できたてブラウニー



毎度恒例、バレンタインってなーに?って質問が緑っ子達からあげられ、我が家は現在チョコレートの香りに包まれている。
チョコを贈る日だけど実は製菓会社の陰謀が発展した形なんだぜって説明したら、本当に日本は独自形態に発展させるのが好きだねとシオンに言われた。
シンクはシンクでテレビで見たらしい抹茶チョコが気になるらしく食べてみたいと言っていたし、イオンはシンクの台詞に対しチョコクッキーなんかは紅茶にも合いますよねとやっぱりどこかずれた返事をくれた。
つまり、我が家は相変わらずということだ。

そんな中、バレンタインを迎えた我が家はどうせならチョコ菓子でもおやつにしようかと私は久しぶりのお菓子作りに奮起している。
お菓子作りなど久しぶりでレシピ本を広げてキッチンに篭り何とか出来上がったのはブラウニーだ。
どちらかというと紅茶より珈琲のほうが合うだろう。

「凄いね、手作り?」

「まぁね。久しぶりだから味は保障しないけど」

「じゃあ味見しようか?」

「とか言って先に食べたいだけでしょ?」

「あはは、ばれた?」

「ばればれです」

おやつの時間が近づき、勉強を終えたらしいシオンがキッチンへとやってきた。
出来上がったブラウニーを切って皿に並べれば、やはり勉強を終えたらしいシンクとイオンもやってくる。

「わぁ、今日のおやつは#カナコ#の手作りなんですね!」

「お菓子作りなんてできたんだ?以外…」

「よし、シンクはおやつ抜きね」

「嘘!?ごめんって!」

慌てて謝ってくるシンクに笑いながら、正方形に切ったブラウニーを大皿に並べていく。
テーブル片付けて拭いてきてとシンクに頼み、イオンには冷蔵庫に入れてあったほかのチョコレートを出してくれるよう頼んだ。
シオン?紅茶を淹れるよう頼んであるので、現在はコンロの前だ。

「これは?」

「チョコクッキーと、抹茶チョコ。あとストロベリーやホワイトチョコもあるよ」

「黒に茶色に白に緑にピンクか、チョコだけなのに随分カラフルだね」

「本当ですね。食べ比べですか?」

「折角バレンタインなんだし、今の時期は色んなチョコが出回るからさ。
流石にブランド系は揃えられないけど、これくらいはね」

ブラウニーと共に並べられたのは、普通にスーパーやコンビニに売ってる類のものばかりだ。
それでも目を輝かせてるイオンを見ると、買ってきて良かったと思える。
シオンもシオンで興味を隠しておらず、楽しそうにチョコレートの並べられた大皿を見ている。

「何か増えてるし。あ、この緑のって抹茶チョコ?」

「そう、食べたいって言ってたでしょ?」

シンクがテーブルを片付け終えたらしく、布巾を持って帰ってきた。
早速並べられたチョコレートに食いついている。

「シオン、抹茶も淹れてよ」

「自分で淹れなよ。ボクもコーヒー淹れるつもりだし」

「みんな紅茶じゃ駄目なんですか?」

「そこは好みが別れるからねぇ」

洗い物に手をつけながら話せば、最終的に最初は紅茶で後は好きに自分で淹れるといういつもの形で収まった。
さり気なく好みが別れているのを見ると、やっぱりこの三人はいくら似ていても別人なんだと実感させられる。

洗い物を終え、わくわくする三人と一緒にテーブルにつく。
それぞれいただきますの言葉を皮切りに、早速チョコレートに手を伸ばした。
一口サイズのチョコレートを口に含み、緩む三つの頬にこっちまで微笑みがもれてしまう。

「美味しい?」

「はい!」

「濃厚だね。これなら確かに紅茶より珈琲のほうが合うかも」

「ミルクチョコとかなら紅茶でも合うんだろうけどね」

「でもストロベリーは紅茶で当たりな気がしますよ」

「ホント?このピンクの奴だよね?」

「はい」

それぞれ感想を口にしながらチョコレートを頬張る姿はとても微笑ましい。
買って来て良かったと思いながら私もブラウニーを頬張る。
うん、久しぶりの割にはそれなりに美味しく作れたと思う。
やっぱりレシピ本の通りに作るのが一番のようだ。

「このブラウニーも美味しいね」

「はい。#カナコ#はお菓子つくりも上手なんですね」

「大げさだなぁ。お菓子なんてレシピ通りに作ればそれなりの味になるよ?」

「いえ、壊滅的な方が一人パーティに居たので…」

イオンの言葉にシンクとシオンは眉を潜める。
私がナタリアだねと答えを言えば、二人は更に眉を潜めた。

「あぁ、あの王女様?」

「ルークは旅をしているうちにそれなりに作れるようになったんですけどね」

「そもそも王族が料理してる時点でおかしいよね」

「何を今更。あ、てことはイオンも料理したわけ?」

「いえ、ぼくはそんな事をする必要は無いとさせて貰えませんでした」

「……あいつ等の基準って何?」

「ボクが知るわけないだろ。知りたくも無いけど」

ぽんぽんと辛辣な会話が飛び交う。
それでも全員口の中にモノを入れた状態で喋らないのは流石だ。
一度私がそれで叱ったせいかもしれないが。

そうこう話しているうちにすぐにチョコレートは消え、全員の腹の中に収まった。
結構な量があったはずなのだが、やはり育ち盛りが三人も居るとあっという間だ。

「ご馳走様でした」

「はい。お粗末さまでした」

「たまにはこういうのも良いね。日本ってお菓子豊富だし」

「そうだね。でもブラウニーが一番美味しかったよ」

三人から紅茶の入ったカップを回収していると、シオンがそんな事を言う。
市販のチョコも結構に美味しかったのに、何故そこで私が作ったお菓子が出てくるのか。
疑問に思いつつも照れ臭さを感じ、私はカップを回収してさっさとキッチンへと向かう。
テーブルについたままの三人はそのまま会話を続けていた。

「そうですね。ぼくもブラウニーが一番美味しく感じました」

「市販のお菓子も美味しいんだけどね。#カナコ#が作ってくれたってだけで美味しく感じるよね」

「まぁ否定はしないよ。#カナコ#はいつも僕達の為にやってくれるし…」

「自分たちの為にしてくれているというだけで美味しく感じるんですから、不思議ですね」

…なんだろう、この子供たち。
私を褒め殺しにでもするつもりなのだろうか。

にやけそうになる頬を慌てて引っぱたき、大皿を洗いながら三人の会話を反芻する。
ここまで褒められて悪い気になるはずも無く、また時間が取れれば何か作ってみようかと頭の中では既に次の計画まで立て始めている自分が居る。

「ほら、三人とも飲み物欲しいなら自分で淹れなさいよー」

「「「はーい」」」

本当に、三人が来てからの我が家は賑やかで、和やかだ。






トリトリIF〜できたてブラウニー〜





ほのぼのな話は書いてて楽しいです。
君囚の後に書いたので余計かもしれない。

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