14









「騰様。」
「?」

「何者ですか、あの娘……」




騰達から少し離れた所では乱戦が行われていた。あの娘とは、晋の事なのだが

屈強な王騎軍の男達の中で、細く小さな晋が異常な破壊力を見せておりその勢いのおかげで騰軍前線は
録嗚未を留まらせる事ができた。



だが、それでも数の理は超えられずにいる。
このままだとただの消耗戦だ。






「雷剛さん!!あそこへ突破しましょう!!」


晋は斬り合いから一時離れ、雷剛の背後に廻った。


「この状況でそれが可能か!?」


「ええ、もちろん[V:9835]」



開戦すぐに1000騎が向かってきた。

雷剛の話す様に、倍の兵力がある相手にこの場を離れるなどお互い顔見知りな上に容易くないのは誰の目からも分かる。だが、この乱戦を抜け隆国達の横を突く事が出来れば大打撃だ。



それをやろうとしているのか、この娘は………っ!



雷剛の視界に、楽しそうにでも真剣な眼差しの若き娘を見て驚く。



腕の力は無いが、それを速さと技術とセンスと経験でカバーし彼女にとって屈強であろう男共を伸していた。

周りにいる者達が少しずつ彼女は脅威だと感じ始めている。


そして、見た事がない剣。よく見ると刃が片面にしかなくそのおかげで動きが読めない。そして、それを彼女は上手く使っている。





彼女に乗ってみるか。



「………あぁ。行くか」



私がそう答えると、彼女は同意した様に笑みを見せ持っていた剣を勢いよく振り下ろし付着していた血を払い長い息を吐いた。




「ふぅーー…………



私が先頭を行くので着いてきてください」





屈強な王騎軍の兵達と、自分の力量を見誤り少し興奮気味だったのも相まって晋は思ったより体力を消耗していた。


接近戦でなおかつ何度も打撃を繰り返さないとならない煌龍で闘っていたら、この先の体力無かったかも知れない。



両手で闘える刀を持ってきて良かった。



晋は呼吸を整えると目の前の敵をはじき返し雷剛合わせて4騎を通す道を作って行った。





「娘!わかっているのか!?この人数で横穴は空けられぬぞ!!」



「それは大丈夫だ。既に騰様が100騎ほど送られている。討ち取られた報告がないという事は、向こうも混線」


「そう。だから、この人数。

隙間をぬって雷の如く大将を取りたい。



………でも少し問題が……」



「!!!!」




間も無く隆国の周りの乱戦になっている騎馬陣営にたどり着けそうな所に一騎立ち塞がるようにあいだに入ってきた。


いきなりの事で馬がぶつかりそうになり、先頭にいた晋の馬が驚きおたけぶ。勢いよく走り抜けていた五騎の勢いが落ちてしまった。



「あーあー…。なるほどねー……」


「暉沾っ?!」


「……………ッ!」



晋が眉間に皺を寄せた。


そう。晋が目立ち過ぎてしまったため、それが何処に行ったかを探っている者がいた。殆どは、追いつけずにいたが、この暉沾だけは早々に気付き追いかけてきていた。



「娘、やめろ!暉沾五千人将だ!!」


五千人将がどんなものかは晋には分からなかったが馬に跨り矛を肩に担いでる姿は、初めて会った時よりも大きく見えた。


これは、まずいな…………


そう感じずにはいられなかった。





「ここは私がいこう……」



雷剛が出てくるのを晋は手で制した。




「ダメ。あなたは隆国さんのところへ………


私が此処を食い止めます」




そう言うと晋は、刀を鞘に収め双刀を取り出した。そしてまた呼吸を整え


馬と共に攻め入った。




ガチんっ!!



「早くッ、いって!!!」


晋は、素早い攻撃を繰り返す事で暉沾の行くてを阻み、無理やりこじ開けた道を四騎は進んでいった。




「チ…ッ!!」
「結局私に勝てなそうね、暉沾くん!」
「晋もなっ!」



予測不能なそのリーチの短い双刀の動きに、リーチの長い矛で防ぐのは難儀な事だった。



「その、格好は、なによ!!」
「テメェがいう、なっ!!」



でも、それは最初だけ。

戦に慣れている暉沾と晋の力の差は歴然だった。強く重い矛の一撃をかわし、なんとかスピードに乗らせない事だけしか防げる方法がなかった。



ーーーだが、晋は機会を待っていた。






ゥヲォォォオオ!!




「!」
「なんだ?」


すると暉沾への抵抗力がなくなり目の前を見ると晋の姿だけが忽然と消えていた。


「……チッ!!」.



行く方向は分かっている、暉沾も追いかける様に混戦の中に入っていった。


















「(なるほど、さすがは騰様
ですが…それも、時間の問題)」



隆国は落ち着いていた。



最初に右翼を突かれすかさず左翼を突いてくる。合わせて200弱送り込み、混戦させる動きを取っている。

もう一矢くるかと待っているが、いつだ?


まぁ、人が薄くなった以上録嗚未が突破しやすくなったことも事実なのでここは時間を稼ぐしかないと
向かってくる者を相手にしながら隆国は考えていた。


「!?」



すると、この混戦をかきわけて騰副官のところの雷剛が一直線に向かってきていた




「隆国様。覚悟ッ!!」




キィィッン!!



一撃目が弾かれ、二撃目がくる寸前の一瞬




フワッ……





「ッ!!!?」


ザシュッッッ!!!


「いッ!!」





カンッッ!!!








ALICE+