I was blur.

覚えている言葉だけでは、私は彼のことを話せない。そして、彼のことを話せない私には自分についてなど話せないのだ。だから私はこうして窓の外ばかり見ている。いつか、いつの日にか彼のことを描けるようになりたいから。きっと自然にできるようになるのを待っていては間に合わない。
神さまはいつだって私と彼を線引きする。アンタが、私たちからお互いを奪い去るなら私にだって考えがある。白いカーテンを開けて、夜を泳ぐ飛行機の灯りをすぐ側のマンションの明りを線で結ぶ。ハリボテの星座は瞬きとともに姿を歪めていった。愛なんて目には見えない。けれど、触れないわけじゃない。
「なにしてんの?」
大好きな声がわたしを呼びながら、背中にピッタリとくっついた。石鹸の香りと湿った肌の感覚が心地よい。
「ん〜?星座作ってる。すっごく楽しい。悠仁も神様に喧嘩売ろうよ」
「いっつも突如変なこと始めるよなあ。しかも決まってかなりバチあたり」
冬の空気に冷やされた私の頬を悠仁の大きな手のひらが覆う。子供体温。悠仁の顔を覗きこんで目と目を合わせる。
「それでもそこがカワイイって?」
「言ってないんだな〜」
私は彼を愛している。でもそれを伝えようにも、愛はさわれないし話せない。けれど、温度は知ってる。愛の平熱はだいたい36,5℃。ただ、無色透明だから目に見えないだけ。私と悠仁は窓辺に裸足で立ち、フローリングには平熱の愛が転がっている。

21.03.07 / 虎杖悠仁 拍手御礼

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