最悪の守護者02
ハプニングその1。
師匠、もとい髭が先遣隊をまるっと連れて囮にしようとした。
まあ良いでしょうとか言うカーティス大佐は無視し、阿呆かの一言で切り捨てて師匠とローレライ教団キムラスカ支部に居た神託の盾兵を囮にして船で行って貰った。
神託の盾騎士団の主席総長が救助隊に組み込まれてるんだから、神託の盾兵が救助に参加するのは当然だろ?
ハプニングその2。
導師がさらわれた、ついでで良いから探してくれと導師守護役が飛び込んできた。
内輪の問題じゃねぇか。キムラスカ巻き込んでんじゃねーぞ。
これはカーティス大佐が許可してしまったために渋々連れて行くことになった。
おい、無事バチカル出れたんだから一人で探しに行けよ。何で堂々と同行してんだ。
ハプニングその3。
髭と擬似超振動を起こした襲撃犯が何故か救助隊に組み込まれていた。
しかも何故か俺の世話係として着いてきたガイと歓談してる。
襲撃犯、何故か俺に偉そうな態度をとる。クール気取ってるつもりなんだろうが、身分社会を理解できず軍人として最低限の礼儀も取れないお前、カッコワルイ。
ガイ、お前何で止めないんだよ。バチカル帰ったらクビ決・定。
ハプニングその4。
ナタリアが紛れ込んでた。
お前公にされてないだけでとっくに王位継承権破棄されてんだぞ。教えられてるだろ。
置手紙してきたから大丈夫ってそれは承諾を得たとは言わない。
王女の私が出なくてどうするって言うけど別にどうもしない。
困ってる民を救うのは王族の勤めって言うけど今回困ってるのマルクト民だし、キムラスカが救う必要無いし、慰問なんてデモンストレーションでしかねーんだよ。
仮にも王女なんだから解れよそれくらい。
帰れっつったら王女として扱うなだと。とりあえず鳩は飛ばしておいた。
バチカル帰ったらどうなるかな、俺シラネ。
ハプニングその5。
六神将から手紙が届けられた。何でもザオ遺跡というところにイオンが捕まっているらしい。
導師守護役が助けて下さいって言ってきたけど、居場所が解ったならケセドニアで神託の盾兵に協力頼んで救助に行けよって言ったら何故か馬鹿にされた。
これ、一応アクゼリュスの救助隊なんだけど。導師の救助隊じゃないんだけど。
導師助けてからアクゼリュス行けば良いって、お前等馬鹿じゃねーの?
アクゼリュスと導師天秤にかけて導師取るんだなよく解った、お前等結局困ってる民とかどうでもいいんだろ?って言ったら何故か憤慨された。
馬鹿馬鹿しいのでガイ・ティア・アニスはオアシスに置いてった。
ボロボロになりながらもケセドニアで合流してきたので導師奪還はできた模様。
睨まれたけどシラネ。
ハプニングその6。
髭達と無事合流したケセドニアで、救出された導師様が同行したいとか言ってきた。
即効で断ったら何故か人でなし呼ばわりされた。これじゃマルクトとダアトの親善だな、キムラスカ蚊帳の外。もう帰っていい気がしてきた。
結局カーティス大佐が許可を出したので同行することになった。
お前が責任取れよって言ったら、導師が同行する事で何の責任が発生するのか、その程度の責任も取れないのかって馬鹿にされた。髭にも我が侭言うなって宥められた。
ちょっとムカついたのでマルクト領事館にチクり、キムラスカ領事館で大佐を煽って同じやり取りをさせ、領事に発言を記録させておいた。
後で泣きを見ろ根暗マンサーめ。
ハプニングその7。
デオ峠で魔弾のリグレットが強襲をかけてきた。出来損ない呼ばわりされた。
俺が怒る前にアルメフィリアが怒ってリグレット気絶させて崖の上から落とした。
何か足の骨が砕かれてるとかで、崖から落ちただけじゃこうはならない筈だと報告してきた白光騎士団の人間がクビをかしげていた。
うん、どう聞いてもアルメフィリアのせいだな。同情はしないけど。
導師が口を挟んできたけど言いくるめ、教官と煩いティアを無理矢理引きずり出させて、リグレットはキムラスカへと護送させた。
マルクトとキムラスカの親善を邪魔したんだ。死刑は間逃れないだろう。
その前にアルメフィリアに殺される可能性はあるけど。
ハプニングその8。
アクゼリュス到着後、何故か使用人と襲撃犯と導師守護役とナタリアが勝手に救助を始めた。
白光騎士団や先遣隊に怒られてたが薄情だと煩かった。
お前等が勝手に動けば命令系統が混乱して救助に余計な時間を食う、貴様等がやってるのは自己満足甚だしい迷惑行為でしかないと叱責されようやく大人しくなった。
ハプニングその9。
七割がた避難も完了した頃、何故か髭に14番坑道へと呼び出された。
用件があるならそっちから来いと言ったらあの髭、神託の盾兵使って白光騎士団襲わせやがった。
これには俺も切れた。が、さらわれた。見てないで助けろアルメフィリア。
導師使って変な扉を開けさせたかと思うと、その先にあった譜業の前で超振動使えとか言われた。使うわけねーだろ馬鹿。
脅されそうになったけど流石にアルメフィリアが守ってくれた。
けど俺を、というかレプリカを愚か呼ばわりしたことにアルメフィリアが怒り、姿を現したことは予想外だったけど。
アルメフィリアはなんか地面から湧き出してくる闇を使って師匠を拘束したが、師匠は小型の譜業爆弾を使って馬鹿でかい譜業を壊した。
何でもアレを壊すとアクゼリュスは崩落するらしい。
何でアレも守っとかなかったんだよとアルメフィリアに怒れば、だって可愛くないんだものと平然と言われた。こいつもうヤダ。
ほっときゃ死ぬだろうと思っていたけど、主席総長の名は伊達じゃなかった。
何とか逃げ出した師匠と入れ替わるようにして何かわめきながら鮮血のアッシュとか、襲撃犯とか使用人とかが飛び込んできた。
そして崩落する大地の中、襲撃犯の使う譜歌で生き延びた。
ハプニングその10。
襲撃犯の譜歌に守られ、魔界とかいう場所に辿り着いた。←今ココ。
全員が全員、呆然としている。
それは無理も無いだろう。地面が落ちるという想像だにしない事件に遭遇したのだから。
それでも命があるのを確認し合う。
俺もアルメフィリアが居るから死ぬとは思わなかったけど、流石に地面の下に地面があるのは驚いた。
そして和平に来るために用意していたものの道中神託の盾兵に奪われてしまったというマルクトの水陸両用型戦艦タルタロスが近場にあった。
何でも襲撃犯曰くこのままでは今立っている大地も泥の海に沈んでしまうとかで、ホバー機能を使って何とか動いているらしいタルタロスに乗り込もうという話になったときだった。
微かに、男の子の声が聞こえた。
生存者が居た。
それに気付いた瞬間、全員の視線が声のした方へと向けられる。
父親が庇うようにして覆いかぶさり、木の板にしがみ付きながら痛いと呻く子供。
その半身は殆どが泥の海に沈んでしまっている状態だ。
名前は確か、ジョン。
父親であるパイロープが仮責任者であったために最後までアクゼリュスに残っていた一人だ。
ナタリアが助け出そうと走り出すが、襲撃犯……ティアが腕を掴んで止める。
何でもジョンが居るところは障気を含んだ底無しの泥の海、らしい。
全員がどうしたら、早く助けなきゃ、となっている中でちゃっかり地面に足をつけて紛れ込んでいるアルメフィリアだけがどうでも良さそうにジョンを見下ろしていた。
「あの、何とか…助けられませんか?」
そんな中、アルメフィリアは悪魔であると俺から教えられていたイオンは縋るようにしてアルメフィリアを見る。
アルメフィリアはセフィロト内部に居た時も透明の不可思議な壁で俺やイオンを守っていたし、地面から湧き出る闇を使ってヴァンを拘束していたりしたから、そういった人外の力を使って何とかジョンを助けられないかと思ったのだろう。
だが、アルメフィリアはつまらなさそうに言った。
「できるけど、助けてどうするの?」
案の定、めんどくさそうに言い放ったその一言にイオンは絶句する。
まあそう来るよなぁと俺がため息をついたとき、何か思いついたらしいアルメフィリアは綺麗な微笑みを浮かべてイオンの顔を覗きこんだ。
言葉を無くしているイオンの瞳を真っ直ぐに見つめながら、鈴を転がすような声で囁く。
これは……ヤバイ!
「そうね、助けても良いわ。けど無料じゃ動かないわよ。私は悪魔だもの」
「! 僕でお渡しできるものならお渡しします!だから…っ」
「馬鹿!!メフィにそんなこと言ったら、」
「良いわ、交渉成立ね」
慌ててイオンの口を塞いだが、間に合わなかった。
満足げに笑ったアルメフィリアはティア達の制止を無視して堂々と泥の海を歩き、ジョンを抱え上げて岸辺へと戻ってきた。
……あーあ。
「イオン、メフィの正体は教えたよな?だから頼んだんだよな?」
「あ、はい…」
「じゃあ安易に何でも、なんて言ったらマジで何されるかわかんねーって解ってて言ったんだな?」
アルメフィリアが地面の上にジョンを放り投げるのを横目にイオンに言えば、悪魔に対し何を言ったのかようやく理解したらしいイオンはサッと顔色を悪くした。
今、イオンはアルメフィリアに渡せるものなら渡すと言ってしまった。
これでは魂を奪われても文句は言えない。
「今、何を…いえ、なんてことをするの!早く回復を…っ」
「あら、良いの?汚染された第七音素である障気の満ちる中で回復術を使うなんて、更に障気を取り込んで障気障害を悪化させることになるわよ?」
「!?」
ジョンに回復術をかけようとしていたティアに嘲笑交じりに言い捨てた後、アルメフィリアは上機嫌でこちらへと戻ってくる。
顔を真っ青にしているイオンに極上の微笑みを見せているのを見て、まあ言ってしまったものは仕方が無いと俺はため息をついた。
一度言ってしまった言葉は取り消せない。既に"交渉"は成立している。
"契約"でないだけ、まだマシだと思うべきなのだろう。
「メフィ、イオンは助けろって言ったんだ。泥の海から救い出せって言ったんじゃない。あのままじゃアイツ死ぬぞ。そうなれば契約不履行だろ」
だからせめてもの抵抗といわんばかりにそう言えば、アルメフィリアはきょとんとした後にジョンを見た。
苦しげに呻いているジョンの呼吸は浅く、既に命がいくばくも無いことが見て取れる。
アルメフィリアは俺の言葉にそれもそうねと頷き、ジョンに向かって掌を向けた。
ジョンの体が浮き上がり、突如空中に出現した大きなシャボン玉?水塊?の中に吸い込まれていく。
その中でジョンはこぽりと空気を吐き出した後、穏やかな顔のまま目を閉じてしまった。
「……おい、殺したんじゃねーだろうな?」
「あの中で障気を中和してるのよ」
「じゃあ…助かるんですね?」
「中和が終わり次第ね。それよりルーク、イオン。さっさとあの戦艦に行きましょう。そのうちこの大地も泥に沈むわ」
アルメフィリアはワンピースの胸元に着いているリボンを解き、そのリボンの端をジョンの入っている水塊の中へと突っ込み、もう一方の端をイオンへと握らせる。
イオンは目を白黒させていたが、リボンを引っ張る事でジョンの入った水塊が動くのを見て納得していた。風船か。
アルメフィリアの存在を知らされていなかった他の連中は唖然としていたが、タルタロスに乗り込もうとする俺たちに何だかんだいって着いてきた。
もうね、好きにすれば良いと思う。俺シラネ。
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