後にも先にもあなただけ
※現パロ。弟達は生存確認してる世界。
「来週予定空いてるか?」
それは唐突だった。今月からオープンになったバラ園に行ってみようと言われて、あれ、脹相って花なんて好きだったっけ?と頭にハテナを浮かべた。まぁ私は花が好きだし、あのバラ園はCMでもよく見かけてたから行ってみたかったので二つ返事でOKした。
「わー!これがバラ園!すごいね!」
「見事だな」
「近くに行ってないのにもう香りもしてる〜!いい匂い!」
僅かに蕾もあるけれど、ほぼ満開と言ってもいいくらいに個々の色を主張するバラ達は圧巻だった。私を見てとい言わんばかりに発している香りを胸いっぱいに吸い込む。たまにはバラを家で飾ってみるのもいいかもしれない。あ、売店で売ってるんだ・・・。
「帰りに買ってみるか」
「!、ふふ、私も今同じこと考えてた」
まさか脹相も同じことを考えてたなんて。タイミングが良すぎてクスクス笑ってたら隣の脹相も嬉しかったのか目を伏せて口元が少し笑ってた。この顔が密かに好きだったりする。いや、いつもの仏頂面も格好よくて全部好きなんだけど、やっぱり笑った方が好き。
「こっちから回るみたいだな。行こう。」
スッと差し出された手を握る。特に意識してなくても自然と手を繋ぐのはもうお互いがそうするのが当たり前だと思ってる証拠。私よりも一回りも大きな手も彼の好きなところ。たくさんの失敗と努力をしてきた彼だけの手。指1本1本を絡めてゆっくりとたくさんのバラを見て回った。途中、小さなドーム型の硝子屋根の休憩所のようなところがあり、真上には何故かベルが付いていた。
「ねぇ脹相、ここなんだろうね。このベルは何をするんだろう?」
「パンフレットには『鳴らしてみてくださいね』と書いてあるな」
「え、じゃあやってみよ」
ベルから伸びてる紐を掴むと脹相も一緒に握ってきた。なんだ興味あるんだ。ちょっと意外。
せーので一緒に引っ張るとカランカランと思ったよりも大きな音が鳴った・・・けど特になにかある訳でもなくちょっと拍子抜けしちゃった。なんの意味があるのかわからないけど、少し高い位置にあるここは誰もいなくて、遮るものが無くて、心地よい風が吹いていた。
「あれ、何も起きないね。なんだったんだろう?」
「あぁ、何も無かったな」
「ねー。不思議」
「・・・・・・・・・なぁなまえ」
「ん?」
不意に呼ばれて振り向くと、ちょっといつもと違う緊張したような、真面目な顔をしてた。なんだか目が離せない・・・。
「なまえ、結婚しよう」
「・・・・・・・・・へ?」
一瞬なにを言われたのかわからなかった。回らない頭で一生懸命さっき言われた言葉を繰り返す。心臓が今までに無いくらいうるさい。
「実はここは『幸せのベル』と言って、2人で鳴らすと永遠の愛で結ばれると書いてあった」
「え・・・じゃあ今一緒に鳴らしたのって・・・」
「すまない、どうしてもサプライズというのがしてみたくて事前に調べていた」
「サプライズ・・・・・!」
「今日はプロポーズの日らしいから、タイミング的に今日しかないと思った。俺はこの通り不器用だからな、俺の事をわかってくれる人はお前しかいないと思っている」
さっき一緒にベルを鳴らしたのはそういう意味だったのか〜とかなんて策士なんだとか何故か感心しちゃった。でもそういえば彼は意外とマメで努力家で一途だったなとぼんやりと思い出した。
「それで、お前はどうだ」
「え?」
「いいのか、悪いのか、お前の意見を聞きたい」
「あ・・・」
全然頭が回らなくてずっと聞きっぱなしだったけど、思い返せば出会ってから今まで色んなことがあった。
些細なことで喧嘩して、その度に弟の壊相くんや血塗くんや悠仁くんには助けてもらった。仲直りした後には必ず「ごめん」と謝っていっぱい抱きしめて愛おしい気持ちが溢れる程のキスもしてくれる。たまに私が調子悪い時はこれでもかというくらい世話を焼いてくれるし心配してくれる。弟たちが大好きで可愛くて、彼らのことを話してる時の脹相は嬉しそうな柔らかい表情をしてる。あの時の顔がさっき笑った顔と重なって、心が暖かくなった。きっと私の心を揺さぶって、温めてくれるのは、もう彼しかいないんだと改めて思った。だから、私の気持ちは一つだけ・・・
「はい、喜んでお受けします。嬉しい・・・。ずっと傍にいさせてね」
「あぁ、もちろんだ」
そう言ってまたあの好きな顔で笑って抱きしめてくれる。きっと嬉しさで赤くなってるだろう私と愛しい彼の顔をバラの香り達が撫でていった。