もしも...




摎が生きていたら。






つい先々日。王騎軍・摎軍の連合軍で魏に攻め入り、見事に重要拠点となる大きな城と、周りの小城を奪う事に成功し勝利となった。


凄まじい破壊力を見せた両軍は、ついでに大将首までとるという勢い。



今日は功績を讃えてろんこーろんしょー?なるものが王都の咸陽で行われる


…らしい………。



残念ながら私は参加できない。
魏軍残党を潰して行く様に騰様に言われたから…ざんねーん。


だから私だけいま帰ってきたところ。

あとで騰様から美味い酒と甘い物だな…と決めて報告を先にしなければならないと思いそのままの格好で本人がいるであろう部屋、王騎様の謁見の部屋に向かった。



「…騰様。晋いま戻りまし…


ガシッ!!

「っ!?き、摎様!??」


部屋の扉を開けると、目の前に摎様がいて、王騎様、騰様、軍長達、摎様の側近達(名前が分からない)がいてすでに宴会を始めていた。


そして、入った瞬間に摎様によって肩を組まれる。私は何が起きたか理解できずにフリーズした。


「とーう!!私に晋ちょーだい!!!」
「ならん」
「……な、なんの話!?」


摎様と騰様が対峙している。なんだ、カオスか!!!



「やだやだ!!録嗚未はいらないから晋が欲しい!!!」
「私も録嗚未はいらん」
「いや、何の話だよ!!!」
「いや!何の話ですか!!?」


「何の話って、決まってるじゃない!晋を引き抜こうとする話よ?


…ですよね、王騎様」

「まぁまぁ、困りましたねェ摎は……」


コココココッと王騎様は高らかに笑い、摎様は不敵な笑みを騰様に向けていた。


「フフフ、晋。恋人と別れるのは寂しいと思うけど、私の方がもっと楽しませてあげられるわよ?」



ドキッ……



「………摎様なら、良いかも…」
「でしょ?」

「いやいやいや。何ときめいてるんだよ」



摎は晋の顎に手を添えて自分の方に向かせる。それに魅入ってしまう晋に、麟坊がツッコミを入れる。


「それに、騰様は私をろんこんろーしょうとか言うやつに連れてってくれなかったからなー」
「む。」
「晋。論功行賞な」


すると、晋の隣の摎様とは逆側に別の人物が立った。



「殿。それならば私も晋を側近に欲しいのですが」
「隆国さん!?」
「なんだと、隆国!!」
「まさかのダークホース!!」

「まさか隆国……お前も晋と…「違います」

「…………」

「そんなキッパリ言われると私が悲しいのだけれど……」


「晋は状況把握に長け、足も速く、情報収集も迅速で、人を見抜き尚且つ的確に任務をこなします。人を率いるのはまだまだですが、単独でも任せれるぐらいの腕があります」

「お。隆国さんに褒められた」

「今回の戦も良い働きしてたわよね。だから欲しいーのー」

「そうだな。

唯一の弱点は騰様ぐらいか……」

「…ん?」

「ちょっと!干央さん!!恥ずかしいから止めて!!!」




「晋」


その唯一の弱点の騰が口を開き、部屋が静まる。


「私の元から離れるのか?」




……………


ドキューンッッッ!!


「い、いえ、いえ!離れるつもりなど毛頭も…」


そう言うと晋は下を向き顔を赤くさせていた。その隣で悔しがる摎。

「ずるいわよ、騰っ!!!」



「なんなんだ、これは」
「やってられっか。見せつけやがって」


パンパンッ


乾いた音が響き、皆そちらを向くと王騎様が手を叩き此方を向かせる。


「あなた達は……。
それなら、摎。今度の演習で貴女の軍も参加しなさい。騰が将をやる私の軍と貴女の軍で戦をしますので、そこで決着をつけなさい。

ンフフッ…良いですね?」


「ハッ。とても良い案です」
「さすが王騎様!」


二人の将はまだまだ火花を散らせている


「殿!それは名案です!!」
「相手に不足がねーな」

軍長達は違う意味で盛り上がる



「晋は私と観戦ですよォ?コココココ」
「は、はい…」


な、なんか疲れた……
ここに一人だけ盛り下がる女の子。





事の発端は王騎の一言。
そして、実は軍事演習を二人の将に本気でやらせたい為の口実作り。



全て王騎の掌の上で転がされていた事に気付いたのは一緒に観戦した晋だけだった。




おわり。


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