆れたようにため息をつき、ガイがやれやれと言わんばかりに肩を竦め、アニスが鬱陶しいといわんばかりの態度でナタリアを見る。
逆にナタリアは勝ち誇った顔でカーニャを見ていて、カーニャはそれを見て重苦しいため息を吐き出した。
「解りました。ルークが決めたのであれば、構いません」
最終的にカーニャも了承し、一行はそのままアクゼリュスへと向かう。
波乱が待ち受けることが容易に想像できるその旅路に、ルークとカーニャは周囲にばれないよう密かにため息をつくのだった。
捏造キムラスカ。夢主を加えてバチカル幼馴染カルテットです。
年齢的にはガイ、夢主、ナタリア、ルークで、夢主は(ガイを除いて)一番身分は低いですがインゴベルトからナタリアやルークを注意する許可を貰ってます。
ちなみに先遣隊はかく乱も兼ねて普通に陸路で出発、囮は教団バチカル支部に居た神託の盾兵にやって貰いました。
先遣隊丸ごと囮にして、全滅したらどうするつもりだったんだろ?
神託の盾の主席総長が救助隊に加わってることが発表されてるなら、神託の盾兵が救助に参加してもおかしくないですよね。
と、いう部分を入れようとして削りました。
今回はジェイドメインでは無いので。
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