君と二人、幸福論


「あれ、悠仁からLINEきてた」

早めの夕食を食べ終え、開いたLINEに悠仁からのメッセージがあったので開く
今暇?と俺の部屋でしゃべろ、の二つが送られてきてたのは二十分は前だった
今いく、スタンプを押して部屋を出た


付き合ってるとはいえ、男子の寮に来るのはやっぱり緊張するし、誰にも見つからないように自然と足音を殺してしまう

こんこん、隣の伏黒に気づかれないようなるべく小さな音をたてる、悠仁なら聞こえる筈なのに中からは物音ひとつもしない

「悠仁?入るよ」

一応一声かけてから、そっと開いた扉の先には最近見慣れてきた悠仁の部屋
所々に片付いてない服とかコップがあるけどしっかり掃除のされた部屋が悠仁らしい

肝心の部屋の主はというと、奥のベッドの上こっちに背中を向けて丸まっていた

身動きしないその背中に、嫌な記憶を思い出して心臓が軋み指先が冷えて震える
大丈夫、返事を待つ間に寝ちゃっただけ

おそるおそる、ベッドの上にいる悠仁を覗きこもうとついた膝が僅かに沈んだ瞬間腕をひかれ、乗り上げた体が悠仁に覆い被さる

突然のことに思考停止しながらも、のしかからないよう悠仁の顔の横に腕をつく

「ははっ、おはよ名前」
「もう夜になるよ」
「あっ…LINE送ったのに寝てた!」

ごめん名前!わたわたと慌てる悠仁を見下ろして、なんだか気が抜ける
そのまま腕の力を抜いて、悠仁の横に転がり目の前の胸に頭をよせた

「名前?怒ってる?」
「違うの、安心しただけ」


そう、頭を過った悪い予感が当たらず緩やかに動く心臓にほっとしたんだ

とくりとくりと、一定のリズムを刻む心臓を聞いていると背中に暖かな腕が回り、そのまま抱き締められて隙間がきえる

名前、優しい声だった
その声に促されて見上げた先に、不安も恐怖も全て溶かしてくれる私の太陽がいた


「大丈夫、俺生きてるよ」

何も言ってないのに、私の不安を感じ取っていとも簡単になくしてしまう、太陽みたいなそんな貴方の笑顔がたまらなく愛しくて

笑って、私を腕に閉じ込めて、幸せそうな悠仁に私からも抱き着けば速まる心臓

「悠仁、いま心臓速くなったよ」
「そりゃ…好きな子にくっつかれたらドキドキするって!当たり前じゃん」
「そっちから抱き締めたのに」
「うっ!それとこれは別っていうか」

どっどっ、さっきよりずっと速くなる心臓の音が押し当てた耳から入り込む
でも気づいてないでしょ?私の心臓も同じように貴方が好きだとうるさく主張してるの

「悠仁、大好きだよ」

ありったけの好きをこめた、私の言葉に悠仁は嬉しそうにはにかんで、それからーー、

「俺も名前が大好き」

きらきら、ぴかぴか、宝石よりもずっと輝く笑顔と素敵な言葉を届けてくれた


ひそひそ話をするように、ブランケットを二人で被ってちょっと照れくさいね、そういって笑いながら額と額をぴとりくっつける
くすくす、子供みたいな二人分の笑い声がブランケットで出来た洞窟に響いた

「今日はこのまま寝ていい?」
「ふふ、まだ夏だから暑いよ」
「夜は涼しいし、たぶん平気」
「そっか、じゃあ明日は最初におはようが言えるね」
「うわ…すげぇ楽しみ」

寝坊しないようにもう寝よ!
私を抱き締めたまま、ブランケットに包まれて目を閉じた悠仁が寝坊なんてするわけないのに、それだけ一緒に迎える朝が楽しみにしてくれてると思うと顔が緩んでしまう


「おやすみなさい、悠仁」
「おやすみ、名前」


何度も季節を重ねて、何度も誕生日を迎えて、大人になったとしても迎える朝をずっと貴方と二人で祝えたらいい

そんな未来がきたら幸せだね、悠仁


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