BL/死者と生者


愛している、と小さく呟いた男の頬からつー、と透明な雫が伝う。涙は頬を伝い花弁の上で少しのたうって闇の中へと消えた。溢れる水滴はただただ伝い落ちるのみで何事をも打破してくれなどしないし、お伽話のように死者を甦らせたりもしない。ましてやこの感情が既に意識のない眼下の男に届くとも思えない。霊の存在など信じるほど無邪気なままではいられなかったし目に見えないものなど信じたところでどうなるというのだ。生前、目の前で瞼を伏せている男は信じてみるのも悪くないと言った。そして俺はお前に言うんだ、信じて何になるものか、そんなものを信じればそれが姿を現すわけでもなし、大体神など信じるだけ無駄だ。神が実在したとしても神は愚かで自己完結している人間など助けたりはしない、と。いつだって彼はこう言った。その発言がすでに未知の生命の存在を認めているじゃないか!と。
死とは何か、
生とは何か、
死は終わり生は始まり生は終わり死は始まり
彼がいない今、神など信ずるに値しない(それでも、もし彼が蘇るのなら、俺は)

死者はただ沈黙を守っていた。



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