07







「ーー王騎様。遅くなってしまい申し訳ございません」
「ええ、かまいませんよォ」



先の騒ぎを聞きつけ、麟坊という紳士っぽい方が二人から解放してくれた。まぁ、最後は私がした事だけど…☆
今は王騎様の謁見の部屋に呼ばれ二人きりである。


今朝の事を何も聞かないのは、何があったか何となく予想が付いているんだろうなぁ……本当に凄いお方だ、この方は。


「少し込み入った話をしたくて、二人だけにしました」
「込み入った話……?」

「あなたの国の話です」
「国の…ですか」


王騎様は楽しそうにそう言うと、
いろんな質問をしてこられた。

その時の日本の将軍、戦、私が支えてた主
そして武器の話…………

彼らが何を思い、何を感じていたか




いろんな話をした。






「…………ありがとうございました、晋。
中華以外にも夢を掲げ戦う者達がいたんですね。


…………ンフフッ。ぜひ、対峙してみたいものです」


王騎様は終始どこか嬉しそうで、夢を追う子供の様なワクワクした目で話を聞いてくださった。

私が今まで支えてきた方々と全く同じ目だった。



「我が主も同じ事をお話ししたと思います。王騎様と同じ様な目をされていましたし、戦が好きでとても部下思いな、……」



私は目の前がぼやけた。
瞬きすると涙が溢れる。



「も、申し訳ございません…………」

「…………なぜ泣くのですか、晋」



私は涙を拭き、頭を深く下げた



「……主は、最愛の方でした」

「………………」



涙が数滴、床にしたった。


「そして、皆様に出会う直前…

私は目の前で主を亡くしました………」



再び涙が溢れる。


全てが鮮明に蘇る。
幸村様と交わした前夜の契り、対戦前に話した事、最後の笑顔、目の前で倒れていく姿、そして…


冷たくなった体を強く抱き締めた事。



「……危ない状況にいたのも分かっておりました……

だから、あんなに近くにいたのに…
間に合わなかった……っ……」

「………………」




ゆっくり体を起こした、
溢れた涙が頬を伝う。


「もし、生きておられたら


やっと、伴侶になってくださるとお話ししてくださっていたのです。」

「!」


「……本当に嬉しかった。

やっと夢見てた事が叶うと……


でも、主は全て分かっていたのかもしれません。

これが負け戦だという事を。そして、私達が打とうとした相手は殺してはならない相手だったと……」

「………」



王騎様をまっすぐ見つめた

「…………昨夜、騰さんに教えていただき主の愛刀の前で決めました。

…………もう、自分から命を投げ出しません。

生きろと、言われました。
そして、命を拾っていただき
私が、生きると決めました。


私の人生を過ごします」


もう涙は出なかった。
体勢を直し、跪く。


「……王騎様。

まだこんな小娘に信は得ないと存じ上げます。が、ぜひ使える様であればここに置かせていただきたく思います。

祖国では、主に隠密をやっておりました。暗躍に動く事は得意で、足は早い方です。馬なんかよりは早く走れます。
大軍を指揮した事はありませんが15の時から戦の経験もあります。

殿のお人柄に感服いたしました。ぜひこちらに置いていただきたく願います」

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