知らない顔






一通りの事をした後、寝台の上では白湯を飲む騰の隣に掛け布団をかけながら横になる晋がその横顔をジッと見つめていた。





「………どうした、晋」



一度頭上にかきあげたられた亜麻色の髪ははらりと横顔に落ちる。騰は腰から下を晋と同じ掛け布団をかけ片膝を立て上げていた。そこの膝に手を置き体を起こす。

肩までかけていた布団はハラリと落ち情事後のままの身体が現れ、そのまま騰の腕にすり寄る。
そしてその綺麗に整えられた亜麻色の髪を耳にかけ騰の耳に顔を近づけた


「?」

「とう、さま。」

「っ!?」



耳の中に息を吹きかけるように囁くと身体をビクッとさせるのが晋にはわかったので笑みを深めた。


「……ッ……」

「左耳が…弱い事……思い出しました………」



「………なんで、……ッ」


吐息交じりにリップ音もわざと立て太い首に腕を回し離れていかない様にすると、いつもとは違う騰の弱った声と顔が歪むのを見れて優越感に浸る。でも実はこれだけじゃあ無い……


「私を誰だとお思いですか?知ったんです。ちなみに、ここが弱い事も知っています」


そう変わらず耳元で囁きながらつつつッと厚くてガッチリした胸板に指を這わしていき頂きを思いっきり摘んだ。その時とても顔を歪めたのを見て晋は満足げに口角を上げる。楽しくてしょうがない。


少しだけ息が上がる騰がいつもよりも色っぽくてキスをしようと顔を覗き込むと



「…… 晋…」

「!」

その声にビクッと身体を強張らせた。なぜなら騰のその声がいつもより厳しく、怒らせたと分かったからだ。




「…誰からだ」

「知ったんです」


首を傾げ困った顔を見せる。
大抵の男はこれで通用する。が、目の前の人は晋であろうとそう甘くはない。真剣な目でまっすぐ見つめられている。



「誰からだ」


晋は根負けして思わず目線を逸らす。
やっぱり彼には嘘とか隠し事が難しい。




「…………王騎、様……」






二人の間に沈黙…いや、

何かこう気まづい雰囲気が流れる。



「………………」





この雰囲気を破ったのは晋。


「き、聞いてください騰様!
私の育った国でも男色は当たり前でしたし、実は何度か目の当たりにした事もありました。そ、それに王騎様はとっても魅力的な方ですしその様に至るのは仕方ない事かなと思いま……騰様?」

「殿と……なぜその話になった」


騰には珍しく長い溜息と共に頭を抑える。その顔は怒ってはいるが、少しだけ動揺しているのが見える。


「……………………………」


晋はそれを話す事が出来なかった。
なぜならーーーー







ええ。…あの時の騰はとても積極的でしたね……


私が感じる処を探すのにいっぱいいっぱいになっている青臭さが、また…ねぇ。


だから私の方が先に騰の弱い処を見つけてやりましたよ、コココココッ






「晋もまだまだですねぇ…
騰にヒィヒィ言っていたら身が持ちませんよォ?」


そう言って騰様との甘苦い思い出を酒を交わしながら楽しそうに話す王騎様に、少なからず嫉妬していたのも事実だが

笑っている王騎様が印象的で魅力的で益々尊敬したのも覚えている。

 




ーーー今は亡き王騎との大切な思い出
そう、やすやすと話したくはない。


と。ただの晋のエゴ。








「言いません」

ニンマリ悪戯めいた顔を騰に向けると、
騰は目を細めて睨みつけた。



「いくら騰様でも、王騎様と私の思い出に土足で入ってきてはなりません」





プイッとわざと怒ったように顔を背けながら、そのまま寝台から降りようとする。






「………プッ。それにしても……ふふッ」

「…………………」



騰に背中を向けながら晋は肩を震わせて笑いを堪える様に笑っていた。

晋の言いたい事がその笑いで伝わってきた騰は更に睨む様に目を細める。



「騰様も王騎様の前ではやっぱり………ふふッ…」

「………何が言いたいんだ?」



白い小さな背中越しでも笑っているのが分かるほど背中を揺らしている晋に、諦めた様に溜息を騰はついた。
すると、笑ったままの顔がこちらを向き寝台を降りようとした身体を戻して騰の隣に戻ると肩に頭を預ける様にピトッと身体を擦り寄せる。




「そんな騰様可愛いだろうなーって」

「………………」


嬉しそうな顔を見せる晋。


「だって。王騎様の下で顔を赤らめて、更に恥ずかしそうにされてる騰様………ッ可愛い!!」


「…………………」


「悶えて、自分から腰振っちゃって…!!」


「…………………」



興奮が収まらない晋には、騰がどんな顔をしているかは見えていないが、それもまた面白くて顔のニヤニヤが止まらないでいた。





「私もそんな騰様の可愛い姿見れませんか?」




騰の顔を自分に向ける様に頬に手を沿わせてから、首に腕を回すと同時にゆっくりと唇を合わせる。

その時の顔ほど可愛いからは程遠くて一層笑みを濃くした晋だった。








The face which has no seen things











騰から寝台を背中にして、押し倒され
何故か両手を拘束される。


「言っておくが、」


「………?」


「弱い処を解っているのは晋だけではないからな」


今度は騰が薄く笑う。
目はどこか笑っていない。






あら。ちょっと怒らせたみたい。


「……ですよねー………んッ」



無理やり顎を掴まれてさっきまでされなかったキスをお見舞いされる。




このあとは、
朝までめちゃめちゃシた。




おわり。

ALICE+