あれからどれだけ経っただろうか。
すれ違う車が、何度もシボレーに見えた。
人混みで煙草の匂いに何度も振り返った。
深夜に携帯が鳴った気がして、何度も飛び起きた。
赤井さんが、私の前から、いなくなった――
******
毎日の習慣。世界が色褪せて、何も感じなくても、何も考えられなくなっても。
それでも身体は毎日、起きて、電車に乗って、研究室の鍵を開けて、白衣を着て、それから…
『1番線に到着の電車は… 白線の内側に…』
ホームの人混み。視界がぼやけて、周りの音が零れてゆく。
そんな時。
「…赤井さん!?」
到着電車が視界を遮る、直前。
向かいのホームに佇むあの人と、目が、あう。
世界が、止まった気がした。
ほんの一瞬だったとしても、その姿を、ありすの瞳は鮮明に捉えていた。
――赤井さんが生きてる!? そうよ、赤井さんが死ぬ訳なんてない!!
気がつけば、走り出していた。
ありすは人の流れに逆らい、階段を駆け上がり、その姿を探す。
けれど、ありすが降り立ったホームに、その姿はなかった。
******
『努力は報われるなんて綺麗事だ』と誰かが言っていた。
だけど私は、努力とか継続とか真摯さとかひたむきさとか、そうやって走り続けていればいつか報われるはずだと、どこかで思っていたのかもしれない。
赤井さんの役に立ちたかった。
いつか赤井さんに認めてもらいたかった。
私は、赤井さんみたいになりたかった。
どんなに暗くても険しくても、その光を目指して進めばいつか辿り着けると信じていた。
でも今は、進むべき方向さえ、わからない。
——ここに赤井さんは、いない。
永遠なんて何処にもない
足元は最初から不安定だった
ただ、怖くて、ずっと見ない振りをしていた