締まらないなあ。
たどり着いたアブソーブゲート最奥。
原作と同じようにヴァンはパイプオルガンを弾いて待っていました。
……ゲームの時も思ったんですけど、なんでこんなところにあんなものあるんでしょうね??
「……来たか」
予定通り少数精鋭での接敵です。
背後にはルークを守るセシル将軍と兵士達が居ます。
戦うのは私とシンク、ラルと大佐です。
原作みたいにここに来るべきはアッシュだの何だの言われるかと思いましたが、こちらを見たヴァンは何故か私を睨みつけてきました。
「忌々しい小娘が、貴様のせいで私の計画は狂いに狂った」
ウッッソだろ。
私標的なの????
「シンクを奪い、シンクレプリカを惑わせ、ルークと導師のレプリカを使って開戦の邪魔をして……全くもって忌々しい」
あー、なるほど。
……そんなつもりありませんでしたが、確かに私邪魔してますね。
結果的にそうなってるというだけですが。
「その上私の妹まで……!」
「そういえばティアってどうなったんですか?」
「え? 僕が知るわけないじゃん」
ギリリと音がしそうなほど奥歯を噛み締めたヴァンに言われましたが、私貴方の妹のことなんて知りませんが??
冤罪です、冤罪。とっ捕まえましょう。あいつレプリカ虐待犯ですからね。ぶちのめしましょう。
でないとこれから執念深く私が狙われる気がします。しつこい男は嫌いですよ。
射殺さんばかりに私を睨みつけていたヴァンでしたが、その視線がラルとシンクに移りました。
ラルは未だに仮面をつけ続けてますが、シンクはもう素顔を晒しています。
嗜虐的な笑みを浮かべて拳を掌に叩きつけてます。早くボコボコにしたいんですね、解ります。
「お前もだ、シンク。折角火山で拾ってやったというのに、恩を仇で返しおって」
「ハッ! それを言うなら僕なんて産まなきゃ良かっただろ。勝手に生み出して、勝手に捨てて、拾ってやったんだからありがたいと思え? 思うわけないだろ、バーカ」
子供かな??
「その上僕のレプリカってなにさ? レプリカのレプリカ作るって馬鹿じゃないの? あんたは結局都合のいい手ごまが欲しいだけだろ。思い通りに動かなかったからって怒るくらいなら最初からお人形遊びだけしてればよかったじゃないか」
「こいつに同意するのは癪だけど、同感だ。ヴァン、これ以上アンタのお人形遊びに使われるのはごめんだからね。ここでぶちのめす」
「シンクレプリカか。結局お前も失敗作だった。たった一人の女に惑わされ、結局お前はレプリカの代用品にすらならなかった」
「……僕はもう代用品じゃない。僕はもうお前の言葉に惑わされない」
「戯言を。所詮レプリカはレプリカか」
「同じ被験者である私も、貴方の言い分は理解できませんけどね。大佐は解ります?」
「狂人の考えなど解らない方が良いですよ」
「それはそう」
剣を抜くヴァンに対し軽口を叩きながら私も紙を構え、大佐も槍を取り出します。
一瞬の静寂。背後でルークが固唾を呑んだ音が聞こえました。
殺気が満ちる中、真っ先に飛び込んだのはラルでした。
「連撃、行くよ!」
しょっぱなから秘奥義ですか。だいぶ頭に血が上ってますね。
とはいえ相手は腐っても主席総長。攻撃を見事にさばき切ったところで今度はシンクの秘奥義がぶちかまされました。
レベルで言えばこの時のヴァンよりもシンクの方が上です。というかシンクレベル上限ですからね。
流石に捌ききれなかった攻撃にヴァンが体勢を崩したところで、ちょうどいいので私も突っ込みます。
「音素爆発。連撃、行きます」
フォンスロットを全開にして最大まで筋力強化した身体で繰り出す殺劇舞荒拳、とくと味わって下さい。
シンク達と違って私は秘奥義だけはパワータイプですからね、その身体にもようく響くでしょう。
「では、私も行きましょうか」
おっと背後で音素が急速に集まる気配。
≪死霊使い≫の名の元にミスティック・ゲージが発動しました。いやあ、生で見るとすごいな!
秘奥義ラッシュが終わった後もとにかく押して押して押しまくります。
なにせ相手は剛の剣、一撃が重いです。私達は防御が薄めなので可能な限り攻撃を仕掛けて相手の攻撃を阻害します。
シンクをメインに四方八方からの攻撃ラッシュ。時折私が回復に抜けてもその間は大佐が槍を持って突っ込んでくれます。
いやあ素晴らしい連携ですね!
「おのれ……っ!」
ぼろぼろになったヴァンが剣を床に突き立ててよろめきました。
そのまま背後に倒れこみそうになったところをシンクが飛び掛かって抑えつけます。
そうですね。地殻に落ちられても生き延びること解ってますからね。
「殺してなんかやらないよ」
手早くナイフを取り出したシンクがヴァンの四肢の腱を切って抵抗手段を封じます。
わお、えげつない。まあ仕事でままやってることですが。
睨みつけてくるヴァンにシンクはいびつな笑みを浮かべました。
「生きて苦しめ」
「貴様……っ」
「失敗作に生かされる気分はどうだい、ヴァン。あんたはこれから世界を憎みながら動けない身体で嫌でも生きていくんだ。ハハッ、死んで楽になるなんて誰が許してやるもんか。生きて、生きて生きて生きて……苦しめ」
嘲笑交じりの怨嗟の言葉。
それが貴方の選択なら好きにすればいいと思います。
そういえばシンクは会ったばかりの頃にさっさと死にたいって言ってましたもんね。
ヴァン相手でもそんな救済など与えてやらないってことですか。
勝敗を決したことでセシル将軍達が近づいてきてヴァンを捕縛していきます。
傷を癒されることなく連れていかれるヴァンを、ルークが辛そうに見つめていました。
けれどかぶりを振ったルークが外殻大地降下のために前に出ます。
それを少し離れたところで眺めながら、ラルがシンクに向かって言いました。
「……なんで殺さなかったのさ」
「何で僕がこの地獄から解放してやらなきゃいけないわけ? そんな楽になる方法、誰が選んでやるもんか」
「それもそうか」
「トモカ、貴方この二人の育て方間違えたんじゃありませんか?」
「私が育てた訳ではありませんが。というかそれを言うなら貴方がお父さんでしょう。ジェイド・バルフォア博士?」
「やめてよね、これが父親なんてあと百回死んでもごめんだよ」
「同感だね。こんな父親こっちから願い下げさ」
締まらないなあ。
ルークがパッセージリングの前に立つのを眺めながら軽口を叩き合います。
セシル将軍から睨まれたので私はお口をチャックしましたが、緑頭共は黙りません。
一戦したばっかりだっていうのに元気ですねあんた等。
私は疲れました。早く帰って寝たいです。
ルークがパッセージリングの前でセシル将軍と何か話してます。
あ、大佐が呼ばれましたね。最後の確認でしょうか。
それを眺めている間もシンクとラルは何やら言い合ってます。
貴方達、実は仲良かったりします?
ぎゃあぎゃあと言い合うシンクとラルを見ている内にルークが両手を掲げて外殻大地降下が開始されました。
体に響く振動は以前の生で慣れた地震とよく似ています。
立ったままだと平衡感覚がおかしくなりそうなのでどっこいしょとその場で腰を下ろしました。
はー、疲れた。
とにかく作戦は終わりました。これでローレライが解放されたら仕事も終わりです。
ラルも教団から解放され、私とシンクもようやく自由です。
原作をしっちゃかめっちゃかにしてしまいましたが、まあ後悔はありません。
出来ることを出来る限りしてきただけですからね。
本来の流れなんて知ったこっちゃねえです。
「どうしたのさ、疲れた?」
「いえ、立ったままだと平衡感覚が狂いそうなので座ってました」
「ああ、そういうこと」
いつの間にか喧嘩を終えたシンクが隣に来ました。
私の言葉を聞いて隣に座り込みます。
その反対側にラルも座ります。うーん、グリーンサンド。
「ダアトに帰ったらさっさと後金貰って旅にでも出ましょうか」
「そうだね。マスターには手紙だけ送って、家だけ抑えといてもらおう。落ち着いたら会いに行けばいいさ」
「いっそのこと買い取ります?」
「それもありだけど、それなら管理人雇わないと」
「……あんた等、全部終わった後も一緒に居るつもりなんだ? 僕達対外的にはもうすぐ十五になるんだから保護者居なくてもなんとかなるだろうに」
ラルの言葉にはたと気付きました。
そういえばシンクももうすぐ十五歳です。
そうなれば私という保護者が居なくても生活できます。
確かに一緒に居る理由はなくなりますね。
「……独り立ちします?」
「したとしてもモカの側を離れるつもりはないけどね」
「だそうです。ラルはどうします?」
「……え?」
「貴方のことは私が引き取るつもりだと言ったでしょう? しますか? 独り立ち」
「……しない。旅、僕もついていっていいの」
「そのつもりでしたが……どこかに定住したかったですか?」
地殻振動停止作戦で大金手に入れちゃいましたからね。
一か所にとどまると金目当てに群がられそうで嫌なんですけど、ラルは定住希望なんでしょうか。
しかしラルはふるふると首を振りました。
「トモカが居るならどこでもいい」
「おや、そうですか」
「来なくていいよ、お邪魔虫」
「アンタには聞いてない」
抱き着いてきたラルを受け止めてよしよしと頭を撫でます。
かと思えば背後からシンクにしがみ付かれて動けなくなりました。
ラル相手に対抗しないでください。
私この二人と旅をするのか。
私を挟んで言い合いを始めた二人にため息がもれますが、まあ賑やかな旅路になって良いんじゃないでしょうか。
それに疲れてるのであったかいのが気持ちいいです。うるさくても眠れそう。
うとうとしながら揺れる地面に身を任せていたら、ふと地下からせり上がってくる大量の第七音素の気配。
ああ、解放されたのか。燐と輝く焔が天に昇っていくのを眺めながら、ようやく終わったのかと思うと少しだけ感慨深かったです。
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