ありすは日本においてFBIであることが決してばれてはいけない為、手帳は携帯せず、関係者が出入りする場所にも近寄らないようにしている。が、この日は赤井に呼び出され事務所に顔を出していた。
「ありす、日本に来て早々、身元はばれていないだろうな」
「その心配をするなら、こんなところに呼び出さないでください。尾行されてないか確認するのに1時間もうろうろしてきたんですから…それより、仕事ですか?」
ありすの顏が真剣になる。
「いや、まだ動きはなさそうだ。もっとも、ベルモットが変な真似をはじめない限り、だが」
「ジョディが監視中、ってところでしたよね」
「あぁ。それで、だが」
赤井はポケットから一枚の写真を取り出し、この少女を見たことないか?とだけ尋ねた。
写真はランドセルを背負った少女。赤みがかったウェーブのショートヘアが特徴的だが記憶にはない。
「会ったことないと思いますけど、知り合い?それとも…」
組織の人間かと訊きかけて、ありすは眉間に皺を寄せた。
――写真に写っているのは、紛れもなく”少女”だ。
「いや、現時点ではわからない。ただ、確かめる必要があると考えている。彼女は米花町付近で目撃情報がある。ありすの生活圏内だ、見つけたら報告を頼む」
どうやら、赤井さんはこれ以上説明する気がないらしい。そうですか、秘密ってことですか。
状況を悟ったありすは、天井を見上げて大きくため息をついた。
「これだけ確認しときますね。その子には、私の存在を認識されても問題ないですか?」
「…今は接触を避けてくれ、何かわかったら連絡する」
「了解です」
つまり、まだなにもわからないってことらしい。
ちょっと厄介ごとが増えたな、とありすは写真をみつめた。
「もうひとつ、そっちの調べものはどうなんだ」
赤井さんは写真を胸ポケットに仕舞いながらありすに問いかける。
「えぇ、無事に潜り込めましたよ、どうやら赤井さんにも協力して頂けるようですし」
「GPSの件、まだ根に持ってるのか」
「逆ですよ、逆、ちゃんと感謝してるんですから」
ありすが思わず笑うと、赤井は目をそらして苦笑いした。
「でも、なぜ東都大なんだ?」
「逢坂かえでの父親が研究していたのが東都大だから、ですかね。…といっても、組織が消そうとした"何か"も、その手がかりとなる資料も、19年前に全て燃えてしまったでしょうけど」
そう、あの日。姉に泣いて追い縋った日。
彼らは父の研究における全てを焼き尽くしただけでなく、幼い少女だったかえでから、なにもかもを一晩で奪っていった。
「この研究に関して、彼は一切の論文を書いていなかったんです。だから自分で研究を進めてたどりつくしかないと思っていたんですが――どうやらまだ残っていたようです。
赤井さん、思ったより早く辿りつけそうですよ…『探し物』に」
そう告げるとありすは、にやりと笑った。
探し物はどこですか
這いつくばったら見つかりますか?