04




えー……と、
挨拶しろという事かな?


私は座ったまま体勢を変え、その方の方に体を向け頭を下げる。
一応ね。取り敢えずの命を救ってくれたわけだから。恩を仇で返すわけにはいかない……



「……晋と申します。お見受けしたところ貴方様がこちらの城の主様と思われますが…………え、ここどこ??」



床が……畳じゃない………
これ、何?

朦朧としていた意識が、頭を下げ目の前の床に違和感を感じ頭が回り始めてきた。
そして、思い出した事があって失礼とか忘れて勢いよく頭を上げる。すると目の前の方と目が合う。



やっぱり…………


「こちらは、どちらのクニですか?」


目の前の方の服装を見た事が全くない。
周りの装飾も……部屋の造りも…………


何?どこだ、ここは……
私はなんでこんな所にいるんだ……


誰か後ろで口を開けようとしたのを目の前の方が目で制した。すると私にまっすぐと目を合わせる


「……ンフフッ。そうきましたか!
これはおもしろそうな拾い物をしましたね、騰」

「ハ、興味深い娘です」

「???」


「私は王騎と言います。
…………晋。と言いましたね。

素敵なお名前ですが、私は晋と言う名の方にお会いした事がありません。それにその格好……不思議ですねぇ……

私からも一つ。

貴方は、秦という国も中華という言葉も知りませんか?」


「「「!!!?」」」


ちゅうか。しん。……中華、秦。
知っているが…………認めたくない。だって、その名は史書で見た物だったから。私の記憶だと何千年も前の…………



「その顔だと何か知っていますね」


部屋が静まり返っていた。
私の心臓の音が大きく聞こえる


「…………中華という国も秦という国の名前も私は書物でしか見た事がありません」


部屋が一瞬シンッと静まり返った


「私が存じている限りでは、中華は私のいた国から海を越えた所にあると聞いた事があります」

「と、殿!何の話をして…
「…貴女の祖国の名は?」

「 …………日の本の国。…日本と呼ぶ者もいます」


き、聞いた事がない…という言葉や、状況を飲み込めていない声が聞こえたが目の前の王騎様という方は静かに私をジッと見つめていた。




「なるほど」
「!」



私でも混乱しているが、それ以上にこの場が混乱しない為に敢えて時代を越えた事を言葉にしなかった。ーーーーが、今の王騎様の言葉にこの方が私のこの状況を理解した事が見えた。



「殿」


声が聞こえた方を見ると亜麻色の髪の御人が不思議な構え方をして何かを言おうとしていた。


「なんですか、騰」

この人は騰という名前なのか…?ん?それとも苗字??え、よくわからない!!

「晋に部屋をいただけますか?」
「!?」
「……………」
「な、なりません殿!
…っおい騰!!!こんな訳もわからねぇ娘を殿の城に置いておけるか!!」
「そ、そうです!!なりません!!!」

「殿」

「いいえ、なりません」

「っ!!?」


その言葉を発したのは、私だ。


「どういう事ですか、晋」


私は、家康公を殺さないと決めた時に死ぬ事を決めたんだ…
主人の仇も取れず、生きる糧も無く……

枯れてない涙が溢れてきた。


「……こんな血だらけの訳のわからない娘を此処に置く理由がありません。何が合ってからでは遅いと思います。

……私は、生きる目的を亡くし、命を捨てました。覚悟は、できています……」


「……………っ」




「晋」

私は一度涙を拭い、王騎様という方の声が部屋にリンと響いた。その声に顔を上げた。


「私がその命を拾いました。

……それをどうしようと私の勝手ですよ?」



"生きろ"


「……………っ!?」

王騎様の声と、急に頭の中に幸村様の声が重なって聞こえた。

「騰」
「はっ」
「晋に部屋を用意します。案内をお願いできますか?」
「はっ!」


私は呆然と、何処か遠くで会話が繰り広げているかの様に聞いていた。

ALICE+