今にも目を閉じようという時、至近距離で整った小鼻がひくり、と動いた。
「なんだか、いい匂いがする」
ぱちりと瞬いた瞳はすぐにうっとりと伏せられ、蜜の在処を探りはじめる。
おでこの生え際、旋毛。やだ、そんな所嗅がないで。
不思議そうに首を傾げる姿がかわいい。
そっと唇と鼻頭でなぞられるフェイスライン。あ、そこまで行くと下すぎるよ。
首筋に顔を埋めた彼は少し不満げな声で、うん?と唸っている。
「シャンプー…ボディソープ…?変えてませんよね…なんです…?」
ふふ、と笑みがこぼれる。愛しさそのままに柔らかい髪を撫でれば、むっ、と顔を起こす。随分楽しそうですね?なんてセリフにおでこを合わせるポーズなんて決まってしまうこの人がずるい。高く通った鼻筋が容赦なく私をつつく。
「…?」
あら、気付かれた?
検分するように口元を高く上げられる。ちょっとオニイサン、この上顎クイまでやってのけるの?
「…リップ、変えたんですね。前のと色が似てるから気付きませんてました」
「…うふふ、バレちゃった」
花の蜜の隠し場所なんて、一番暴いてほしいところに仕込むに決まってるじゃない。
「ほんとにいい匂いしますね…これ、落としても?」
「もったいない、きちんと食べてよ」
好奇心と情欲が乗った天秤をそっと傾ける。必殺、後ろ髪クシャ、なんてね。



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