01




いつもの大きな手が頬を冷やす。

私はそれを強く、強く離れていかない様に掴み寄せた。




「覚悟は決めておりました」


ウソ。


そんなの、これっぽっちも
決まってない。


「晋は、大丈夫です……!」



無理やりつくる笑顔。


何が?

何が、大丈夫なの?



だって涙と震えが止まらないじゃない…………




「晋……ゴホッ!!



…生きろッ

そなたの、ミチを………








ダメだ。

ダメだ……ッ………………



言葉を理解する前に身体が動いた



「あああああああっ……!!」


「家康様っお逃げを!!」
「家康様っ!!!」


私は幸村様の愛刀を抜刀しすぐ近くにいる大将、家康公を見据え走り出した。

襲いかかってくる兵達は私の早さに着いてこれず私は一気に大将目前まで来た。


ガキィィン!




家康の首を取れる寸前。
目の前に黒装束の者が瞬間的に現れ刃でそれを阻止された。


見知った顔。
家康の直属の忍。


「…猿飛、佐助ッ!!!」

「…………晋。無駄な事をするな」
「無駄ではない!!幸村様の仇っっ!!」


解っている、押し勝てない事は……


「……私は貴様の力をかっている」


五月蝿い。


「我が主は、貴様を囲うつもりでいらっしゃる……」
「っ!?」


"生きろ。"

頭の痛みと共に声が響く……


「五月蝿いッ…」
「!?」



私も、今からそちらに向かいます。

「家康公!!!我が主の仇ッ!!!」


佐助の隙を見て刀を弾きその瞬間に家康の懐に入る。

ザシュッ………………



「…………無駄な事を…」




刀を振り上げた瞬間に佐助から背中を切りつけられ家康の目前に跪く形になった。

致命傷は免れたが、もう刀を持つ力も残っていない。


「……忍、晋よ。そなたの力を借りたい」


「!!!!」


頭上から聞こえた敵、家康公の声に頭を上げ驚いた。

そこには私が思っていた以上の器の大きな人物が目の前に立ち、それは仇の為に殺してはならない人物だと思い知らされた。

主を亡くした私には
討ってはいけない命だと手が止まった



悔しくて、下を向かざるおえない……





"そなたの道を…………"


幸村様の愛刀を掴んだ。

「家康公。…どうか、平和な世を…………」



私は、最後の力を振り絞り
丘の上にあった陣から身を投げ出した。


"生きろ"



頭の中でまた、声が聞こえた。

約束をやぶり、申し訳ございません。
晋もそちらに行かせていただきます




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