この後用事があると言った靖代さんと別れた私達は、米花公園で作戦会議をしていた。

「そっかぁ、偽警官は泥棒だったのか…」
元太くんが口火を切るが、
「いやーどうも重ならないよ。あの秋本靖代さんやありすさんの語る人物像とは」
「だよね」
高木刑事と歩美ちゃんは納得していない様子だった。

「その偽警官を見かけた人物を探して、とにかく情報をかき集めるしかないな…」
「あと、その人が警察官の制服をどこから手に入れたのか探るのも手だよね」
高木刑事の言葉にさりげなく懸念事項を付け足すコナン君。
そうなんだよ、制服を盗まれたら、とっくに大騒ぎになっているはずなんだけどなぁ…
そう言って、高木刑事が頭を掻く。

そう、警官の制服は各個人で厳しく管理することを義務づけられていて、家庭での洗濯時も盗難防止で外に干すことはない。だけど、
「100人分のドラマ衣装なら1着ぐらいなくなったとしても…」
「あー!!!」
ありすが口にした一言で、子ども3人が何かに気付いた時。

…Cool kidがニヤリと笑ったような気がした。



******



高木刑事と子ども達、そして私はファミレスで2回目の作戦会議へと移っていた。
コナン君は米花町の地図を広げ、目撃情報のあった場所にすらすらと×印を書き込んでいく。

「偽警官が現れ始めたのは1週間前、先週の月曜日からとみてよさそうだ…
先週の月曜日って、あの靖代さんの残業が始まった日だよね。そして、その偽警官を昼間見かけたって人は一人もいない。現れるのはいつも夜遅く、米花駅に終電がつく頃だ」

コナン君の推理が始まると、子どもたちはおぉ、とか、それで、とか個々に口を挟みながらも耳を傾けている。

「目撃された場所は、駅前が1件、その先の2丁目が5件さらにその先の3丁目が3件。これ全部を辿っていくと、3丁目に住んでる靖代さんの帰宅コース。
つまり。偽警官が現れ始めた時期も、時間帯も、場所も…」
「あの秋本靖代さんの残業と関係している…」
高木刑事が、コナン君に同調する。

「そう、それにあの人言ってたよね。とにかくこの1週間、毎晩勤め帰りに私はそのお巡りさんを見かけたんです、って。毎晩見かけるって、とても偶然とは…」
コナン君の話を身を乗り出して聞いていた利発そうな男の子、光彦君が口を開く。
「偽警官は、靖代さんの前にわざと現れていた?」
「それってストーカー…」
思わず口を滑らせると、歩美ちゃんがわっ、と小さく悲鳴をあげてしまい、ありすは慌てる。
「でも、そうは見えなかった気もするし…ごめん、続けて」
コナン君はあぁ、と頷く。
「何のためかわからねえけどな。でもそう考えると、ひげもじゃに眼鏡ってのも意味が見えてくる…」

すると、それまで考え込む仕草をしていた高木刑事がそうか、と声をあげた。
「変装だ、偽警官は秋本靖代さんに素顔を知られてるってことかい?」
「偽警官は靖代お姉さんの身近な人?」
「で、誰なんだ?それ」
さらに歩美ちゃんと元太君が詰め寄る。すると、

「そこまでわかるかよ…」
とコナン君は目を逸らし、なんだ、つまんねーの。と元太君が言ったところで、小学生3人組の集中力は途切れたようだった。



******



現状の整理も終え、歩美ちゃんが無くしたハンカチを探しに再び鉄龍へと向かうことになった私達は、子どもたちに続いて席を立つ。

「あの、高木さん、こういうのって経費とかじゃ…」
「落ちませんね、残念ながら…」
…それは、いつも大変ですね。とありすは苦笑いを浮かべる。

「全額だと公務員の方は問題になるでしょうから、せめて半分出させてください」
「あ、いえ、これくらいは…」
「私も、ついでに御馳走になったでは許されない年齢ですから」
日本の警察に借りを作りたくないから。という本心は隠していたが、どうやら理解して貰えたようで。

「…ご配慮ありがとうございます」
そう言って高木さんは了承してくれた。



******



再び鉄龍へと戻ったものの、準備中の札が掛かった店内は暗く、人が出てくる気配がない。元太くんが扉を叩き全員が店の中を覗き込むなか、ふと光彦君がこの場を離れると、近くの女性と二言、三言喋ってすぐに戻ってきた。
「店主はさっき出かけたそうです、食事にでも帰ったんじゃないですか?米花公園のすぐ近くに住んでいるそうですから」
ありすはその言動に感心する、光彦君は小学1年生にしては利発なようだ。ただ、やはり"彼"は飛びぬけている——ありすは ポケットのなかを探る歩美ちゃんと成り行きを見守る元太を眺めながら、そんなことを考えていた。


「あれ?あったー!…ごめんなさい」
歩美ちゃんのハンカチが実はスカートのポケットに入っていたと判明した頃。日売テレビから高木刑事の携帯に、例の制服警官の衣装が1着足りないとの返答が届いた。

「やっぱり。あのロケの時に米花公園で偽警官は制服を手に入れたんだ」
コナン君は考え込む様子で言葉を紡ぐ。
「あぁ、たぶんね。撮影は半月前の日曜日だったそうだ」
「えっ、あのロケ、半月前の日曜日なの?」
高木刑事の言葉で、コナン君の表情が変わる。
「そう言ってたけど、それが?」
「それって先月の第三日曜日だよね。この店がちょうど休みの日なんだ」
コナン君が、定休日:第三日曜日と書かれた看板を指差す。

「なあ光彦、ここのお兄さん、米花公園のすぐそばに住んでるって言ったよな?」
「え、えぇ」
「休みの日なら、見に行ったかもしれねえよな、あのロケを」
「そりゃ見に行くだろー。近くで派手なドラマの撮影やってりゃ普通」
コナン君の問いにさも当然といったように元太君が答えると、またもやコナン君がニヤリと笑う。

「その気になれば制服を盗む機会があった。そして偽警官は靖代さんに素顔を知られている身近な人物…」

「まさか、コナン君」
「偽警官はあの人?」
「そうなのか?」
光彦君、歩美ちゃん、元太君がコナン君に問いかけ、
「でも、どうしてあの人が…」
高木刑事が考え込む。
私も傍観者を決め込まず、とりあえず何か言えばよかったかな。なんてありすが考えていると。

「それを確かめる為にベイカウォーカーに行こう」
コナン君が次の行先を示した。





振り回される大人達
純粋だから、性質が悪い
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