「なぁ、これ終わったらどうするんだ?ダアトに帰るのか?」

「どうかしら。私はイオンの守護役だから…」

「じゃあイオンが帰るなら帰るし、バチカル来るなら来るってことか?」

「そうだね」

「じゃあさ、休みになったらウチ来いよ」

「はい?」

「だから、ウチに遊びに来いって言ってんだよ。オレバチカル帰ったら多分また軟禁されるしさ。けどエリーゼが着たら退屈しないだろうし」

「えっと…一介の守護役がファブレ公爵家にお邪魔するのはちょっと…いや、だいぶ難しい、かな。うん」

「えー!?何でだよ!?」

「ルークが貴族で偉くて、私は一般市民だから」

「ンだよ、オレが良いって言ってんだから良いじゃねーかっ!」

ぷりぷり怒るルークを何とか宥めながら馬車への道のりを歩く。
相変わらず城内には魔物が居たが、それは第5師団の人々によってあっという間に倒されていくため私とルークの元までは辿り着かない。
そうしてルークと雑談をしながら歩いていれば馬車への道のりなどあっという間で、ドアが開いた馬車の前でルークはふてくされた顔をしながら私の手を握っていた。

「…ルーク?」

「…エリーゼはこねーのかよ?」

「うん、シンク師団長に呼ばれてるみたいだし」

「……もう、会えないのか?」

「ルーク…大丈夫よ、きっとまた会えるわ」

「ホントかよ?オレ軟禁されてるんだぞ?」

「成人まででしょ?私、ルークと旅できて楽しかった。だからまた、きっとどこかで会いましょ?」

「……ん、じゃあ指きりだ」

「えぇ、指きりね」

多分、これからルークは屋敷を出される。
今年は預言の年だから、鉱山の街へと連れて行かれるだろう。
だからきっと、そこで会える。

言葉にこそしなかったものの、確信を持って私はルークと小指を絡めあった。
ルークもまた私の言葉に何かしら感じ取ったようで、最後には笑顔を見せて馬車へと乗り込んでいく。
またな、って手をふってくれたルークに私も手をふり返し、馬車が出発してからその姿が小さくなるまでずっと手をふり続けていた。

そして豆粒大だった馬車もすっかり姿が見えなくなった頃、ようやく私も手を下ろす。
途端に背後から伸びてきた腕が胴体に絡みつき、反射的に振り返れば不機嫌そうな顔をしたシンクが私を抱きしめていた。

「随分と仲良くなったようじゃないか。玉の輿にでも乗る気?」

「まさか。友達よ」

「どうだか。ずーっと手繋いでた癖に」

私をぎゅっと抱きしめながらふてくされた声を出すシンク。
どうやら珍しくもルークに嫉妬しているようだと遅まきながら気付き、私は苦笑しながらシンクを振り返った。

「本当よ。私が好きなのはシンクだけだもの」

「ふぅん?」

私を抱きしめる腕に力が込められる。
周囲に気配が無いのを確認してから、私もシンクの腕に自分の掌を重ねた。
シンクは私の肩に顎を置き、どこかふてくされた声のまま私の耳元で囁いてくる。

「じゃあ何の約束したのさ?指きりまでしちゃって」

「また会おうねって言う約束よ。ルークはこれからまたお屋敷に軟禁されると思い込んでるから」

「あぁ、そういうこと。それで指きりげんまんね」

納得したらしいシンクは私の手を取り、手袋を外す。
そして私の小指を手に取ると、そのまま小指に犬歯を立てた。
小さな痛みと共にじわりと血が滲み、それを全てシンクに舐め取られる。
ルークと繋いだ小指をいたぶるように舌を這わせ、私が身を捩れば逃がすまいとするかのように抱きしめられる腕に力が篭った。

「ねぇエル…お腹すいた」

「今食べてるじゃない…」

「もっとだよ。仕事とはいえ暫く離れてたんだよ?もっと君が欲しい。君が、足りない」

じゅるりと唾液を啜る音と共に小指が解放される。
そこには既に傷跡など一つもなく、囁きと共にシンクは私の首筋へと犬歯を立てている。
いつものようにそこから溢れ出す血を吸い上げられ、私は痛みと共に湧き上がる感覚に自然と身体を跳ねさせた。

「ん…っ、シンク…ッ」

「その声、色っぽくて好き」

「ぁん……馬鹿…ッ」

「馬鹿って何。この血も、肌も、声も…君は全部甘いじゃないか。甘くて美味しくて、僕はいつも食べつくしたくなるんだよ」

甘いのは私の身体じゃなく、シンクの台詞の方だ。
そう言いたいものの、シンクがまた音を立てて血を吸い上げたために抗議の声は嗚咽へと変わる。
やがて満足するまで吸い終わったのか、シンクはぺろりと首筋を舐めた後に私の向きを無理矢理変えて向かい合う形にさせると、その

ままコーラル城の城壁へと押し付けてくる。
壁とシンクの間に挟まれる形になり、仮面をとったシンクに見つめられてどきどきと胸が高鳴った。

「シンク…この体勢は一体…」

「さっきも言ったよね?まだまだ足りないんだよ」

そう言ってシンクの手が私の両頬に添えられたかと思うと、頭の芯がくらくらするようなキスを繰り返される。
くらくらするのは血が足りないせいか、それとも私がシンクに参っているせいか。この場合、多分両方なのだろう。
シンクの背中へと腕を回しながら、その深い口付けに応えようと私も角度を変えて唇を重ねる。
やがて舌が侵入してきたかと思うと、無理矢理私の舌を掬い上げ吸い上げられて、それをされると私はいつも頭が痺れるような錯覚に陥るのだ。

「ぁ…ふ、ぅん…シンク…ぁ」

「エル…駄目だよ。君は僕のものなんだから」

「うん…私はシンクの、だよ」

「そう。それに僕は君のものだ。他の奴なんかに渡さないんだから」

唇が離れたかと思うと、独占欲をむき出しにした言葉を告げられて羞恥心に頬を染める。
けどその言葉に応えればシンクは嬉しそうに笑うから、私も釣られて笑顔になってしまうのだ。
そしてまた振ってくるキスの雨に応えるために、私もまた瞳を閉じる。

「シンク…大好き」

「僕も、愛してる」

譜石帯が輝く青空の下、まだまだ先は長いけれどシンクと一緒ならきっとやっていける。
そんな思いを胸に、私はもう一度シンクと唇を重ねるのだった。







紫蘭の花








えーと、何か長かった…てゆーか長くなってしまった…。
真菰様リクエスト、@「鮮血から始まる恋情」設定でA仲間厳しめルーク寄り、Bタルタロス〜コーラル城まで。Cコーラル城でシン

クが迎えに来て夢主がルークに「ルークと旅できて楽しかったよ、またどこかで会おうね!」っていうからちょっとシンクが嫉妬。

あと夢主とルークが仲良しなのが読みたい…とのことでしたが、仲良し…?
指きりげんまんしてましたが、仲良し…に、なれてましたか?
他のリクエストには応えられたと思うのですが…どうでしょうか?
拙い作品ではありますが、お納めさせて頂きます。

あとタイトルの意味ですが、紫蘭というのは実在する花です。
花言葉の「お互い忘れないように」というのがルークとの友達関係っぽいなと思いまして。
今回メインがルークとの旅だったのでこのタイトルにしました。
タイトルにそっているかは微妙ですが…。

にしてもいつも通りあとがき長いですね!
というわけでそろそろ失礼させて頂きます。
リクエストありがとうございました!


清花


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