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「はふー……」




晋は顎先ぎりぎりまで暖かい湯に浸かり、息を吐き出すと共に肩が下がった様な気がする。



実は演習はまだ続いている。
城に戻ってきた私達は、一度湯に浸かり再び演習へと馬を走らせた。が、


私だけ一緒に風呂は入れず、更に置いてけぼり。




いやぁ。それにしても一緒に入ろうとした時の隆国さんの顔が忘れられないなぁ……






そんな驚愕のあまり面白すぎる顔をしていた隆国さんに風呂に入るのを止められて、えーー。とか小娘みたいに駄々こねしていたら騰様に声をかけられた。


「晋」
「騰さ………………………」

「次の演習は来るな」

「………………」



私も驚愕のあまり空いた口がふさがらなかった……
それは目の前の主人の格好


なんでこの人風呂に大きな輪っかみたいなの持ってるんだ(浮き輪)




いや。それよりも、だ。




この輪はなんだ?
流行っているのか?
流行っているのか??
何千年後から来た私ですら見たこともないこの輪(浮き輪)は中華では流行っているのか????なぜ誰も何も言わないの。こんなの邪魔でしょう!ってなんで誰も言わないの??雰囲気とその輪(浮き輪)の柄(桃色の水玉)が全く合っていませんが。となぜ誰も言わないの??それは私が言えないのと同じ理由ですか!そう、あまりにも自然に出てこられ過ぎて何処から指摘して良いか分からないと思っている。だがしかし、私は………………「何か言いたい事があるのか?」


「い、いえっっ!!何も!!!」


結局この人には言えないよーという威圧がある。


「そ、それよりも何故私は次の演習へ連れてってくださらないのですか?」



「ココココ、貴女は邪魔なんですよ」

「邪魔!?」

「ええ」



ええーーーーー。











というわけで、私は一人まったりと湯に浸かっています。


まぁ、騰様の言いたいコトは分かる。

要するに私が演習に参加しても軍を強化する為には意味がないということだ。



ま、他にもいろいろとあるんだと思うけど。今の私には分からない事なんだろうなぁ




それにしても、この中華でお風呂にありつけるとは思わなんだ……


しかもこの広さ。




最高ですな。








でも、

「寂しい………」






呟いた言葉は思ったより室内に響き、思わず苦笑い。




誰もいない…



この場にも、

この世にも。






そう、幸村様もくノ一さんも親父殿も家臣達も……死んだんだ。


戦に負けて、みんな死んだ。



みんな。みんな。みんな………







自然と手を強く握っていた。








でも、



私は、生きてる…………



私だけ


生きてる。





「……………」







置いていかないでよ………



一緒に連れて行ってよ。



寂しがり屋だって決めつけたのは誰よ



まだまだクソガキだなって言ったのは誰よ……




言葉に責任持てって言ったのは誰よ






愛してるって…
死なないって言ったのは………



「………、…ひっ………」










せめて最後にもう一度。



お願いもう一度…


抱きしめて………………





そうじゃないと……












恐いよ。












……助けてよ…ッ








ビシャッ!!!




「……ハァ……ハァ………」


ビシャッ!ビシャッ!!






切り替えるために思わず涙が出た顔にお湯を強く打ち付ける。



「…………………


……ッあ゛ァァァァァ……(重低音)」








………………泣いた。



これだけ泣いたなら、
ちゃんと受け止めれた……と思う。




「死んだ人は絶対戻ってこない」



だから、死んだ事は忘れない。
ちゃんと受け止めて、前に進みたい。





みんなを…


みんなが残してくれた私への愛を糧に




ちゃんと受け止めよう。






「ありがとう…」







感謝をして………



















「あれー……隆国さん??」


風呂から上がり、着替えを済ませた私は涼みがてら城の中を探索しようと湯屋の扉を開けると、壁に寄り掛かる部屋着の隆国がいた。


演習に行かれたと思ってたけど


「今やってる演習は、行かれなかったんですね」

「あぁ。騰様と録嗚未が指揮する事になっていたからな」


あ、そうだったのか。



「それよりも、腕は大丈夫か?」


そう言えば、先ほど隆国さんに斬りつける際に斬られたばかりだ



「こんなモノはかすり傷です」


私はニヤッと笑うと、それに反して
そうか…と隆国さんは、沈黙を作った。




「……それにしても、なぜ此処に??」


そう私が質問を投げると急に隆国さんはギクっ!?と子供が皿を割ってそれがバレてしまった時の様な顔をした。


「……………ッ」

「………??……………あ!覗きね!!

それならコソコソしなくても言ってくれれば見せる………

「んなわけあるか、馬鹿者!!」

…あ、すんません」



「……………ッ」


「?」


言葉に詰まっている隆国さんを見て、なんとなく次の言葉の予想が付いた。


お前は本当は何者だ……的な事かな。


私の今までの行動に今日の演習の成果。
もちろん、ここに来てから私を見張る視線を数々感じる。
日本のしかも今の中華から何千年も先から来た事なんて信じるわけがない。
そして、乱世では隠密活動なんて誰でもやってる。まだまだ、私が他国の隠密だという事の可能性は消す事はできない。


しかも、女だし………

こりゃあ、完全に信用してもらえるのはもっと先だなぁ………………


と、内心溜息を漏らして、なんて答えたら無難かなーと考えを巡らせていると、目の前の隆国さんは腕を広げていた。


「ん???」



「…晋………胸なら貸してやるぞ」

「んえ???」




目は合わせず、少し顔を赤くしている隆国さん。何を急にそんな事をしだしたのか見当がつかづ驚きのあまり私は固まってしまった。

もしかして……



「…………っ、…早くしろ!」


「…………きいてたの?」




私が泣いているのを



そう言うと、隆国さんは目を細め眉間に皺を寄せた顔をした。
申し訳なさそうだが、苦々しい顔だ。



「………………すまん。

聞くつもりは無かったのだが…」


「ふふっ!

それでは、お言葉に甘えて!!」


「[D:12436]っ!?」




私は思いっきり隆国さんの腰に抱き付いた。

すると溜息と同時に頭をポンポンと撫でてくれる感触があった










とても嬉しくて、

涙が出そうになった。
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