10





今朝から演習後の後始末に追われ隆国は、忙しなく動いていた。その忙しい中でも、昨日出会った娘と殿の会話を思い出していた。

あの不可思議な話の内容はなんであったのか……日本とは………


とやるべき事も終わりそうな時、修練場の方が何やら騒がしかった。そういえば、昨日干央が行くと話していたな。

…しかしあんな人だかりができるか?


気になってしまってはしょうがない。行ってみるか。

修練場の方に足を進めた。



「おい。この盛り上がりはどうした」
「隆国様!」
「宮女が試合しているそうです。それが思ったよりも、凄い試合で………」
「宮女…?………っまさか!?」


心当たりがあり中を覗くと、録嗚未のところの五千人将と例の宮女ーー晋が試合をしており間に干央が入り晋の足を掴んでいる所だった。
ここからでは詳細があまり見えない。


すると、娘が急に倒れた。まさか……






「お、おいぃぃ!!!娘、どうした!!!?」

「???」


驚く干央と暉沾の目の前に隆国がやってきた。


「隆国様」
「隆国!!娘が!!」


目を合わせた隆国は、はぁ…とため息をつきながらしゃがみこむと仰向けになった晋の額に手をやり、上半身だけ起こすと服を脱がし始めた。


「お、おい!!!何して………!」


すると、脱がされた服の胸から背中にかけて包帯がしてあり、背中の部分が真っ赤に染まっていた。


「傷が開いたみたいだな。昨日も血が少し滲みでていた。無茶するからだ。たくっ…


医療担当のところに連れていく」


そう言うと、隆国は気を失ってる晋を横抱きにして修練場を出て行った。




「干央様……」
「?」
「彼女はいったい……」




暉沾は自分の手を見つめ弱き自分を消すように強く握りしめた。















「ーーーーー…ここは?」

「お前がいただいた部屋だ」
「!?」

目を開けると自分が横になっていて天井を見つめていた。隣から声が聞こえたのでそちらを見ると、知らぬ男性……………と思いきや昨日いた方の一人と思い出した。


「私は、いったい…」
「背中の傷が開いていた。激しく動きすぎだ。そのせいで高熱も出た」


シュリシュリシュリシュリ


「あ、だからフラフラするんだ……血、流しすぎちゃったのかぁ……」
「ナメるな。手負いの奴が勝てるか」
「ごめんなさい…………」

「…………」

シュリシュリシュリシュリ

「そう言えば、貴方が私を連れてきてくださったんですか?」

「隆国だ」
「むぐぅっ!?」


シャクシャク……

「ひゅうこくしゃん、あひかとうこざいまふ」

何かを口に詰められた。何の音かと思ったが、隆国さんが林檎を向いてくださってくれたみたいだ。美味い。
飲み込み辛かったので、身体を起こす事にした。


「……………晋と言ったな」
「はい」
「なぜここにいる」





「…………………。


……死んだ主人に生かされたのかも知れません」



「?どういう…「あ!!私の着ていた服はありますか?!」


「あ、ああ」

すると私がさっきまで着ていた服が綺麗に畳まれ置かれていた。

「良かった。それ、騰さんからいただいたんです……」
「騰様が?」


隆国さんが少し驚いた顔をした気がする。
少し不思議に思ったが、そう言えば私はこれから騰さんの下につく事になった事を思い出した。


"騰さん"は流石に良くないよね。


と頭を考える事に動かすと痛み出してきた。


「ごめんなさい。もう一眠りさせていただきます…。隆国さん、ここまで連れてきてくださってありがとうございました……」



はぁ…と溜息が聞こえたかと思うと、良いから寝ろ。と呟く声が聞こえた



「隆国さんて、母親みたい…で…………」
「なっ!!!?」


スー…と寝息が聞こえた。




二度目の溜息をつく。


昨日の話から、この娘が何者かがよく分からなかった。殿も騰様も何故か警戒を解いて娘に接している。
言動も内容も、格好でさえ不可解。
だから私は念のために付き添ったが、敵国に忍び込み血の流しすぎと高熱が出て倒れるアホがいるだろうか。


ただの娘だ。


心から信じる事は出来ないが、今現状はただの娘にすぎない。



コンコン

「?」



ALICE+