2 先生と生徒
「何それ。騰先生おもしろいね」
「…これで何回目だと思う?もう、笑えない……」
晋が生徒として通うここキングダム学園は7つの校舎に分かれ1つの校舎を3つの学年に分けて運営されている。ちなみに晋は20代の青年達が集まる真ん中の学年になる。
晋は同じクラスの蒙恬を尻目に自分の机に乗せた鞄に顔を突っ伏す。
実は騰からの被害は今に始まった事では無かった。
帰りの校門前の待ち伏せ、それを拒否ると次は夜道のストーキング。帰ると隆国とリビングにいる。最終的には部屋のベットで雑誌を読んでいる。正直この人のスペックの高さが怖い。
ただ、騰さんに本物の恐怖まで感じないのは王騎さんの繋がりで昔からの知り合いであり仲良くして貰っていたから。
「それで、その後はどうなったの?」
突っ伏している頭上から蒙恬の声が聞こえるが、その声が興味津々にニヤニヤ笑っているのがわかる。話の続きをと顔を上げやっぱり笑っている蒙恬を横目に頬杖をつきながら更に溜息をつく。
「それでさぁ、………
録嗚未が部屋に騰を連れてきたのはそのすぐ後だった。テーブルを挟むように座ると、騰は目の前にある酒を飲み眉間に皺を寄せてから不味いと言い捨て録嗚未に返していた。
それを見て誰もツッコミを入れるまでの気力を持ち合わせていなかった。
「騰先生……以前おつたえしました。
そしてキッパリ断りました。私は貴方を好きになる事はないので、もうやめてくださいって!」
晋は目の前に座る騰に向かって真っ直ぐ相手を睨み言い放った。それをとなりで見ていた隆国は、自分よりも背も高く何を考えているか表情が読めない騰に向かってここまで言い切れる妹に強くなったなぁと思わず目頭が熱くなり目を押さえた。
「………………」
「………………ッ」
晋は騰の言葉を待つが、
本人は目をパチパチさせていた。
「……………」
「……………」
「……………」
「…………おい。なんか喋れよ」
「…………」
なかなか喋り出さない騰に隣の録嗚未が話しかけるが、それでも反応がないので痺れを切らした晋が話し出した。
「………〜〜ッ……わ、私好きな人できたの!」
「!!」
すると、急に晋の両頬を片手で掴まれ首だけ横を向かされた。あ、フラグを立てる場所を間違えたと掴んできた人の顔を見た時思った晋だった。
「………ま、まっへ、おにいはん……!」
隆国は自分の方に向かせニッコリと微笑む。
「誰か教えなさい晋」
その言葉と共にさらに力が強まり、このままでは顎が砕けると思った(嘘)
このいっさい心から笑っていないが嬉しそうに微笑んでいる隆国お兄様は、この笑顔がどんだけのトラウマを生み出しているか分かっているのか。いや、この人はきっと意図的に分かっているぞ。と晋は心の中で泣いた。
「も、もうへん…くん……」
「!?」
「!」
「蒙恬て…あぁ、蒙武んところの倅か」
隆国お兄さんの顔を見れなくなった晋は録嗚未の言葉に小さく小さく頷いた。
ーーッガタ!
「!?」
「……あ?騰何処行くんだよ」
突然騰はその場を立ち上がる。
「蒙家に用事ができた」
「蒙家にって、ちょ、ちょっと待っ…………
晋の止める言葉が発せられる前にリビングのドアが閉められ、そして騰がこの家を出た音が聞こえた。
ーーー………なるほどねー。それで、あんな時間に騰先生が家に来たわけね」
「大変だったんだね晋」
「蒙恬さん、巻き込んでごめんね」
晋が話している途中から隣の席に陽が座り話に加わっていた。
そして陽が口を開く
「でもさ、前々から思ってたけど……
晋は騰先生の事好きなんでしょ?」
「それはない」
「俺もそう思うよ」
「……それはない」
へー。と意味ありげに晋を見つめた。が、晋の目がとても真剣な眼差しでそれを訴えているのでそれ以上突っ込まないでおこうと二人は思った。
すると廊下の外で数人の女性徒の楽しそうな声が聞こえる。それに自然と三人は首が向いた。
そこには女生徒に囲まれて話している騰先生ーー……
「だから、嫌なの……」
消え入る様に呟いたその言葉と共に廊下の人々に晋は睨みを効かせた。
蒙恬と陽はお互い目を合わせると肩を竦めて聞こえない様に溜息をつく。
「(よく言うよ)」
そう二人は思う。
廊下側にある晋の机。騰先生は自分達の学年の先生ではないのでクラスには入っては来ないが、どんな先生でも廊下は通る。騰だって例外ではない。
どう見たって廊下を見つめる晋の姿は物悲しそうに写っていた。
素直になれば楽なのに、この娘は先生の事に関してだけは人の意見を聞き入れようとしない。まぁそれを見てるのも楽しみの1つではあるけどね。と密かに二人の攻防を楽しんでいる。
「じゃあ、貸し1つって事で今度デートしてね晋!」
「あ、えっ、!?」
「そりゃあそうでしょう。昨日は親父殿からの説教と誤解を解くの大変だったんだからさ」
「誤解って?」
陽は、蒙恬に顔を向ける
「女遊びが激しいから勘違いされるんだ。ってさ。そんな遊んでないのにね?」
と話しながら蒙恬は廊下の女の子に手を振る。それだと思うよ。という言葉を苦笑いしながら二人は飲み込んだ。
女子学生と先生 承
「陽ちゃーん、帰ろー
廊下から教室にひょこっと顔を出したのは隣のクラスの向。
「あれ?向ちゃん大王様は?」
「え、えぇ!?な、なななんで?!」
大王の話になるとテンパって可愛い。陽と向は同じ部活をしている。
「あれ。私も二人はそういう関係だと思ってたよ。違うの?」
「それがねー、晋…
「ちょ、陽ちゃん!」
「おー、信ーッ王賁ーッ」
「え、信様!?」
あ、ちなみに陽は隣のクラスの信が憧れの人らしい。
ちなみに、蒙恬は信と王賁と同じ野球部。
「おー蒙恬!部活行くぞー…て、地味宮女!政ならさっき昌文君のおっさんのところに一人で資料届けに行ったぞ」
「信くんまで……」
「晋行くぞ。遅刻する」
すると廊下の窓からキョウカイが顔を出す。晋とキョウカイは同じ新体操部。
「え、あれ、やば。もうそんな時間!?
禍燐先生に怒られる!!!行こうキョウカイ!!」
「だから言っているだろう」
新体操部は秦校にはないので、学校終わりにわざわざ楚校まで行ってチョー怖い禍燐先生に教えてもらっている。
「あ、晋ー!
来週楚校と試合だから偵察ヨロシク」
「はーい!」
「あと、デート忘れないでね」
「…はーい……」
本当の本当は好きなのに、好意をぶつけられどうしていいかわからずそれが、拒否の反応を起こしてしまっていた。
実はながーい片思いをしているのは晋
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