Une petite pause.
忙しい毎日を過ごされていて、
だから毎日会えるわけではななくて。
時には、一人の時間を作りにこもり切ってしまう。
今回も一向に帰ってこられない旦那様にお茶を持っていく事にした八城は、茶器を用意して貰い昌平君が籠る部屋に向かう。
侍女に茶器を持ってもらい、扉を叩き名を名乗ると
扉が少し開いたので中を確認する。もちろん他の方もいる事もあるし、大事な話をされている時もあるからだ。
すると腕が伸び部屋の中に引きずりこまれた。
驚ろく間もなく、抱き留められ
そのまま昌平君に上を向かされ口付けをされる。
事情を何となく察した八城は、
茶器を持たせた侍女らには申し訳ないが、後ろ手に扉を閉めると、彼のキスを受け入れる事にした。
「んっ…ふ……ん…ッ」
何度も角度を変え、息がし辛くなるのと同時に徐々に壁に追いやられていく。
背中が壁にぶつかったところで一度口が離れる。
「…ハァ、… 八城…」
艶っぽい声、漏れる吐息
それだけで胸がいっぱいなのだが
誰にも見せない弱々しげな姿が可愛いと思うのは私の心に留めておく事にした。
お伝えしたら拗ねてしまいそうですしね。
「何か用があったか?」
用があるのは貴方でしょう。と言いたくなる気持ちをグッと抑えているのは、彼がギュッと強く抱き締めてくるからで。やっぱり可愛いい
「旦那様の様子を見に来たんですよ。
一緒に一休みさせていただこうと思いまして」
子供をあやすかの様に背中を撫でながらゆっくり抱きしめる。根気貯めるのは旦那様の癖ですね。と嫌味っぽく言うと顔が上がった。
「無自覚なのだから、しょうがない話だ」
「あら、自分で言われますか」
冗談が言えるのであれば元気ですね。と
チラッと見えて気になった胸元の着崩れを直してあげる。よく見ると無精髭もそのままだったので、頬に手を添えるとその手を掴まれて掌に口付けをされる。
「!」
驚いて固る八城に昌平君は、
フッと笑みを見せる。
「相変わらず、
予期しない行動を取られると、顔を赤くするのが癖なんだな」
「…仕返しにしては悪質ですね」
言い方まで真似するなんて…
「そう言う性分だ」
「!」
と軽々と八城を横抱きにして抱き上げ、部屋の奥へ連れて行こうとするので、八城は驚いて彼の首に腕をまわす。
「どこに連れて行くのですか?」
その言葉を言い終わるか終わらないかの所で下されたのは部屋の奥にあった長椅子。
そして隣に座る旦那様は、私を見つめそのままゆっくり後ろに押し倒される。
「だ、旦那様?
何をなさるおつもりですか??」
「決まっているだろう」
「……ッん、」
昌平君は変わらず真顔のままだが、
首元に顔が寄せられると柔らかく温かいモノがリップ音と共に肌に感じるのが分かったのだから、焦らずにはいられない。
「こんなところでは、ダメですよ」
「…なぜだ?
まあ、しかし。誰も入ってくることはできないだろうな」
その声色は全く嫌がっている様には聞こえず、昌平君は口元だけ笑うと八城の胸の前の着物の合わせを開いていく。
「…しょうがない方ですね」
そう言う八城の顔をチラッと見ると、笑ってはいるが顔は真っ赤で昌平君の着物を掴む手は強く握られていた。
強がりな奥様に、
昌平君は見えないところで笑った。
- Une petite pause -
少しだけ一休みしましょう
だって、貴方に会いたいですもの
「先生。茶をお待ちしました…って!!」
昌平君が八城の首筋にキスをしてる最中に開けられた扉には蒙毅が立っており、それを見た蒙毅は慌てて茶をこぼしていた。
昌平君は眉間に皺を寄せるが、胸を押され八城により無理やり身体を起こされる。同時に自分もはだけだところを直しながら上半身を起こす。
「蒙毅様!お久しぶりですね」
ニコニコ笑って挨拶する八城とは、打って変わって自分がこの部屋を出て行く時よりも機嫌が悪そうな昌平君を見て蒙毅は逃げる様に部屋を飛び出した。
「お久しぶりです八城様!では、
私はこれで。茶を入れ直してきますね」
蒙毅はちゃんと引き際を分かっている為さっさと部屋から出ると、そこにいる突然扉前で茶を持たせた介億を睨みつけた。なんで急に持たせたかと思ったらそう言う事だったのだ。
勉強になっただろう?と言われるが蒙毅の顔は怒りながら真っ赤に染まっていた。
その様子がチラチラ見えるので楽しそうに見つめる八城に昌平君は頬に口付けをする
「日が落ちてから続きをしよう」
耳元で話すその声。
「…あら、今日は甘えん坊なんですね」
と柔らかく笑う八城に
どちらともなく、優しくキスをした。
おわり
ALICE+