Donquixote・Rocinante











トントントン



指先で軽く突かれている
こんな呼び方をするのは喋れない彼しかいない。




だから、私は振り向きもせずそのまま歩き続ける

でも、身長も高く足も長い彼と距離を取るのはとても困難。
いくら引き離そうとしてもすぐに追いついてしまう。だから彼は私の前に立ち憚った。


私の眉間に皺がよる。
自然と彼を睨みつけた



「何度言っても無駄。コラソンとは話したくない」



『きけよ』
そう書いてある一枚の紙を私に突きつけてくる。


「いやよ」


『きけよ』
焦った顔をしたコラソンがこれでもかと再び同じ紙を突きつけてきた。が、私は胸の前で腕を組み溜息を吐く。



「何を聞く必要があるのよ」


その言葉にコラソンは悲しい目をして腕を下げた。



「私が何を言っても貴方はローと一緒に海に出る。そう、決めたんでしょう??

私も貴方と同じ。
何を言われようと一緒には出て行くつもりはない」


そう言い切った私は目の前で立つ彼の横を通り過ぎるために歩みを進めたが、手を掴まれ引き止められそのまま


きつくきつく抱き締められた。



「ッ、離して!」

「………迎えに行く、絶対だ」

「!!!」


耳元に寄せられたそれは、
小さな小さな声。掠れた声。


彼の声……




「コラソン……喋れッ」


涙を止めずに私は言葉を遮られる様に彼にキスをされた。






はじまりのキス
by Corazon

彼らにとっては約束と誓いのキス















結局迎えに行ったのは私の方。


「ドフィ、コラソンは?」
「………かたしとけ…」







顔を横に背け過ぎ去った彼に表情はなかった。胸騒ぎ。それを振り切り真っ白に積もる雪の中を進むと見覚えのある服が雪の中に見えて、それは横たわっている事が確認できた。



そう。久々に会った彼は何もかも冷たくなっていて、もちろん雪のせいだけじゃない。

赤い血が真っ白な雪にとても綺麗に映えていた。





やはり一緒にいくべきだったのかもしれない。私は選択を間違えたのかもしれない。また仕事を優先してしまったのかもしれない。大切なモノを見失っているのかもしれない。後悔が押し寄せてくる。私はー…






「ロシ…ッッ」


声を殺して泣き崩れた。
とめどなく涙が溢れる。

たった一言の愛の言葉さえ伝えられないのか

ALICE+