早起きは三文の得




「ごめーん、ちょっと通してっ」


晋は至極急いでいた。
明日の演習の事で、隆国と干央と朝から打ち合わせの約束だった。

だが起きたのは、数分前
起きた瞬間に自分が女だという事を後悔した。なんといってもしなきゃならない支度がたくさんある。
だから部屋を出た頃にはもう約束の時間の本当手前だった。


「あ、おはようございます晋さ…」
「おはよー!」
「おぉ!晋。今日は忙しねーなァ!!」
「おはよー!」


ひとりひとりに面と向かって目を合わせて挨拶している余裕は晋にはなかった。いつもの足の速さも寝起きとあっては全く作動しない。


「晋さん!」
「おはよー!」
「いやっ!気をつけてください!」
「??」


不可解な事を言われたがなんの話かおもいつかなかったのでもう目前にある目的の場所の扉を開いた。


「おぉ、晋!お前が遅刻なぞ珍しいなぁ!!」
「お、おはようございますっ干央さん、隆国さ………っ」
「…………」



めっちゃ怒ってらっしゃる…………!!
隆国さんは後ろに禍々しいほどのオーラを放って晋を見ていた。さすが、数分といえど細かい方ですね。


「寝坊してしまいましたっ!す、すみませーんっ!!!」
「…………」

そんなに静かにお茶を啜らないでください…


「がはははっ!まぁ良いじゃないか隆国!!女性は支度に時間がかかると言う…ん?」
「?」
「?どうした干央…

「ンフフッ。朝から騒がしいですね、晋」
「王騎様!」
「殿!」
「殿!おはようございます」


干央の言葉の途中で、
晋の肩に手を起き後ろから王騎が現れた。


「皆、慌ててる貴女を見て驚いていましたよ。それに、それは………」


王騎は晋の服装を見て、何処か見覚えのある彼女からしたら相当大きめの上から羽織っている服を見つめる。


「殿も気づかれましたか」

干央は苦笑いだが、隣の隆国はなんの話をしているのかまだ気づかないでいた。

そして本人はというと、王騎を見たまま固まっていた。
いつもよりどこか動きづらいと思っていた。誰かが気をつけて!と言っていた気がする。そりゃあそーだ…長すぎた裾を引きずり肩幅も腕の長さも違うから袖がダラんと長い。


「あー。それは騰様のでしたか!と、いう事は…

「いや!これは違うんです!!

急いで着るものを探していて目の前にあったので間違えてって、あーー……」


隆国の言葉に言い訳を取り繕うつもりが、全く上手くいかず結局自分で墓穴を掘ってしまい晋は顔を真っ赤にしてしゃがみ込み縮こまる。穴があるのならいますぐ入りたい。

周りでは王騎様が何故か嬉しそうに本当おバカですね。ココココ!と笑い、干央さんは面白いモノを見たと豪快に笑い、隆国さんは顔を赤くしてまたお茶を啜っていた。


別に隠す必要も無いと思うのだけど、でも知られると恥ずかしい………


それから、演習の打合せではなく別の話で持ちきりになったとか。

そのあと部屋に騰が現れて大変なことになったとか…………




おわれ。


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