人生とは戦いとは




男達の雄叫びが広がる


「録嗚未さん!!待って、!!!」
「あ?!何言っ………っ!!?」


気づくと私達、録嗚未軍、干央軍と私が引き連れた千騎ほどが敵軍に囲まれていた。

敵本陣……ではない。



やられた。


後ろに回り込まれていた。
逃げ場が見つからない。




「チッ!!!」

近くにいた録嗚未さんが大きく舌を打ったのが聞こえた。少し離れた所に干央さんが見え、同じくこの状況に気づく。王騎様が残したこの軍は一人一人に武の力はあるが……ありはするが、数は圧倒的な不利。


そして時間の問題と消耗戦…

どれくらいもつか………っ


「干央!!!こりゃあ持久戦だな!?」
「?……あぁ!そうだな。」
「てめぇら。……死ぬんじゃねーぞ!!」


ウォオオオオオ!!

この状況に気づき始めた者達にも録嗚未さんの檄が伝わり再起していった。



……………っ!!!


まって……まずい…………っ


ガチンッ!!

「言ったそばから、何ボーッとして…
「録嗚未さん!!!敵本陣、主要の軍が本陣に向かっている………あっちは、一万も…っ

…このままだと騰様が…っ




ゴンッ!!


「いだいっ!?」
「…泣きそうな顔すんじゃねぇ。ここ抜けて早く行きゃあ良いだけの話だろ!!」
「…………っ!」


晋は眉間に皺を寄せ冷や汗を一筋流した。

目の前に敵が立ちはだかる。
録嗚未のその言葉を聞いても気が気ではなかった。

どうしても脳裏に自分が間に合わなかったあの時のきおくが残っているからだ。



真田幸村をギリギリで救えなかったあの時…………




一瞬の身震いが背中を襲う。


失う…
失ってしまう……
ダメだ。
いやだ。



また同じ事の繰り返し?


いやだいやだいやだいやだいやだ……っ!!



「おい。てめぇ!良い加減に!!

…………もう、大丈夫だな。

おら!踏ん張るぞ!!」

「うん」



























「晋」
「……………」
「晋」
「…………………」
「いつまでそうしている」




晋は騰の背中に抱きつき顔を埋めていた



戦をしているから、死ぬのは仕方のない事なのかもしれない……

殺し合いをしているのだ。
遅かれ、早かれ末路はくる。



でも

愛している人はもう二度と失いたくないと願ってしまう。

これは私が女だから?


それとも、愛している人だから?




「……………」
「晋、良い加減にしろ。騰様が休めないだろ。お前も相当な怪我なのだから……」


「……………」


「晋っ!!」


それでも晋は騰の背中から離れようとしなかった。
隣で隆国が溜息をついた。

当の本人は、さほど気にも止めてないのかそのままの状態で水を飲んでいる。


騰軍は無事、この危機的状況を乗り越え
最も危険な状態にいた干央、録嗚未、晋達も体はボロボロなものの生還でき、本陣に加勢する事ができた。


が、決着はついていない。
明日もまだ不利な大戦を行う…






「……騰様………」

天蓋に入る寸前で、晋は手を緩め体を離した。それに気付いた騰は足を止め晋の方を振り向く。

すると晋は笑みをみせながらポツリポツリと話し出した。




「…………うん。もう大丈夫」

「?」


「忘れてた。

私達がいつでも死と隣り合わせであって、毎日がどれだけ大事な物かを…

学んだ筈なのに、忘れてた」



そう言いながら、晋は騰の正面から肩に手を置き首に抱きつく様に引き寄せる


「明日どんな事があろうと

もう、悔いはない」



自然と涙が頬を伝う。
すると抱き返してくる感触があり、そのまま持ちあげられた。


「ん!?」
「……晋……」
「?」


騰は自分の頭よりも上に持ち上げだ晋を見上げる様に見た。



「私は死なぬ」




「…………うん」


晋は、騰の目に強い光を見た。
涙を拭う。

すると、騰から溜息が聞こえた。



「……まだ、分からせなければならない事がある様だな晋は…」
「??どういう……え!?」


そう言うと騰は、晋を抱き上げたまま天蓋に足を進めた。


「ちょ、ちょ、ちょっとー!!!
ダメでしょう!!皆んな見てるよ!!!」



ココココッ!



周りにいた者達は、騰の天蓋に消えていく二人の姿を凝視する事しかできなかった。




次の日の朝。




対戦前にドヤされ顔を真っ赤にする晋と、とばっちりを受ける録嗚未がいたとか




おわる




○おまけ○


「騰様」
「……隆国か」

「待ってくれる者がいると言うのは、良きことですね」
「………………

……晋のことか?」
「ええ」
「…………」



"
「皆んな、無事!?隆国さんは!?」
「晋、落ち着け。お前の方が相当なケガ…
「隆国さん生きてる?良かった。騰様は?」
「あ、あちらだが…」

「騰様!」


「………無事だったのか、晋」
「もちろん!


"騰様を護るのは私ですから"






「………あれは、良い女ですね。」
「……やらんぞ、隆国」








○あとがきを少々…○

完全な悲しい話をかけない椿です。
がんばれー笑

軍長以外の人たちは、騰と主人公の関係を疑っている。という感じです。


「私は死なぬ」

の言葉は、主人公だけじゃなくわざと全員に聞こえる様に話しています。


過信ではなく
確固たる自信です。


そういう器の人物かな。と
そんな方に愛される主人公です。


ちなみに、うちの騰様は主人公が以前の主人と自分を比べた言動をするのを嫌がります笑



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