久しぶりにふたりきりの時間が作れた今日。
誰もいないっていうのがわかってるからこそ、本日のセックスはスタートからゆっくりしていた。
前戯も挿入もすべて時間なんか気にせずにダラダラ、いや、イチャイチャ?……いや違う、えっと、……あ、俺が一方的にヒョンに甘えてるんだな。そうそれ。
そんなの普段通りだろといわれたらそうなんだけど、それでもこんなにゆっくりできる日もないなって思えば思うほど、今日は回数なんかよりも質を大切にしたいと思って。

だから挿入もがっつきたくなくて、ゆっくりゆっくりしてたら痺れを切らしたヒョンがのそのそと上体を起こして俺の上に跨った。
おまえ今日なんなんだよ、俺のこと焦らしたい日なのか?
って、セックス中は頬っぺたがピンクになってしまうヒョンは、その時もやっぱりピンクな顔で俺の胸に手をついて自ら身体を揺すったのだった。


そして。



「……はぁ、」



くたり。
動くことに疲れたのか、息を吐きながら俺の上で覆いかぶさるように身体をくっつけて、ユンギヒョンは動かなくなった。



「ひょーん」
「ん、」
「もう疲れちゃった?」
「…疲れた」



微かな声でそう言ったヒョンの、そのしおらしさに思わず口元が緩んでしまう。
うーん、疲れちゃったか。そうですかそうですか。だってたくさん動いてくれたもんね。

さっきまで、俺の上で勝手に気持ちよくなるヒョンはそれはそれは可愛かった。
水色が抜けて白くなってしまった髪をふわふわとさせ、普段は白いその肌を上気させながら、あ、あ、と控えめな声を漏らすユンギヒョン。
自分で動いて、自分で気持ちよくなって、そしてたまに呼ばれる俺の名前。
テヒョン、って。
そんなのを見ていたら可愛すぎて瞬きすら忘れてしまっていたし、色々と堪らず何度も唾を飲み込んだ。
それからもっとえっちなヒョンが見たくてベッドについていた両膝を上げるように促すと、俺の足に寄りかかるようにして体勢を変えたヒョンのおかげで現れた膝小僧が今までの動きのせいでシーツと擦れて赤くなってしまっていて。…あームラムラする。って、俺はそんな事にすら欲情してしまったのだった。

そんな、さっきまでのえっちなヒョンを思い出しながら、ユンギヒョン、って呼ぶとのそりと顔をあげたその人と至近距離で見つめ合う。
……かわいいなぁ。
少しだけ眠そうなその表情も、それでも俺の目をしっかりと見つめるところも、ピンクの肌も。ぜんぶ。



「…かわいい、ユンギヒョン」
「んっ、」



堪らずキスをして、それからぎゅうぎゅうと抱きしめた。
俺の首や肩に髪の毛がふわふわと当たるからくすぐったいけれど、しっとりと汗ばんだ肌がぴたりと合わさって気持ちいい。
……はぁ、こんなに幸せでいいのかな。好きな人とこうやっていれるとか。
あんまりメルヘンな思考になりたくはないのだけど、こんなにゆったりとした空気でセックスをするのもなかなかないから浸ってしまう。
そんなことを考えながらヒョンの背中からお尻にかけて撫でていると「やめろ変態」って言われてしまった。ひどい。



「ねぇヒョン、疲れたなら俺が動くからねぇ」
「んっ、言い方、きもいんだよ、」
「すぐそんなこと言う」



ゆる、ゆる。
俺とヒョンがぴたりとくっついたその体勢のまま、下から突き上げるようにゆっくりと腰を動かした。
両手をヒョンの尻たぶに回して拡げるようにしながら動けば、左の耳元でん、ん、と掠れたえっちな声が聞こえてきて、「ヒョン、かわい」ってやっぱり無意識のうちに言葉が出てしまう。



「…ん、そこ、」
「うん、ここ好きだよね」
「っあ、ん、いい、きもちいい」



……うーん、かわいい。俺のヒョンは、なんでこう。
堪らず心の中でヒョンについて考えていると、少しずつ俺の動きに合わせて揺すり始めた白い身体。
ゆるゆると自分の良いところに当たるように動き、既にどこを触っても敏感になってしまった身体で快感に溺れるユンギヒョンが可愛くて可愛くて、ああ、ほんと……。
ん、ん、って、声には少しずつ吐息が多めになって、それから、んん、はぁっ、ぁ、ってとにかくえっちな声が俺の耳に響き渡って鼓膜を振動させる。



「あーヒョン、まじで、めちゃくちゃかわいい…」
「ぁ、うるせ、っは、ぁ、」
「そんなこと言われてもかわいい、むり、全部すき、ヒョンのぜんぶ、」



うるさいって言うくせに、可愛いと言われれば少しだけ締まる後ろがヒョンの気持ちを代弁してるようできゅんとする。
結局口では嫌だのやめろだのああだこうだと言うけれど、なんだかんだでヒョンは俺の言葉をいちいち気にしているし、俺に可愛いと言われるのを悪くないと思ってるんだよね。
わかってる、全部わかっているから、やっぱり煽られてしまう。



「……ねぇヒョン、俺にしっかり捕まって」
「あ、?…おい、っ」
「よい、しょ、っと、」



ヒョンとゆっくりシたい。
自分で勝手に始めた縛りのくせに、それを守るのはもう無理そうだった。
だって俺の恋人はこんなに可愛いんだもん、可愛すぎるんだもん。
ならば、即行動だ。
ヒョンの腰に手を当てて、そのまま支えるようにしながら身体を回転させた。力がないからだいぶ無理矢理だったけれど、急にぐるりと視界が変わったユンギヒョンは少しだけ驚いた顔をしていて、それでも俺と目が合うと少しだけ口角を上げた。……なにそれ。



「…えっろ、」
「ハン、その言葉そのまま返すわ。おまえの顔のがやばい」
「え、うそ、ブサイク?」
「ちっげーよ、……つうか、そんな事はどうでもいいから」



早くしたいんじゃねーの。って。
あからさまに答えをはぐらかしたヒョンはやっぱりえっちな顔でそう言った。
……無意識なのかな、それとも狙ってんのかな。どちらにしろ俺は簡単に煽られてしまうから、こちらを誘うように半開きのその唇に噛み付いた。





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