「ありす、早速仕事だ」
どこもかしこも日本語!日本人!!ここが日本!!!
事務所では嫌だ嫌だと散々言っておきながら、どこかわくわくしている自分がいて。
旅行じゃないんだぞーともうひとりの冷静な自分が苦笑していると、突然手元の携帯電話が鳴り響いた。
画面に映し出された知らない番号によって、ありすは否応なしに現状に引き戻される。
恐る恐る電話に出ると、相手は名前も名乗らず、前置きもなく、冒頭の一言。
…よーく知ってる人の声で。
「あのー赤井さん、私今到着してやっと日本のSIMカード入手した段階だって、わかって言ってますよね」
「ああ、本部にお前のフライト時刻と日本での番号をすぐに連絡するように言っておいたからな」
「…だからあんなことを言ってた訳ね」
『ありす、入国手続きが済んだらすぐにカウンターに行って携帯電話の契約をするんだ。
場所は空港内のここ、この赤丸のところだ。
事務所に連絡した後なら、カフェでお茶してもショッピングしても構わないが、電話番号の連絡はすぐにするんだぞ。いいか、絶対すぐ連絡くれよ!!』
2日前。荷造りをしているありすのデスクへ猛進して来るや否や、地図を片手に念押ししてきた男の形相を思い出して苦笑する。赤井さんに脅されたなら焦るよね、そりゃあ。
「それで赤井さん、仕事ってなんですか?私まだ家も車もないんですけど」
「3日後ターゲットが現れるとの情報がある。そこでお前には運転を頼みたい」
「運転って言ったって、まだ私、右ハンドルの左車線運転したことないですよ?」
「だから左ハンドルにしとけって言っただろ」
「どうせ赤井さん乗せて逃げ回らなきゃいけないんだから、目立たない日本車に決まってるじゃないですか」
「ほぉー、それはいい心がけだ」
声にあわせて赤井さんの顔が脳裏に浮かぶ。電話なのに。
「…絶対バカにしてますよね、今の声」
「まあ安心しろ。今回はバックアップ要因、何もなければ追いかけてくるだけの簡単な仕事だ」
「いやいやいや…」
ありすはそんな訳ない。と顔を歪める。
何かあった場合にこそ、テクニックや地理感覚が生死を分けるって知ってるくせに。
「まだ時間はある。あとで場所を含めた詳細を送っておくから、それまでに慣れておくんだな、ありす」
あぁ。空港の通路の真ん中でスーツケース片手に何やってんだか…
とりあえず、不動産業者に連絡して早急に鍵を貰ってから免許証発行しなきゃ。
なんだかんだで、赤井さんにも頼られてるみたいだし、ね。
ありすはじめじめとした風を感じながら、この生活も案外悪くないかもしれないな、なんて思い始めていた。
——5分後にメールが届くまでは。
=====================================
From : Akai Syuichi
Sbj : 先程の件
=====================================
詳細は、本部のサーバーにあるから
確認しておいてくれ。
http://************
期待してるよ、90点
=====================================
だから、90点って呼ぶな!アホ赤井!!!!
You're "all-rounder".
無茶振りは信頼の証