まだ肌寒さの残る昼下がり、ありすはひとり山道を車で走っていた。

米花町から遠く離れた桜の名所、群馬の冬名山。
ここならば人の目を気にせず外出できると考えてのことだった。

信号機もない山道をひたすら登っていくと、緩やかな右カーブで対向のバイクの集団とすれ違い、その先で視界が大きく開ける。
綺麗に整備された駐車場、その最奥に車を止めて降りると、ありすは大きく背伸びをした。

そのままサングラスを外して深呼吸をしてみると、身体中が自然で満たされたような気分になって…
ありすが久し振りの開放感を満喫していたところに。

「あれ、ありすさん?」

予想していなかった声に驚き振り返ると、そこには買い物袋をぶら下げたコナン君と博士がいた。



バーボンが毛利小五郎の近くをうろついている――

咄嗟に赤井さんの言葉が蘇る。
けれど、安室さんに漏れる可能性があるとはいえ、見つかってしまった以上どうしようもない。
それならばせめて何事もなく、目立つこともないまま終わるように、ありすは努めることにした。

「ありすさんは、キャンプ…じゃないみたいだね」
コナン君は荷物の少ないところを目ざとく見つけて近づいてくる。

「…ええ、たまには遠出してお花見でもしようと思って」
「そっか、ここの桜有名だもんね」
「コナン君は博士とキャンプかな?」
「うん、学校の友達と来てるんだ」

あぁと頷いて、ありすは高木刑事を散々振り回した少年少女を思い出す。
それに、灰原哀――赤井さんの護衛対象である、”シェリー”と呼ばれた彼女はどうしているだろうか。

「みんな元気?」
「うん、元気だよ」
「そっか、それはよかった」

コナン君と何気ない会話をしながら進んでいると、気がつけばありすも彼らのテントに到着していた。



「誰もおらんのぉ…」

テントにもその周囲にも少年探偵団の気配がなく、博士が困ったようにポリポリと頭を掻く。
コナン君も、まったく…と言いながらスマホを取り出すが、充電切れのようで。
「博士、あいつらに電話してくれねえか?」
「今、リュックに入れておった携帯で哀君にかけておるんじゃが、ちっとも繋がらん…この辺は電波状況が悪いのかのぉ?」

ありすはそんなふたりを尻目に周囲を見回すと、隣のテントに複数の人影があることに気づいた。

「すみません、そこのテントにいた子どもたちが何処に行ったかご存じありませんか?」
「うーん、随分前に焚き木を拾いに行くぞーってはしゃぐ声は聞こえたけど、それ以上はわからないなぁ」
「…そうですか、ありがとうございます」

博士はほかの子たちにも順番に掛けているようだが、電話が繋がらなかったり、繋がってもテントの中で鳴ったりしていて、収穫はなさそうだ。

「バッジもこのテントに置いたままのようじゃな…」

この様子じゃどうやら連絡は取れなさそう。だったら…



「とりあえず、捜しに行ってみましょうか。焚き木拾いならある程度場所もわかりそうですし」

ありすの提案で3人は近くを探しに行くことにした。

 
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