05.5 初夜の話




部屋へ案内していただいた後に、自分の唯一の持ちモノを持ってきて貰えることができた。

私の双刀と幸村様の形見の愛刀。

これしか持ってきてないのかと私は受け取りながら苦笑いをした。


「大切な刀なんです。錆びさせたくないので血を綺麗に拭かせてください」


得体の知れない娘の剣という事で取り上げられていた。


「ありがとうございます」


それを見て思わず涙が出てきた。


「…………泣いているのか?」
「泣いていません。」



何度も泣いてる姿を見られているので強がりたいだけ。でも様々な思い出が蘇るせいでなかなか止まらない涙。
自分がまだ戦も出れぬくらいの小さい頃から、稽古をしてる時、初陣の時、初めて彼を好きになってしまった時…


思い知らされた。
もう、あの方の温もりがないのだと…



気持ちを変えるために、涙を拭った。


刀の血を拭き取ろうと布を持った時、ふと気付く事があった



「…今夜だけ刀を預かりたいのですが…………」



顔を上げた時には目の前に騰さんの姿が無かった。

「私はここにいる」


声が聞こえた方向を見ると
近くでは無いが私の横にあった寝台?で縦肘をつきながら横になり私を見ていた。


「……………あの、……」
「………どうした晋、泣き止んだのか?」
「………………」



中華は男女の同室を何とも思わないのかしら。それとも…



「………私、男ではないですよ?」
「なんの話だ?」


騰さんは眉間に皺を寄せ、不可思議な事を言う奴だと言わんばかりの顔をされていた。

私がおかしいのかな。


完全に向こうのペースなのは良いとして、刀を返して貰っているのだから夜通し見守られてても、しょうがないかと頭の隅で思いながら鞘を抜き拭き始める


「…………そう言えば…」
「…………」

「…………………」


疑問があり後ろを向くと、寝台の上で完全に横になっている方がいた。寝息が聞こえる…


寝てる………


不思議な人だなと溜息と共に張っていた緊張がスッと取れて、私はここにきて初めての笑みを見せていた。












それから、朝がきて

知らない男性に抱きしめられながら寝てる事に驚き抜刀し、押さえつけられてから騰さんと気づくまであと少し。

そして、
録嗚未さんに説教を言われるまで、あと何時…………







おわります。笑

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