なにが正しいなんて誰が決める
05
私は、まだ皆さんの信用も得ないまま騰さんという方のおかげで部屋をいただいた。
王騎様と騰さん以外は皆驚きのあまり静まるのに時間がかかったが、落ち着いた頃に解散となり今はいただいた部屋まで案内して貰っている。
幸村様を死なせた上に、中華に来て生きながらえてる……
何をしているんだろうか私は。
「浮かない顔だな」
「?」
前を歩いていた騰さんは立ち止まり後ろを振り向く。目があうとまるで心の奥まで見透かされている様な気がして、思わず目を反らす。
「心の整理がつかないだけです」
「そうではない」
間髪入れずに否定された。
カチン。
何を分かった様な……
「…………どういう事ですか?」
この人は何も知らない。
今私がどんな状況にいるのか……
知らないくせにっ。
拳をつくり強く強く握る。
今日会ったばかりの人が私の何を分かる。
「あんたに、何が分かる……
生きる希望を亡くした私の気持ちなんて、分からない…っ!!」
「………」
騰さんを睨み見上げていると、
涙が溢れた。死ぬ寸前の幸村様と冷たくなる体を抱き締めた事が蘇ってきたから……
悲しい…
悔しいっ!!
「…………」
「っえ!?ちょ、っな、何して」
急に抱き締められた。訳も分から無かったので手で押し返す様に抵抗をしても思ったより強く抱きしめられ安易に抜け出すことができなかった。
「やめ、て、離してっ!」
そんな抵抗も無意味ですぐに、手を掴まれる。
何なのこの人…………
「自分の意思はどこにある、晋」
「………何を話して…っ」
"そなたはどうする"
騰さんの言葉が幸村様のそれと被った。
それは、戦に出る前夜に幸村様が発した私に対する質問だった。その時は考えない様にしてた。
どうしたいのか。
自分の、意思…………………
「………………生きたい。」
ポツリと言葉がでた…
その言葉に自分自身が一番驚いた。 何を言ってるの私??
………もっと、生きたいの?
…………あぁ…そうか。
私は全て人の所為にして死のうとしていたんだ。
でも、生きたくなってしまったんだ。
「…いき、たい」
でも、幸村様を失ってこれからどう生きて良いか分からなかった………。怖かった。
だって、幸村様に付いて行く事が私の全てだと思ってたから。
でも、とても器の大きな殿がいる軍に命を拾われて何か楽しい事が起きるのでは無いかなと期待してる。
生きたいと思っている。
「……晋?」
「ごめ、なさい…」
何が、私の気持ちなんて分からない…だ。
私こそこの人の事何も知らない。
考えが浅すぎる……。
私は謝罪と共に相手の服を強く握った。
涙が止まらない……。
どういう経緯でこんな別の国の別の時代へ送る事が出来たのかは分からないけれど…
でも、自分の為に生きろと主人がしてくれた事のような気がしてきた……
温かい愛を感じた。