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ピイィィィィー……





隆国が倒れた事を意味する笛の音が聞こえた。



「…録嗚未様!!隆国様が討たれました!!」

「…っんだよ。もう終わりかよ」



矛を肩にのせ馬を止める録嗚未。
目前に見える騰を見据え、チッ…と舌打ちをし、馬を隆国の方へ進ませた。











「!」
「なんで、あいつが……?」


馬上にいる男どもの中心で、短剣ほどのながさの見た事もない剣を癖の様にクルクル回しながら隆国と地上から話す娘をみつけた。





「隆国さん!!なんで私が後ろにいたのが分かったの!?…気配さえも消したのに………」


雷剛が隆国に二撃目を当てる寸前に、晋は隆国の背後に周り攻撃を仕掛けた。が、寸前で阻まれ完全にそれに気を取られた隆国は雷剛に兜を落とされた。



「晋。隆国様に何て口の利き方だ…」



雷剛はそう言うと、兜を本人に渡す。隆国はそれを受け取り、被り直しながら話し始めた。



「……花の香りがした。今朝、香でも焚いたのか?」

「香?そんな初歩的な事するわけ……」




晋は雷剛の言葉を流しながら、隆国の言葉に頭を傾げ顎に手を乗せ眉間に皺を寄せた。

すると遠くの方から数騎の馬がやってきたのが晋の視界に入ってきて見知った顔が見えた時思わず声が漏れる。


「あ。」

「騰様、録御未様達がいらしたな」



雷剛がそれを言葉にすると同時に馬が到着した。すると晋は、回していた刀を肩に置き隆国と雷剛に聞こえるくらいの小さな声で呟いた、




「隆国さん」

「ん?」


「………騰様は、怖いお人ですね」

「??」




「隆国!」



隆国と晋の間に録嗚未が現れ、その大きな声も相まり晋の言葉はかき消された。

それと同時に晋の頭にポンと何かが乗せられた。


「騰様!」


振り向くとそこには馬上の騰とその側近たちがおり、目があう。ん?なんか凄い見られてる気がする




「一度城へ戻る」

「はっ!」


その独特な応に晋は再び驚く。業に従えと言うならばと思い、その場で密かに晋も見よう見まねでこうか?こうか?と真似をしていると雷剛の呼ぶ声が聞こえ顔を上げる。
すると、周りは統率を始めており、その中で騰が側近たちを連れ先に足を進めているのが視界に入った。


「晋」

再び雷剛が名を呼ぶ頃には晋の姿が消えていた。





















「騰様、晋です」

「!!!?」



急にここにいないはずの女性の声がし、騰の側近達はその声の方向に顔を向ける。が、それは騰の後ろの馬のおしり辺り……


え?




そこに人乗れんの!?
と、驚愕しない奴はいない。




「どうした、晋?」


それを何事も無かったかの様に変わらず馬を走らせ続ける騰に、更に驚く周り。


「…お礼をしに。


今朝のお風呂は最高でした。じゃすみん?風呂でしたっけ。本当気持ちよかったなぁ……」


晋は背中を騰の背に預け、空を仰ぎながら話し始めた。


「お、女!!

そんな事を騰様に話に来たのか!!わきまえろ!!」




並行して走る騰の側近が怒鳴っている。




「……殿が一番気に入っているものだからな」


「騰様!?」


「香りも良いですもんねェ……」

「………」



それを気にも止めず二人は話続けていた。


「朝の方が気持ちよく入れる、ネェ……」

「違ったか?」


「いえ、とても気持ち良かったですよ

…あーあ、それにしても腕が痛い」


晋は左腕を伸ばし、先ほど隆国に阻まれその際受けた肘から手首まで長く入ったまだ血が流れる刀傷を見て呟いた。





「……………

他に言いたい事はあるか?」


「いーえ。ありません。



私を使ってくれるお方が頭のキレる嫌な人で良かったと後悔したところでした。」



そう言った晋に騰はココココッ!と王騎様の独特な笑い方の真似をされ、晋はほくそ笑んだ。


「早く自分の馬を連れてこい」

「はーい」




言い終わった直後、彼女の姿は消えていた。


周りの者たちは二人の会話を聞いてはいたが内容があるのか無いのか分からないこの会話を聞いてただただ驚くばかりだった。

ただその中の一人が騰を見たとき、いつも本心が見えず表情もあまり変えない御方が、少し楽しそうに見えた。そんな気がした。










「お。やっと戻ってきやがった」

「あれ、私に負けたき暉沾君!」


晋は騰達からだいぶ離れた先程まで自分がいた場所に戻ると、雷剛隊の人達と暉沾隊がいた。
晋がそこに近づくと暉沾は連れていた馬の手綱を、本人に投げつける。



「勝ってもねーし、負けてもねーよ。」


「そゆとこ真面目よねー。嫌いじゃあないけど……」



晋はありがとうと馬の手綱を受け取ると背を撫で跨った。そして、暉沾に近づき肩辺りに軽くグーパンチをする。



「勝負はお預けだね」
「あぁ」




「娘、やるなー!」

「ありがとう」


暉沾が去っていくと雷剛の隊にいた人々が集まってきていた事に気づく。前線を超えいつの間にか敵陣近くまで来ていたらしい。

すると、目の前に雷剛が現れた。



「晋、良い戦いぶりだった。


あそこまでの突破口を切り開けるなんてな。………だが、油断するなよ」


と雷剛は腕の傷をさす。



「厳しいなぁ雷剛さん。


……でも、えぇ。肝に銘じます」



晋が微笑むと堅物そうな雷剛も笑った…様な気がした。いや。笑った事にしておこう。

こうして、晋たちも一度城まで戻っていった。








「借りができた…
「借りは返しましたからね」


横を走る雷剛に晋はニヤッと笑い先に馬を走らせた




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