その情報どっから持ってきたんですか?
「すみません、お二人に仕事の打診をしたいのですが……」
本職に任せるつってんのに何でこっちに振ってくる??
会談もほぼ終わり、いっそのこと和平でも結びましょうかと話が飛んでるらしい二か国はさておき。
ただの傭兵の私にはもう仕事はないと思っていたのに、詠師トリトハイムから眉間に皺を寄せた顔で仕事の打診をされました。
その顔をしたいのはこっちなんですが??
ひとまず仕事とのことなのでシンクを手招き話を聞きます。
詠師トリトハイムは渋い顔で仕事のお話をしてくれました。
ヴァン討伐作戦とローレライの解放を同時進行するにあたり、教団からも兵士を出そうという話になったそうです。
しかし残っている兵士はみな下っ端でまとめ役が居ない。
そもそも討伐作戦において有象無象は露払いにしか使えない。
ヴァンの強さを考えても、道中はともかく捕縛に関しては少数精鋭が望ましい。
しかしカンタビレを呼び戻しても人手が足りなさすぎる。
結果、ミストラルに白羽の矢が立ったそうな。
あの子罪人ですよね????
とはいえラルはかなりの量の情報提供をしています。
導師奪還にも協力した功績もあります。
シンクの言葉もあり、教団からはこの仕事を贖罪としてその後神託の盾を追放する形で手を討とうとしたそうです。
なるほど、司法取引という奴ですね。
ところがラルに話を持ちかけたところ、ヴァン討伐に出るのは良いが私を同行させろと言い出したそうな。
シンクが着いてきてもいいけど、私が同伴しないなら行かないと言い切ったそうで。
「ミストラル……」
思わず頭を抱えてしまいました。
なんで私を巻き込むんだ。
「勿論部外者を巻き込むには、という話はしました。しかし対ヴァン・グランツ戦は下っ端では役に立たたない。導師奪還作戦においてあなた方の有用性は周知されており、且つ地殻振動停止作戦から本件に関与しているため全く無関係の人間でもない。少数精鋭すら出すことが難しいダアトの戦力を一時的に補うのに傭兵を雇うことはおかしなことではなく、その点貴方方は実力も信用に足る……と言われてしまえばこちらも反対も出来ず……」
理路整然と並べられた説得材料に詠師も折れた、と。
シンクが隣でため息ついてます。
囚人に説得されてどうすんのさ、とぼやく彼に私も同意です。
「断ったら……断ったで、面倒でしょうねえ……」
「ふん、アイツが癇癪を起そうがこっちの知ったこっちゃないね」
「あら、シンクなら引き受けると思ってました」
「何でさ」
「合法的にヴァンをふん縛れるので」
「……確かに、そう考えれば悪い話じゃないか。ボコボコにしていいんだよね?」
「むしろ抵抗できないように徹底的にお願いします。討伐作戦ですから生かして捕らえろなどと言うつもりもありません」
「へえ」
はっきりと殺しても構わないと言われたことにシンクの唇が吊り上がりました。
結局この仕事を引き受けることになり、一時的に私たちは教団所属という形に収まりました。
あくまでも仮です。終わったら金分捕ってラル引っ掴んで逃げますよ。
牢から出てきたラルと打ち合わせをして、キムラスカやマルクトから出された戦力とも顔を合わせます。
恐らくヴァンはアブソーブゲートかラジエイトゲートに居るとのこと。
そのため戦力を二つに分けるそうです。その情報どっから持ってきたんですか?
アブソーブゲートにはラルと私達をメインに騎士団を再編。隊長はラルです。
マルクトからはジェイド・カーティス大佐と師団から少し。
キムラスカからルークの護衛も兼ねてキムラスカからはジョゼット・セシル将軍率いる師団から選抜。
ラジエイトゲートには急ぎ呼び戻したカンタビレの師団を投入。
マルクトからはアスラン・フリングス将軍率いる師団から少し。
キムラスカからはアッシュの護衛も兼ねてゴールドバーク将軍の師団から選抜。
ラスボスは少数精鋭で挑むとはいえ、結構な大所帯ですね。
まあ私達は殆ど発言権がないので、基本ラルにお任せですが。
原作通りならヴァンはアブソーブゲートにいる筈です。
知り合いが多いのはありがたいですね。連携も取りやすいですから。
セシル将軍はお初ですが、ルークの護衛がメインとなると前に立つのは私達+大佐といったところですか。
ああ、また回復役が私しか居ない。
まあ全員前衛出来ますから何とかなるでしょう。
グミを多めに持って行きましょう。
あらかたの作戦を立てたところで物資をかき集めて即座に出発です。
ラルの号令に神託の盾の人達はキビキビ動きます。
私達はダアトの所属となっていますが、ラルの部下ではないので道中はのんびりです。
主にうじうじルークの相手をしてました。
ルーク、ゲートには師匠が居るかもしれないと聞いてべっこべこにへこんでるんですよね。
慕う気持ちは消えないけど、だからといってもう無邪気に慕うことは出来ない。
また酷いこと言われたらいやだけど、じゃあ会いたくないかと聞かれたら会いたいような気もする。
そんな複雑な気持ちだそうです。お陰でうじうじです。
戦うのは私達に任せればいいんです。貴方は外殻大地降下とローレライの解放のことだけ考えていなさい。
共に旅をしたこともあって親し気に話す私たちにセシル将軍は複雑そうな顔をしていました。
自国の王族に傭兵如きがなれなれしく話しかけるなんて、まあ気分はよくありませんよね。
とはいえ他人行儀な話し方をするとルークが拗ねるんですよねえ。
シンクは様付けしなくていいなら楽だと、セシル将軍のこと無視してましたけども。
「なあ、お前等はヴァン師匠の討伐を終えたらどうするんだ?」
「私達はただの傭兵ですからね。実家もない根無し草です。幸いお金もありますから、しばらくぶらぶらしてみますか?」
「そうだね。ケセドニアで安穏と暮らすのはもう無理だろうし……どうせなら世界旅行でもしようか」
「そっか。前も話したけど、俺これが終わったらマルクトで保護されることになってるんだ。遊びに来てくれよ。また軟禁されるだろうしさ」
「近くに寄ることがあって宿屋代わりにしていいっていうなら寄ってあげても良いけど?」
「何故シンクはそんな上から目線なんです? 良ければ旅先でお手紙書きますよ。移動してますからお返事はもらえませんが、気晴らしくらいにはなるでしょう」
ローレライの剣を抱えるルークとそんな雑談をします。
多分ピオニー陛下なら軟禁せず、ある程度安全を考慮した上で好きにさせてもらえると思いますよ。
先は解らないので口にはしませんが、グランコクマに寄ることがあったら顔でも見せに行きましょうか。
「気晴らしかあ。ガイが居たら剣舞とか付き合ってくれたんだろうけどなあ」
「そういえばガイってどうしたんですか?」
「いや、なんか……ナタリアと愛の逃避行をしたらしくて……」
なんて????
複雑そうな顔をしたルーク曰く、ナタリアの偽姫騒動の際、ガイはナタリアとキムラスカのお城から逃亡したそうです。
ファブレ公爵家の使用人と偽姫の手と手を取りあっての愛の逃避行だとメイドたちの間で噂になっていたのを聞いてしまったのだとか。
「正直、ナタリアが偽姫ってのは未だにピンとこねぇんだよ。いっつも誇り高きランバルディアの血が〜〜って言ってたし。それを言うなら俺、レプリカなのにファブレ公爵家の一員として認められるの、おかしくねえ?」
「レプリカでも貴方は間違いなくキムラスカ王家の血を引いてますからねえ。血統主義の考え方でいえば、おかしくはないと思いますよ。その点ナタリアが王家の血を引いている確率はゼロに近しいですから」
「母上も似たようなこと言ってたな……でもアッシュを手元に残して俺をマルクトに送ってる時点で、父上はそう考えてないと思う。まあ俺もその方が気楽でいいんだけどさ。それより俺、ガイがそんなにナタリアのこと好きだったなんて、教えてもらえなかった方がショックだったっつーか……」
なんか面白い方向に誤解が進んでますね。
思わずセシル将軍を見れば小さく首を横に振られました。
なるほど、愛の逃避行はあくまでも噂でしかない、と。
実際はただの脱獄犯二名という方が正しいのでしょう。
ガイがグランコクマから輸送されてからどんな扱いをされていたかは知りませんが、例え罪人じゃなくても逃亡幇助でどっちにせよお縄です。
ルークはマルクトの謁見の間であったこと知りませんし、このまま誤解しといてもらいましょうか。
キムラスカ側もこの誤解を解く気ないみたいですし、私達がくちばしを挟む必要はありません。
まあそんな訳でルークの狭い交友関係の中でも未だ普通に話ができる人間は殆ど居ないので、私達とも交流を続けたいとのこと。
イオンと文通でもすればいいんじゃないですかね。同じレプリカ同士、その上ファブレ公爵子息と認められてるなら問題ないでしょう。
しかし本当に原作と流れが変わっちゃいましたね。大佐とは交流らしい交流も途絶えていますし、ティアに至っては今どうしているのかすら知りません。
ルークの成長の機会を奪ってしまったとも言えますが、これから長生きするんです。ゆっくり成長すれば問題ないでしょう。
劇的な成長なんて物語の中だけで充分ですよ。まだ七歳なんですから。
アッ、気付いちゃいました。
もしかしてアッシュも同じ誤解してます?
だからあんな大人しくしてたの??
ナタリアが自分を裏切ってガイと愛の逃避行に出たって聞いてたから??
心の支えを失って??
例え隣にはおらずとも、せめて初恋の女性との約束を履行しようと国に戻ったとか??
いけません。今私の腹筋が試されてます。
だからルークの誤解解かないんですね。
そうですよね、ルークから情報流れたら困りますんね。
同じことに気付いたらしいシンクも床に沈んでます。
こんなところで笑かさないでほしい。
震えて動かなくなった私達を見てルークが不思議そうな顔をしていました。
セシル将軍の提案で一旦二人そろって船室に戻らせてもらいました。
顔を見合わせた後、防音譜術を張ってから爆笑したのは言うまでもありません。
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