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ドガラッ





「ひっろ………」



中華の広大な土地に驚く。




私たちは、王騎様の城から馬で少し離れた所に来ていた。


今日はいよいよ演習だ。
何千という人々全てが馬に乗り、集まっていた。騎馬での演習だそうだ。

昨日、騰様から馬を借りた時に説明を受けた



それにしても……………


周りを見回しても、建物も山も農村一つも見えない
ただただ土地が広がっていた。



「(私がいる国は秦国。そして、全てで七国だっけ……

……これが、中華………)」


こんな大国が日本の隣に……
そう思うと同時に背筋に悪寒が走る。

恐怖と興味に、口端が上がり馬の手綱を知らず知らずに強く握りしめていた。



「晋」



聞き覚えのある声が後ろから聞こえたので、少し馬を横に傾け身体を反対に向かせるとそこには騰と一人の男性が近寄ってきていた。


「?」

「晋。演習は雷剛の隊に入れ」


「!」

では。と言葉を残しすぐに騰は離れていった。…えぇ、それだけっ!?
それを見送り終わると、晋は雷剛に馬を近づける


「晋と申します。よろしくお願いしますね、雷剛さん」


握手を求め手を差しだす。……が、返してはくれないみたいだ。



あれぇー…


目も合わせず黙ったまま雷剛というわりと年齢を重ねているこの男性は押し黙っていた。

この方は戦に女を認めない人か…それともこの格好??

はぁ…どいつもこいつも……


先ほどから視線は感じていた。
好奇、興味、蔑み、
ハッキリ聞こえはしないが、娼婦だの経験があるとかないとか………

そりゃあ、女が戦場にいる事は珍しいしどう考えたって見た目は役不足。


あと、こっちだとこの格好は露出しすぎるのか………




同じ考えの人ばかり



そう、呆れ溜息を吐く寸前



「晋と申したな」

「!え、ええ」


急に話しかけられ、視線を雷剛に戻すと、いつの間にか真っ直ぐに私を見据えていたみたいだ。

真剣な眼差しを向けられていた。



「昨夜、騰様から話をいただいた。
が、私は特に他の奴等と変わらない様に接するつもりだ。

…男だろうと女だろうと興味はない。ただ知りたいのは、どれ位の実力があるかだ。

持てる力を出し切れ、晋。


騰様がこの演習にお前を連れてくるぐらいだ。正直、期待しているからな」


「…………」


「あぁ、あと。
あいつらの言葉も視線も気にするな。

人を見る目が養っていない未熟な奴等を許してやってくれ」


「…………」


「なんだ、どうした?」



雷剛は口を開け間抜けな顔で自分を見る晋に怪訝な顔を見せ言葉にした。

すると目の前の娘は、微笑んだ。



「……なるほど」

「?」


「さすが、王騎様の軍ですね」



なんて、清々しい人なのだろう……



晋は身体を伸ばし肩の凝りをほぐす様に腕を伸ばした。当の雷剛はなんだこの娘はと言わんばかりにさらに眉間に皺を寄せ晋を見つめていたが、
遠くの方で集合の合図があったのが聞こえ二人は馬を促した。



「雷剛さん」

「?」


「御心配感謝いたします。


ですが、
10数年も前から戦に出ております。

好奇の目に晒されるのは、慣れましたので最初から気にもしていません」


そう言い放った晋は、どこか楽しそうな笑みを向けていた。


「そして、期待には少し上乗せする主義です」





堅物で真面目そうな雷剛さんを、横目で見た時少し笑みを見せてた様な気がした。











ザワザワザワザワ………





「んー……っ!」



腕を天に向かって伸ばし身体にめいいっぱい空気を入れる。

…傷の具合は…良好。


それに煌龍、私の愛双刀はいつも以上に機嫌が良い。

馬術なんて久方ぶりだから、一応幸村様の刀も持ってきた。私の双刀だと馬上だとつかいずらくなりそうだしね。



周りの雑音が消え

風音と、程よい殺気と、この張り詰めた緊張感


良い集中……




騰様大将の軍1000騎

隆国さん大将、録嗚未さん副将合わせて2000騎


全て100の隊からなり
見た感じ、隊を纏めているのはどの人もそれなりの強者さん。

ちなみに、私の隊は雷剛さん。
長く騰様の近くにいる方の様に見える。


「さて、………」


そろそろかな。







王が刻まれる旗が挙げられる







開戦の合図だ。


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