ギロクル





それは唐突だった。

「花見に行きたいであります!」

いきなり部屋に飛び込んで来たかと思うと大声で叫ぶ。馬鹿丁寧に武器を撫で回していた先輩が目を丸くした。その顔が面白くてニヤニヤしていれば先輩も大声で叫び出す。
「貴様、侵略はどうした!」
「クク、隊長は花がみたいんじゃなくただ酒が飲みたいだけだろ」
「う、それを言われると…じゃなくて!行くったら行くの、隊長命令であります!明日の朝には各自準備を終えて玄関に集まる事、以上!」
怒鳴り散らす先輩を横目に慌てた様子で花見花見と小走りで駆けていく隊長。まったく、と溜め息をつく先輩を少しだけ見つめて、また画面に目をやった。ネットに接続すれば画面上は今まさに話題にのぼった桜の特集だった。


翌朝玄関に行ってみれば既に結構な量の人がいた。言い出しっぺの隊長にギロロ先輩、タタマと日向兄弟、西沢桃華、サブローの奴までいた。隊長がクルル遅い、なんて行っていることを考えるとどうやら俺が最後らしかった。
ぞろぞろと群れをなして歩くのが嫌で2・3m後を歩いていればいつの間にか横にはサブローがいた。
「クルル、あんまり後ろ歩いてるとおいていかれるよ」
「クックック、それでいいんだよ」
「相変わらず捻くれてるなぁ」
「クク、当たり前だろ」
「そうだね」
だらだらと適当に話していれば急に先輩が立ち止まり、その先輩にろくに前を見ていなかったサブローがぶつかる。
ぶつかった二人は立ち止まって双方それぞれ何かを話しているが気にせず歩き続ける。桜が見えただのなんだのと騒ぎ出した隊長達を遠巻きに見つめながらのろのろと歩いていれば後ろからいきなり腕を掴まれ、そのまま前にぐいと引かれた。
行くぞ、と小さく呟いた先輩の顔が赤く染まって、照れるならこんな事しなければ良いのに、と思った。
桜の真下で立ち止まり、着々と花見の準備を進めていた隊長達にようやく追い付き、急かされるようにその中に交ざる先輩をよそに人気のなさそうな桜を探し、その桜の影に身を潜めれば準備が終わったようで、後ろから乾杯の声が聞こえた。
このまま帰ってしまってもいいのだが、そんな気分にもなれないしだからといって隊長のお守りに付き合わされるのもごめんだ。
仕方ないからネットでもして時間を潰すか、とノートパソコンの電源を入れたところで先輩がウーロン茶と缶ビールを持って目の前に立っていた。ほら、と差し出された缶ビールを受け取り、封を開け、膝の上にのせていたノートパソコンを多少不服ではあるが地面に置いた。
先輩が横に腰を下ろし、缶の封を開けてからぼんやりと上を見上げた。
「桜、綺麗だな」
「クク、まあ悪くねぇんじゃね?」
「でも、お前の方が綺麗だ」
驚いた、と同時に顔が熱くなる。この男はなんて事を言うんだ。赤くなっているであろう顔を見られるのが嫌でじっと俯いて息を殺した。
「うるせぇ、馬鹿」


















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