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「やっぱりそうなんだね?」

見た目に似合わずはっきりと告げられる言葉と、それと裏腹に膝の上でぎゅっと握られた小さな拳。語る言葉をひとつも逃すまい、と上げられた顔には緊張が浮かんでいる。そう、あなたの推理が、そして直感が間違っていたのなら、あなたも隣の家の彼女も余命は長くない。

「夏目さんは博士のことを知っていて…そして、アイツのことも…知っていて、ここに連れてきた。そうだね?」
「うん、そこまでわかっているのならね、坊や。もう高校生なんだから、社会人を平日昼間に職場から無理に連れ出すなんてしちゃだめ、そうでしょ?」

きょとん、とこちらを見つめる顔は、いっそわざとかわいこぶっているようにも見える。そういえばこの子、大女優の息子なんだった。

「え、まって」
「え、そこびっくりするの?言わなきゃよかったかな…?」
「そうじゃない!そうじゃなくて…じゃあ目的は…目的は一体何…?だってラボの人間じゃないって…」
「うーん…?」

うってかわって悩み始めてしまった子供がなんとなくかわいそうになって、はやめにごまかしてみることにした。

「ラボ、っていうのは彼女がいた研究施設のこと、でいいのかな?だとしたら、そこのことはよく知らない」
「よく知らないってなんだよ…知ってるじゃねぇか…」

そんな今にも死ぬみたいな顔しないで。幸いにもあなたたちの余命は守られているよ。

「うん、本当にちらっとだけね…?ねえコナンくん、あなた正夢って信じる?」

そんな「はぁ?」ってを顔しないでほしい。私だって幼児化信じてないよ。テレビで工藤新一の名前聞いた日からこっちが夢なんじゃないかって思ってるよ。でもまだこっちの方が、パラレルワールドで漫画読んでしってる、よりマシじゃない?

「ゆめ…」
「そう、寝て起きるまでに見る夢。眠りが浅い時に脳のみの活動で描かれるイメージ。それが一応、定義だけど…」
「し、しってるけど…」
「私これでも理系だから、自分でも自分のことよくわからないけどね、見るものは見るし知ってしまうものは知ってしまう…そういうもの、としか言えないけど」

あ、まずい。若干正気を疑われているような気がする。だって視線が痛くなってきた。

「薬で青年が子供になる、なんてことに比べたら、信じておいても害にはならないと思わない?それともほかに何か、しゃべろうか。」

夢だからかなりうろおぼえではあるんだけど。とってつけたような言い訳だけど、一応布石は打っておかなきゃいけない。
このパラレルワールドにおいてもっとも非現実的存在に自分の有り様を否定される、ってありなんだろうか。