トリップ!×トリップ?05.5



※ルーク視点

最後の言葉を伝え切れなかったな、なんて。
後悔してる暇、無かった。

「のわああぁぁああっ!!?」

「むっ!」

地殻らしき所を通り抜けたかと思えば、気付けばオレは師匠の真上にいた。
そうなれば重力に従ってオレは地面へと落ちるわけで、間抜けな声をあげながら落ちてきたオレをバックステップで避けた師匠は、何故か笑みを浮かべながらオレを見ていた。

「ほう、乖離したと思っていたが…」

「ルーク、無事だったのね!」

「お前今までどこに居たんだ!」

「まったく、こんな大事な局面で心配かけさせないで下さいまし!」

「っとと、悪ィ悪ィ」

立ち上がり、剣を抜く。
その時そっと右手首につけられたブレスレットの存在を確かめる。
オレのその僅かな仕草に気付いたらしい師匠は、笑みを消して怪訝そうな顔をした。

「ルーク…お前、今までどこに居た?」

「…預言の無い、平和な世界さ。戦いも争いも存在しない、それこそイオンとシンクが一緒に笑っていられるような、温かい世界」

「戯言を」

「戯言なんかじゃない。オレは確かにそこに居て、間違いなく勇気を貰った。
これがその証だ。そしてオレは新たに誓ったんだ、もう立ち止まらない、自分にできる精一杯をするって…っ!」

一気に走り込み、力の限り剣を打ち込む。
師匠と、いや、ヴァンと鍔迫り合いになり、更にその場をかく乱させようとガイが素早く乱入し、ナタリアとティアも譜術で援護してくれる。

「間違いなく、笑ってたんだ…っ、イオンも、シンクも、シオンもカナも、オレに幸せになって良いんだって言ってくれた…っ!
例で誰であろうと、それは否定させないっ!」

いくつか打ち合いをした後、距離を取って剣で宙を薙ぐ。
戯言と言っていたのにヴァンはオレを真剣な目で見た後、何故かふっと笑みを零した。

「お前の言うとおり、そんな世界があったとしよう。
ならば何故お前は戻ってきた?その安穏な世界で暮らしていけば良かっただろう」

「さっきも言った筈だ。オレはもう立ち止まらないって決めた。
オレに出来る精一杯をやっていくって決めたんだ。ここに居ればいいって言われたけど、そうやって自分で決めたから…。
だからあいつ等を裏切らないためにも…まずはヴァン、アンタを倒す!」

「よく解らんが…後で話し聞かせろよ!よっしゃ、いくぞルーク!」

「援護はお任せくださいまし!」

「ええ、ここで終わりにさせるわっ」

「……よかろう。ならば、全力でかかってくるがいい!」

後押しを得て、またオレは一歩踏み出す。
自分にできる精一杯のことを、そうやって決めてオレは戻ってきたんだから。

だからもし…もし、また会えたら。
結局言えなかった続きを言わせてくれよ。

ほんのちょっとしか居なかった家だけど、家族みたいで素敵だったから。


今度はただいまって…言わせてくれな。








トリップ!×トリップ?







あとがき

はがくれ様リク、緑っ子も居る家にルークもトリップ!
大変お待たせいたしました。ようやく完結いたしました。
とても難産でしたが、女子高生の如くきゃいきゃい集まる緑っ子+ルークは書いてて大変楽しかったです。
ただ台詞が多くなりすぎてどれが誰の台詞なんだか…。

結局ルークはオールドラントに戻りましたが、なんかまたひょっこり日本に着そうな気もしますね…。
では、素敵なリクエストありがとうございました。


Novel Top
ALICE+